ハルウターもふもふなあやかしたちの事情ー
音無音杏
第1章ㅤ黒兎と白兎
息を切らす少女の後ろにいるのは人間ではない。人には見えない妖怪と言われる者。
なぜ追いかけられなければならないのか、あの者は何か。それらを知らずに妖怪から逃げ続けている少女は何もない所で勢いよく転ぶ。そんな少女を見た妖怪は絶好のチャンスだと言わんばかりに一歩、また一歩と近づく。
(もうだめだ)
妖怪の指先が少女の瞳に迫る。
刹那、酷く低い叫び声が響いた。
「ぎゃあああ」
耳をつんざくような声。
何事かと瞑っていた目を開くと、そこには一人の青年。少女を狙っていた妖怪はこの青年が消し去ったのだ。片手に持つ剣で。
少女は状況が掴めずただ呆然とする。その時だった、今度は木の上からもう一人の青年が降りてきた。その青年は少女の前まで来ると、怯えているような少女へと手を差し伸べる。
「もう大丈夫だよ。立てる?」
ーーその手を取ったか取らなかったかで、物語が変わっていたのかもしれない。
八月、セミが鳴く季節。
自然に囲まれたここは都会でなく田舎。けれど、ど田舎というほどでもない。
空気が綺麗な町。そんなここが、私は好き。
太陽の日差しが強く照りつける。そんな中私は、友人である若葉を連れて森の中を歩いていた。
迷子になったわけではない。
道路の脇に木々が並んでいる。そこからこの中に入ったのは初めてではなかった。
懐かしく思いながら先に進んでいくと、ふと、珍しいものが目に止まった。
ぽつりと寂しく存在しているのは井戸。
何故だかその周辺一帯だけ綺麗に円を描いて木が生えておらず、地に生える雑草だけがその井戸を囲んでいる。
(こんな所に井戸なんてあったけ)
小さい頃よくこの森の中を探検していた記憶はあるが、こんなところに井戸があるなんて知らなかった。
引き寄せられるようにその井戸へ向かう。そして井戸枠に手を置き、中を覗く。よほど深いんだろうか、奥の方が薄暗くなっている。
眺め続けていると井戸の奥底で何かがキラッと光ったのが見えた。確認しようと身を乗り出し、目を凝らす。ーーと。
「いった……」
右目に痛みを感じた。ズキンズキンと音が聞こえてくるような痛み。
右目を手で押さえながら後ずさる。
「里桜、どうした?」
左目を薄く開けると、若葉の顔が映る。若葉が私のことを覗いていた。
そういえば若葉と来ていたんだった。自分が速く歩きすぎていた事に気づく。
「井戸から、何か飛んできた」
「井戸から?」
(確か……ガラスの破片、のような物だったような)
私が答えると、若葉は何を思ってか井戸に向かった。「井戸から物が飛んでくるなんて、ありえないでしょ」なんて言いながら。
その井戸に近づかないほうが良いと微かに思ったが、止める事ができなかった。
若葉の言っていることは一理ある。井戸の中に人がいるわけでもない、下から物が飛んでくるなんてありえないだろう。
若葉は颯爽に井戸の中を覗く。
「中に誰かいるってわけでもないし。やっぱり井戸から物が飛んでくるなんてありえないわよ」
「でも……」
若葉の口から出たのは否定だった。
(確かにこの右目に感じる痛みは本物)
納得のいかないまま俯き、里桜がおもむろに顔を上げた時ーー。
「きゃっ」
井戸を背にしてこちらに歩いてこようとした彼女の背後に、何かが飛んできたんじゃないかと思うくらいの風が通ったんだ。
若葉の長い髪が風に揺れている。
「若葉」
自然現象にしてはおかしい。一カ所だけに風が通るわけがない。
そんなふうに思いながら名を呼び、目で訴えた。今のは何?……と。
若葉にも分からない事だと分かってはいた。だけど訊くしかなかったんだ。
なかったことにもできたのかもしれない。
「ただの風よ、風。 だから……」
そう、ただの風だったのだと。
平然としようとしている若葉だが、青い顔をしているように見える。
「里桜(リオ)、早く逃げましょ……!」
「え、ちょ、若葉」
私の手首をがっしり掴むと、若葉はそのまま勢いよく走り出した。
森の中を全速力で駆け抜ける。
どうして若葉はこんなに焦っているのだろう。確かにさっきの起きたことは自然と驚くことかもしれない。
でもこんな風に逃げ出すほどのことでもないと思うんだけど。
道路に抜け出すと若葉は足を止め、やっと解放してくれた。
「若葉、急にどうしたの?」
膝に手を当て、息を荒くさせながらに訊く。
「何か背中に変なものが通った気がしたのよ。ゾクってして、嫌な予感がしたの 」
若葉は霊感があるのかいつもこういうことを言う。だからたぶん、あの時は何か不吉なものが通ったんだ。
ーー今の私にはそれしか分からなかった。
静かな空間。木の葉が揺れ、ザワザワとざわつく心地いい音は、漆黒の彼にとってはどうでもいいもの。
そんな彼とは対象的に、木の上に立っている男は安らぎを得ていた。
里桜と若葉が森の中を駆け出して行った姿を見ていた純白の彼は、口を開く。
「ルカ、ちょっとやりすぎじゃない? 下手したらあの二人に当たってたよ」
呆れた笑みを浮かべ、見下ろす彼の目の先には、さきほどまで妖猫の相手をしていたルカ。剣を片手に持ち、どこか納得のいかない表情をしていた。
「そんなことはどうでもいい。 氷力石の気配が人間に……。 どういうことだ」
誰にも答えは求めず、まるで自分の中で状況整理をしようとしている感じだ。
そんなルカは、木の上にいる男に一度目を合わせるもすぐに逸らし、長く太い剣を腰に下げている鞘(さや)にしまった。
詳しく言うのであれば、ルカが持っている剣は『ロングソード』であろう。
「たぶんだけど……妖怪に食われて力を手にいれられるよりは、人間の中にいたほうが安全だと考えた、とかじゃない? 」
助言するように自分の考えを発した彼もまた、頭の中で駆け巡らせていた。
ありえもしないこの状況に陥った、その答えを深く追求するように。
「ただの石(イシ)に意思(イシ)があるって言うのか? 」
「ふっ」
ルカの思いもよらぬおやじギャグに、純白の彼は吹き出す。
いつの間にか木の上に座っていた彼は、口に手を添えクスクスと笑い始めた。
もちろん、ルカは笑わせるつもりで言ったわけではない。
「なに笑っている? 」
何も分かっていないルカは少し怪訝そうに、彼のことを見る。
「さあ……どうだろうね。 僕もそこんところはわからない」
まるで今の問いは聞こえなかったかのように、頬を緩ませながら話を続けた。
ルカはそんな彼を気にすることなく、彼女の走り去った方向を無意識に眺め。木の上にいる彼もまた、同じ方向を見続けていた。
あの人間はこれから妖怪に狙われるだろうと、心配ではなく、好奇の眼差しで。
もう一人の漆黒の彼、ルカは、感情の持たない、深い闇のような瞳でーー。
九月、学校が始まって数日。
下校中の道。
何かに見られている気がする。
“誰か”ではなく、“何か”となにも考えずにでたのは、それを見ていた気がするから。『見えていた』のほうが正しいのかもしれない。
あのガラスの破片のような物が目に入ってから数日、何かが見えてきていた。
それが一体、何なのかは分からない。もしかしたら私の気のせいなのかもしれない。
この気配。もし私の勘違いだとしてもこのままでは分からない。
足を止め、ゆっくり後ろを振り返る。
振り返らなければと後悔した。
自分の顔が青ざめていくの分かる。
こんな感覚は初めてだ。
私の瞳に映るものは人ではない。
そうどこかで察した。
ソレはニコーっと口角をあげ、不気味な笑みを浮かべる。
「その目玉、ちょうだい」
直感的にやばいと思った。
咄嗟に逃げようとする。
だけど恐怖で足が竦んでしまっていて動かない。まるで金縛りにあったかのように。
動けと自分に言い聞かせる。
全く効果ない。
試している間にも、ソレの手が私の目にゆっくり向かってくる。
目を取ろうとしているということを確実なものとして受け取った時にはもう遅かった。
視界いっぱいにソレの大きな手のひらと、その五本指だけが映る。
(動け!)
心の中で勢いよく叫ぶと、早く逃げなければと硬直していた体から丁度よくふっと力が抜けた。
逆にそれを振り絞るかのように相手に向けている体をくるっと反転させ、逃げ出す。
「待て! こっちが穏便に済ませてやろうとしたものの……。その目玉、よこせ!」
後ろからの大きな怒号。
それが私の足を早める。
たぶん追ってくるのだろう。
背後を見る勇気がなく、ただひたすらに走り続けたーー……。
並木道。
道路の脇に木が並んでいる。
前に若葉と一緒に入った森。
走りながら考えていた。
この中に入ろうかと。
たくさん生える木々を使って、追いかけてくる者から逃げ続ければ、いつかあの者は諦めてくれるかもしれない。
そう思案めぐらす。
けれど逆のことも思いつく。
一目につかない森の中はあの者にとって好都合の場所なのかもしれないと。
この自然に囲まれた町では、道路も森の中も同じことかもしれないが。
「……っ」
反射的に出した手はコンクリートの地面に強打する。
余計なことを考えていたせいか、足をもつらせ転倒してしまった。
膝の痛み。
見てみれば血が滲んでいた。
「ふっ、痛くて動けないか」
四つん這いになった状態。あざ笑うかのような声が後ろから聞こえてきた。
……やばい
立とうと試みてはいるけれど、足に激痛が走り、座り込んでしまう。
その繰り返し。
それなら、と態勢を変え、尻餅をついた状態で後ずさる。
が、それ以上に彼は近づいてくる。
「やっと追いついた。早くその目玉をよこせ」
低い声が耳にまとわりつく。
なんでこんな風に追いかけられなきゃいけないんだろう。
私、何か悪いこ とでもしたのかな。
こんな虚しい出来事に疑問を抱いた。
(そんなに目が欲しいの? どうして?)
訳の分からない気持ちで彼を見上げる。
「やっと手に入る。 やっと……」
私の気持ちなんか知ろうともせずに、彼は手を伸ばしてくる。
ねえ、あなたは一体何者?
普通の人に見えないことは知っている。
若葉と一緒にいて、そんなことはもうとっくに知っているんだ。
道端に見たこともない変な生き物がいた時があった。
ソレは珍種なのかなと思って隣にいる若葉に聞いてみたんだ。
だけど……「なに言ってるの? そんなものどこにもいないじゃない」って。
『いるよ』って言っても若葉には全然見えていないようだった。
だからその時、なんとなく思ったんだ。これは見えてはいけないものなんじゃないかって。
私以外の人に見えないものが見えるなんて信じられなかった。でも今ーー無理やり分からせられてしまったんだ。
「これが手に入るなんて、夢にも思わなかった」
彼の指はもう、瞼に触れそうな近さまで迫っていた。
もう無理なんだって、助からないんだってーーそう思っても。
「い……いや」
まだ助かろうとしている。
(もうだめだ)
逃げる事も諦め、思い切って目を瞑ったときーー
「ぎゃあああ゛」
突如、大きな叫び声が響く。
眼球を取ろうとしていた手は、私の瞼に触れることはなかった。
なにが起こったのだろう。状況を把握するため、瞑っていた目を開く。
そこには、さっきまで私の目を狙っていた者の体に一筋の線のようなものが入っている、そんな光景があった。
その一筋の線のせいで物体を保てなかったかのようにパッと光となって消える。
ソレが消えたあと、その後ろにいる存在を確認した。
断言はできないけど、さっきの一直線上に光るものは彼がしたんではないかと思う。
片手に持つ鋭い剣で。それでアレを引き裂いたんだと分かった。
たったの一振りで、アレを消し去ってしまったんだと。
私を助けてくれたのかは知らない。
人の姿をしているが、やはり人ではないと分かる。
彼は闇の中からでてきたんじゃないと思うくらい、全身が黒で包まれている。
黒い髪と、黒い服装。
マントのように長く黒いコートを羽織っていて。全体的にシュっとした感じがある。
一瞬見ただけでこの容姿は誰にだって分かるだろう。ただ一つ、彼の目をよく見なければ気づけない事がある。
瞳まで黒くて、輝きがないという事を。
まるで感情がないみたいだ。
そんな目を見ていると彼も私を見てくる。
なにか喋るのか、それともあなたまで私の目を狙っているんだろうか。
この目になにがあるっていうの?
相手の言葉を待つ。
けれど彼は、私の事を見ているだけで何も発してこない。言葉を発しないどころかひとつの動作もみせない。
彼が何を考えているのか黒い瞳から探ろうとする。
だが、その瞳からはなにも感じとれない。
何も思っていないような、何も感じていないような……。
そんな瞳から探ろうとしても無駄。
まるで闇の中の奥底を見ているようで、引き寄せられるようにその瞳を見つめてしまう。ーーこれを表すなら暗闇の中のブラックホールのようなもの。
「さすがルカだね。僕の出る幕なんてなかった」
静寂とした空間。透き通るような声がどこからともなく聞こえてきた。
一瞬、自分を見ている彼かと思ったがそれは違うと分かった。
なぜなら彼の口は動いていないから。
(誰?)
首を傾げそうになりながらも聞こえた方ーー木々を見てみる。
すると、言葉をいい終えると共に一つの木から誰かが飛び降りてきた。
軽く着地して現れた彼は、漆黒の彼ーールカというんだろうか、その人に微笑んだ。
「別に、ただの雑魚だっただけだ」
どこか嫌そうに片手に持っている剣を腰にある物にしまうと、不思議なオーラを放つ彼の笑みから逃げるように斜め下を見た。
褒めた青年はそんな彼を見てまたも苦く笑み、そのまま私に視線を向けてくる。
彼が降りてきてから見ていたため、すぐに目が合うものの、この二人の微妙な空気に不安になり無意識に視線を下げてしまう。
(この人たちも、もしかして……)
近づいてくる足音。私の目の前で止まったのが分かる。
「もう大丈夫だよ。立てる?」
あるものが視界に映り、確かめようと顔を上げるとそこには彼の手。
彼は私に手を差し伸べていた。
ーー意外にも気遣った言葉。
なにかされるのかと思っていた。
だから思っていたことと真逆のことをされ、拍子抜けしたとともに、さっきまでの不安な気持ちが嘘のように軽くなった。
「あの……」
声が震える。彼を見上げ、言葉にならない声を出す。不安な気持ちが少し無くなったとしても、まだ怖いという感情はある。
漆黒の彼と違って、天使のようだと言ったら大げさかもしれないけど。
この行動といい、この純白な容姿といい、まるで天使そのもの。
白い髪と白い服装。
瞳は複雑な色をしている。白に、たぶん銀色も混ざっているんだと思う。
羽織っているコートも白。
ーー白い彼が天使なら、黒い彼は悪魔か。
視界に二人をいれ、ふとそう思った。
差し出されている手を見て思う。漆黒の彼よりは信じても良さそうだと。
けれど一つ、気になることがある。
彼の手を受け取ろうとしていた自分の無意識の行動を止め、純白の彼を見上げた。
「め……」
またもや声が震えてしまう。
そんな私に純白の彼は、不思議そうな顔をしてから首を少し傾け、優しい瞳で見つめてきた。
ーーそれが私の言葉を待ってくれているように見えて。
「目が、欲しいの? 」
心から訊きたいことをそのまま口にできた。
さっき、私の目を狙ってきたアレは人ではなく異常な者。この者たちは剣を持っていて普通でなく異常。
だから同じ。
同じなら、同じ目的があるんじゃないかと回らない頭で推測した。
どんな言葉が返ってくるのか身構える。
もしそうだと言われたら、何が何でも逃げなければいけない。
私の心配をよそに彼は柔らかく笑った。そんな心配、する必要ないと言うかのように。
「大丈夫だよ。僕たちはさっきのヤツとは違う、だから安心して」
彼の穏やかな笑みと、説得力のある言い方に恐怖心が和らいだ。
私の目を狙ってきた者とは違う。もうなにも怖がることなんてない。安心させようとする笑みが、そう言ってくれている。
単純かもしれないけど、そう思ったんだ。
だからその手をとった。
差し出されていた手を。
「……っ」
立ち上がろうしたところ、先程何度も味わった痛みが駆け抜ける。
彼の手に体重をかけてもまた、その場に座り込んでしまう。
「足、擦りむいてるね。それもそうか……あんなにハデに転んでいたもんね」
片膝を地面に付けてしゃがみ込み、私の膝にできた傷を痛々しそうに見る。
自分のことのように顔を歪ませている彼。
ちょっとした疑問を浮かべつつも、優しいヒトなんだと思う。
「ちょっと、ごめんね 」
なぜ謝るのか不思議に思いながら見上げていると体の膝裏と背中に彼の手が回った。
「え……」
そして体が宙に浮き、今ある状況を把握すれば動揺して彼の腕の中でキョロキョロする。
「手当ては君の家についてから。だから少しの間、我慢して」
さっきと同じような笑みが浮かべられているのを見て思った。
彼の言う『我慢』は、傷の痛みを我慢するのと、この態勢を我慢する。どちらの意味も含まれているような気がする、と。
「ルカもちゃんとついてきてね」
私を持ち上げたまま顔だけを後ろにやる。
その横顔はどこか楽しげ。
「言われなくてもそうする」
微かに見えた彼は、純白の彼に視線を合わせることなく答えた様子。
「それじゃあ、行くよ」
自分の身に何がおこっているのか分からなかった。
彼の言葉が合図だったかのように視界がぶれ、気がつくと景色が一変していたんだ。
たくさんの木。彼の腕の中から下を覗くとけっこうな高さ。
もしかして、側にあった木の上にそのまま飛び乗ったのだろうか。
それにしても一瞬すぎた。ってことは、一回ジャンプしただけで木の上に……?
「これから走るけど、怖かったら目瞑って」
気遣った言葉。
彼の顔に目をやると、またもやこちらを安心させるような笑みが浮かべられていた。
この状況に理解できないまま頷くと、彼も同じように頷き、私を抱き上げる腕に力を込めた。
落とさないようにとしてくれたことだろうが、そのせいでさっきよりも体の密着度が高くなり、心臓が高鳴る。
だが彼が走り出したことによって、そんなことは気にならなくなった。
その代わりに一つ、驚きが。走るってーー今、木の上を走っているんだ、と。
次々と別の木に乗り移り、前へと進む。
そんな光景をぼけーっと眺める。
例えるなら、走っている車の窓から景色を見た光景。
人だったらこんな事はできない。試したら確実に途中で落ちてしまう。
ーー人ではない。
そんな相手を前にして恐怖心がなくなると、今度は好奇の眼差しで見つめてしまう。
白銀の髪が風に揺れている。
素直に綺麗だと思う。
ストレートで肩につくかつかないくらいの長さ。肌も透きとおるような白さで、美形。
普通の学生よりかっこいいと思う。
もし人間なら高校生なのかもしれない。
私はまだ中一だから三年は年上。
彼の安心させてくれるオーラに不思議な気持ちになりながら、彼の顔を眺め続ける。
「どうしたの?」
チラッと流し目を向けてきた。
そこではっとする。
(私、いつまで見ているんだろう)
恥ずかしい想いで俯く。
「……なんでも、ないです」
頭上からクスッと笑い声が聞こえたのは、気のせいだろうか。
家に着くと、私を部屋まで運んでくれた純白の彼はベッドの上に降ろしてくれ、手当までしてくれた。
「はい、これで終わり」
最後に通常より大きな絆創膏を貼られケガの手当ては終わる。
消毒の痛さに慣れていないだけだと自分に言い聞かせながらも耐えていた。
「ありがとう」
「どういたしまして」
私のお礼にニコッと笑い返してから立ち上がると、近くの棚まで行き「これはここに置いとくね」と救急セットが置かれた。
こちらに戻り歩き、私の横に腰を降ろすと彼は顔を傾ける。
「君は僕たちのこと、怖いと思う? 」
急な質問をされた。それも確信した言い方。
頬を緩ませ、何でもないかのような彼を凝視し、なんて答えたらいいのか思考を巡らす。
助けて貰った上にここまで運んでもらった。その上、傷の手当てまで。
最初のうちは怖いという気持ちしかなかった。だけどこのヒトの笑みに安心していた自分がいたんだ。
でも、もし人ではないなら何なのか。そう思うと怖いという気持ちが蘇ってくる。
考えた結果、首を横に振った。
「そっか」
怖くないというのは少し嘘も入っていたかもしれない。
だからこれ以上この話には触れなかった。
静まり返った部屋。
「あの、あなたたちって……何者?」
失礼を承知の上、訊ねてみた。
これを知れれば、私を襲ってきたあの者の正体も分かるかもしれないから。
「その事については順を追って話すよ」
まるでこの言葉を待っていたかのように、彼は微笑んだ。
「僕の名前はレオ。で、そっちはルカ 」
説明してくれている純白の彼がレオ、漆黒の彼がルカ。
名を覚え、純白の彼……レオの視線をたどると、いつの間にかルカが私の勉強机に座っていた。それとともに別の物が視界に映る。
(あ……持ってきてくれたんだ)
机に上にあったのはさっきまで私が持っていた学校の鞄。
あの得体のしれない者に襲われた時、落としてしまったんだ。それで今の今まで鞄の存在を忘れていた。
たぶん漆黒の彼……ルカが持ってきてくれたんだろう。
お礼を言いたいけどルカの周りには見えない壁があって言える雰囲気じゃない。
「僕たちは、君を守るために現れた」
「私を……守る? 」
ルカにやっていた視線をレオに戻すと真剣な眼差しで私を見つめていた。
だが、いきなりそんな事を言われても困る。
首を傾げ、確認すると穏やかな笑みで「そう」とレオが頷く。
「私が二人のことを知らないように、レオたちも私のこと何も知らないよね。
それなのにどうして?」
守られるほどあんな者から襲われたりしていない。
今日が初めてだった、あんな者に襲われるなんて。それも目が欲しいとか訳の分からない事を言われたのも。
もしかしてこれからもあんなことが起きるとか。だから「守る」なんて言われているのかな。
そうだとしても守られる義理なんて何もない。ましてや面識がない相手なんかに。
「確か、リオちゃんだよね」
「え……」
驚きで言葉がでなくなった。
どうして私の名前を知っているんだろう。まだ何も言っていないのに。
もしかしてそういう能力を持っているとか?……そんなわけないよね。
「とある人に君を守るように言われたんだ」
「とある人って、誰?」
「君と関わりのある人なんだけど……。この話はまた今度ね 」
なんだか上手くかわされたような気がするのは気のせいだろうか。
詳しい話はその人のところに行ってから、と、この話は終わらせられ。
「それで僕たちのことなんだけど、妖怪と言われるものの類。って言われれば、わかるかな? 」
控えめに言われた『妖怪』という単語。
「妖怪……」
聞いたことはあるけど、現実にいるなんて思ったことは一度もなかった。
「人よりも永く生きれる生き物。今はそこまでわかっていればいいよ 」
レオたちが妖怪なんて信じれない話だけど、真剣に話しをされているから本当なのかもしれないと思う自分がいる。
「もう分かってると思うけど、君を襲ってきたのも妖怪。普通の人間に見えない者は全て、妖怪」
普通の人には見えない者。
前までは見えていなかった者。
心の中で復唱し、そこで閃く。
「どうして私は見えるようになってしまったの? 前までは見えなかったんだよ?
それなのにどうして……」
レオなら何か分かるんじゃないか。問い詰めるように訊いてしまう。
そんな私を見据え、人差し指を向けてきた。
「それは君の目に入った氷力石のせい」
「ひょうりょくせき? 」
妖怪は聞いたことがあったが、『ひょうりょくせき』なんて聞いたこともない。
向けられている人差し指を寄り目になりそうになりながらも見つめ、首を傾げる。
「氷の力と書いて『氷力』、最後が『石』
それで『氷力石』
簡単に言えば氷のように透明で力の持った石、ということ」
私の目に入ったのは氷力石。
氷のように透明で力の……。
あ、もしかして。
「あのガラスの破片?」
大事な事を思い出したかのように声を上げた。
ーーガラスの破片
目に入った直後は痛かったのにいつの間にかその痛みはなくなっていたんだ。
「そういえばあの時もそう言ってたね」
真剣な話をしているはずなのに、レオはクスクスと笑う。
何か笑われるようなことを言ったんだろうか。
「あの時、レオたちはあの場所にいたの?」
どうして笑われているのかと不思議に思いつつも『あの時』に引っかかっていた。
森の中に入った時の事。
若葉が井戸の中を確認してから背を向けて私の方へ歩いてこようとした時だった。
後ろに勢いのある風が通ったんだ。
何か飛んできたのかなと思ったけど、そんなことはなくて。
怖くなって一気に森の中から駆け抜けてきた後、若葉は何か嫌な予感がしたと言っていた。
「そうだよ。あの時風を起こしたのはルカとネコミミくん……じゃなくて、氷力石を狙う妖怪をルカが相手していたからなんだ」
「そう、なんだ」
机にいるルカを見る。いつの間にか突っ伏して寝ていた。
「ずっと見守っていたからたぶん疲れちゃったんだね」
僕もねむい……と欠伸をするレオ。
あの時からレオたちは、わたしを見守ってくれていたんだ。
こんなにも眠そうにしているんだからもしかして、夜も寝なかったとか。
なんだか悪い事をした気分になる。
「ごめん、なんか」
「僕は大丈夫だよ。君のほうこそいきなりで驚いちゃったでしょ? だからお互い様」
申し訳なさで下げていた視線をあげると、優しいレオの笑みがあった。
「もっと、ちゃんとした説明は明日でいいかな? 少し寝かせて」
「え……寝るってどこで? 」
まさか、ここ、とか言わないよね。
「ココって言ったら、迷惑? 」
予想的中。伺うように見られ、なんて答えればいいのか悩む。
レオたちは私のせいで睡眠を取れていなかったのと同じ。それに助けてもらった。そんなレオたちに迷惑だなんて。
でも、妖怪と言われてもどう見ても人間の男の人だから、抵抗感があるというか意識してしまうというか……。
ついにはなにも答られず、黙り込んでしまった。
「無理しなくていいんだよ。嫌だったらイヤだって言ってくれればルカを起こして出て行くから」
気を遣ってこう言ってくれているんだよね。
レオは立ち上がり、ルカを起こそうと彼の元へ歩いて行く。
その背中をどうすればいいのかと困惑しながら見つめる。
守ってくれたんだよ?
明日、説明してくれるんだよ?
レオたちは疲れているんだよ?
心の中で言い聞かせ、自分自身を説得しようとする。
「あの、待って」
ルカのことを起こそうと名前を呼ぶレオは、肩をポンポンッと叩くのをやめ、こちらに振り返る。
呼び止めたはいいけど、まだ言うことをちゃんと決めてない。
ぐっと気まずくなり、俯く。
「その人、ぐっすり寝てるから起こしたら可哀想……えっと、よく分からないけど、私の目に氷力石がある以上レオたちは私を守ってくれるみたいで。
だったらその……一緒にいたほうがいいというか」
なんて回りくどい言い方なんだろうか。どうして、ここで寝ても良いよとはっきり言えないんだろう。
自分の気持ちを伝えるのは難しいということを改めて知った。
「ありがとう」
少しの間してからレオの顔を伺うと、彼はふっと微笑んだ。
その笑みに、心が舞い上がるような感覚を覚える。しかし、言って良かったという思いは消え、不安な気持ちがでてくる。
二人はあくまでも妖怪。
でも、姿は人間の男性。
そんな二人がいて、ちゃんと寝れるんだろうか。寝不足になるかもしれない。
「ルカ、少しだけ起きて」
なぜかルカを起こそうとするレオ。ここで寝ていいと言ったのに、何か違う目的があるんだろうか。
ぐっすり寝ているのに起こしてしまうなんて、なんだかかわいそう。止めることもできずにただ見ていると「ん……」とルカが起きる。
「あの姿になるよ」
「あの姿? 」
眠そうにしながらも、レオの話に耳を傾けるルカ。何の話をしているのか、ルカの反応にわたしも同感。
あの姿って、なに?
「チビになんなきゃ」
……チ……チビ?
「ああアレか。なんであの姿になんなきゃいけないんだ」
レオの言葉になんのことなのか全く想像がつかず目をパチクリさせる私とは対象的に、納得するルカは不機嫌そうに答える。
アレ、って何?
もうなんのことかさっぱり。
お二人さん。どちらか、私に何のお話をしているのか教えてください。
遠くで二人を眺めながら、仲間外れにされている気分になった。
「なってから説明するよ。とにかく、早く寝たかったらなること」
「……分かった」
ルカはめんどくさそうにしながらも了承した。その後、ポンっと二人の周りに煙が上がり、一瞬だけ見えなくなる。
「レオ? ルカ? 」
二人共いなくなってしまった。イスに座っていたルカの姿もない。
「二人とも、どこ」
辺りを見回すがどこにもおらず、探すのを諦めようとしたとき。
「僕はココにいるよ」
「え? 」
左斜め下を見る。小さな動物がピョンっとベッドに乗ってきた。
私の目に映るものが喋ったとしたら、これはレオ?
「レオ、早く教えろ」
今度は右斜め下。こちらもピョンッと同じような形をした小さな物体がベッドに飛んできた。
全く状況整理ができない。
「そんなに焦らないで。ちゃんと説明するから」
え……えーと、私の目がおかしいのかな、二人が動物に見えるよ。
それとももしかして、いろんなことがありすぎて頭がどうかしちゃっているとか。
「僕たち、結構妖力が強いから他の妖怪たちに気づかれ易いでしょ? それじゃあこの子を守るどころか逆に危険な目に合わせる。だけどこの姿なら妖怪の姿の時より、妖力が激減する。だからだよ」
「そういうことか」
思考を巡らしすぎて頭がぐるぐるしてきたところ、レオがルカ相手に説明したものを聞いて、さらに分からなくなった。
というかこの光景、私には動物が喋っているようにしか見えないんだが。
小さな物体が二つ。
左側に白い兎。右側に黒い兎。
対面し合っている二匹……?
「あ、あの」
小さな声で尋ねると、白い兎がヒョコっとこちらを向く。かわいい……と頬を緩ませそうになる。
「もしかして、頭がついていってない? 」
「うん」
くりっとした瞳に見つめられながら素直に頷いた。
「見ての通り白い兎が僕で、そっちの黒い兎がルカだよ」
そう言われ、黒い兎を見るが、どうしてもルカに見えない。
「ルカ? 」
小さなかわいい姿をしたルカが私を見据える。思わず固まってしまう。
そんな私を心配したのか、レオまで見つめてくる。
二人が……二匹が左右から覗く。
本物の兎と変わらない大きさ。本物より愛くるしい姿。
動物が喋っている。夢のような出来事。
この兎があの二人だということを忘れてしまう。それに、くりっくりっとした小さな目が何かを求めているように見える。
実際、違うとは思うけどそう見えてしまう。
「かわいいね」
なんとか抱きしめたい衝動を抑え、正直に言った。他に言うことがなかったということもある。
なぜだかルカは顔を顰め、じーっと見つめてくる。
「好きでなっている訳じゃない」
「あ……」
吐き捨てるように言うとプイっと背を向け、ベッドから降り、小さな歩幅で歩いていく。
かわいいと言われた事が気に食わなかったのだろうか。
どこに向かっているんだろうと小さな黒兎もとい、ルカを見続ける。ピョンっと飛び乗った所はさっきまで座っていたイス。
「気にしなくていいよ。ルカはいつもああだから」
レオの気遣いの言葉を耳にいれながらも、ルカの着地したイスの背をずっと見る。
特に変化がないところをみると、たぶん寝てしまったんだろう。
「僕ももう寝るね」
ルカと同じようにベッドから降りるレオ。
「どこで寝るの?」
「ん~、床?」
「床!? 」
レオの驚きの発言に目を見開く。
「慣れてるから平気だよ」
「いや、平気って言われても……」
いくらなんでも、今の姿が兎だとしても、冷たくて硬い床に寝かせるなんてことはしたくない。レオの事を考えて眠られなくなるかもしれないし。
「そんなに私に気を遣ってくれなくても大丈夫だよ。ベッドの上で寝ていいから」
「え? 」
振り返り、驚いているような瞳を向けてくる。まるで、信じられないとでも言うような。
そんなレオの反応と、ぎゅーっとしたくなる白兎のかわいさに頬が緩む。
「その姿なら大丈夫だから」
「そっか……、じゃあ遠慮なく寝かせてもらうね」
またピョンっとベッドの上に飛び乗ると、枕元で縮まった。
それを眺める。
こうしてみると、やっぱりただの動物にしか見えない。
「おやすみ」
少し時間が経った後、布団をかけながら言ってみた。けれどもう寝てしまったのか返事が帰ってくることはなく。
今度はルカの様子を見に行くと、こちらもまた縮まっていた。
今にも消えてしまいそうなルカのことが心配になり、タンスから出した毛布をかけてから一階へと降りて行った。
翌朝。
目が覚めた時にはもうルカが起きていた。
人間の姿で昨日と同じ勉強机の椅子に座っているのがぼやけた視界で見える。
上半身を起き上がらせ、まだ眠い目をこする。その時、兎の姿のレオが横を通りすぎ、ベッドからピョンっと飛ぶ。
昨日と同じようにレオのことを煙が包み、人間の姿になった。
「それじゃあ行こうか」
「行くってどこに? 」
「とある人の場所」
あ……そっか、教えてもらうんだった。
今日は土曜日。
学校が休みでちょうど良かった。
横にはレオとルカ。
二人とも歩幅を合わせてくれている。
周りには木々、下は砂利。
ザクザクと不規則な音を鳴らせ、並木道を歩いていく。
木漏れ日が眩しく輝いていて綺麗。
この道には見覚えがある。
おじいの神社へと続く道だ。
この長い道のりを歩いて、毎日のように行っていた。
いつからか行かなくなっちゃったんだけど、どうしてだろう。一人暮らしに慣れて、寂しくなくなったからかな。
「この道、見覚えない? 」
物思いにふけっていると、左側にいるレオが話しかけてきた。
何を思って訊いてきたんだろうか。一応答える。
「小さい頃、お世話になったおじいのいる神社へ続く道と同じ」
数十分後ーー……
「おじいとレオたちって知り合いだったんだ」
「だから小さい頃に話したじゃろ。昔に兎を助けたと。それは人の姿に化けれる妖怪だってことも」
「それって、作り物の話なのかと思ってた」
〝とある人〟はおじいの事だった。
何も分からず神社の中に入ると、部屋で待っていたおじいの前には三枚の座布団が敷かれていた。おじいと向かい合うように真ん中に座ると、自然的に私の左にはレオ、右にルカが座って。
それで今この状況。
「だからそれも言ったじゃないか。これはわしの体験した事実の話じゃと」
「そんなに細かいこと言われても、小さい頃の話だからあまり憶えてないし」
神社へと来ていた月日は、幼稚園の頃から小学三年生の時まで。
大事な話をされていたとしても、大体は忘れてしまっている。
私はもう中学生なのだから。
それよりもおじいが妖怪の見える人だなんて思っていなかった。
若い頃は妖祓いもやっていたらしい。
そんなこと一度も聞いたことがなかったから驚くばかりで。
知らないことがまだいっぱいあるんじゃないかって、自分が無知に見えてきて内容が途中から頭に入ってこなくなった。
「本題に入ろう。里桜、お前は氷力石を目に宿してしまったそうだな」
急に真剣さを漂わすおじいに釣られ、緊張感を出そうと姿勢を正す。
「知っておるか、氷力石の恐ろしさを」
そう説明を始めたおじいは、私の知るおじいではなかった。
『妖怪が食べると強力な力を手にいれるという。それはこの世にいる妖怪を破滅させるぐらいのーー』
力欲しさに氷力石を狙う妖怪が多いらしく。
『だからお前はレオたちに頼んで、守ってもらうことにしたんだ』
レオたちは、おじいに恩があるという。だから私を守れと頼まれて素直に受け入れたと。
「氷力石って……なんなんだろう」
神社の帰り道。俯きながら呟く。
「ハウラという妖怪が持っている力の欠片、かな」
「ハウラ?」
「強力な力を持つ、妖怪の中で一番強いと言われる妖のこと」
妖怪に詳しくない私にでも分かるようにと、レオは考えながらに説明してくれる。
「力欲しさにハウラを狙う奴らはけっこういる。だけどハウラの姿を見た者はいない」
「どうして? 」
首を傾げ、答えを導く。
「身を隠してるんだよ。でもそれが見つかって、自分の持つ危険な力を悪意に使われるんじゃないか……そう思ったハウラは、同じ怪に与えないようにと力の欠片を散りばめた。それが氷力石ーーと、まあ、ここは推測を入れてみたんだけど」
氷力石はハウラという妖怪の一部。
自分と同じ妖怪に狙われて危険な力を悪用されるんじゃないかと心配したハウラが、自分の力となるものを散りばめた。
それであの井戸にあったんだ。
「これだけは言える。君の目に入った氷力石はハウラ自身でないと取れない」
誰も姿を見たことがない妖怪を探さなければいけないんだ。
そうしなければ、私の目にある氷力石は一生取れない。
「別の方法として、リオちゃんのその目が食べられてしまえば無くなるけどね」
「えっ」
それって……。
驚愕して、家に帰ろうと歩んでいた足を止めてしまう。
ぎょっとする私を見て含み笑いをするレオ。もしかしてからかわれた?
「冗談だよ。僕たちはそうさせないためにいるんだから」
「……お世話になります」
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