10歳、イベント発生!? お茶会開催

ついにウィズちゃんに会える日がやってきた!!


ウィズちゃんに会えるのが嬉しすぎて、私はウキウキ気分でミネルの家へと向かった。

どれほどかと言えば、私を見たお母様から「嬉しい気持ちは分かるけど、少し落ち着いてね」と心配されるほどだ。


そんなに浮かれていたのか……私は……。


家に着くと、ミネルのご家族が温かく出迎えてくれた。

私はミネルのお父さんであるティスさんと、お母さんのメーテさんに礼儀正しく挨拶をする。


「ご無沙汰しています。この度は、ご出産おめでとうございます。今日はウィズちゃんに会うのを楽しみにしていました」


するとメーテさんが「ありがとう」と微笑み、少しかがんで抱っこしているウィズちゃんを見せてくれた。


「か、か、可愛いー! 手、ちっちゃーい!! あの、触ってもいいですか?」

「もちろんよ」


メーテさんの言葉に甘え、指でそっとウィズちゃんの手に触れてみる。


あっ、ぎゅっと握ってくれた!

か、か、可愛すぎる!! 赤ちゃんの手って、なんでこんなにぷよぷよして触り心地がいいんだろう。


ウィズちゃんのあまりの可愛さに私が感動しきりの中、ティスさんが「そろそろ行きましょうか」と、お茶会の会場である広間へと案内してくれた。


そこにはすでに、オーンとセレス、マイヤの3人も来ていた。

挨拶し、私を入れた4人で話していると、どんどんと人が集まってくる。


ついに全員が揃ったところで、オーンのお父さんであるサールさんが話し始めた。

やっぱり、仕切るのはサールさんなんだな。そりゃそうか、王様だもんね。


「今日はティス家の新しい家族であるウィズ嬢を盛大に祝おう!」


その言葉にみんなが同意し、お茶会がスタートした。


なんか、お茶会というより飲み会なんじゃ……というようなテンションの上がり具合だなぁ。

今日のメインはウィズちゃんのお披露目という事もあり、大人も子供も関係なく、一緒に楽しく過ごそうという事になった。


マイヤが「マフィンを焼いてきたの。みんなでよかったら」とミネルに渡す。

ミネルが「ありがとう」と受け取った後、私に向かってからかうように話し掛けた。


「お前もこれくらい持ってこい」

「マイヤが持ってきてくれたから、いいじゃない! 私はちゃんとウィズちゃんには持ってきたから」


私は得意気に、自分で作った“スタイ”をミネルに見せた。


「……お前が作ったのか?」

「まあね」


おっ。さすがのミネルも私の手作りに感動したのかな?


「縫い目がガタガタだぞ」


ミネルに感動を求めた私がバカだった。


「こういうのは気持ちが大事だから! 縫い目はガタガタかもしれないけど、ちゃんと使えるし......」

「まあ、使うかは分からないがもらっといてやる」


なんて、偉そうな言い方!!

あんまりな態度にあきれながら「それはどーも」とだけ返す。

そこでふと、私はミネルにずっと言おうと考えていた事を思い出した。


「そうだ! ウィズちゃんはミネルより優秀な顔をしてるね、って言うのを忘れてたー!!」


あっ、思わずそのまま声に出してしまった。


それを聞いたミネルが、心底楽しそうに「お前は本当にバカだな」と笑ってみせる。

く、悔しい......! ミネルめ!!


そんなやり取りをしていると、気づけば周りのみんなが驚いた表情でこちらを見ていた。

みんな、どうしたんだろう……?

不思議に思っていると、私の近くへカウイがやってきてその理由を教えてくれた。


「ア、アリアちゃんとミネルくん。前のお茶会の時に気まずい感じでお別れしたから、仲がいい事にびっくりしているんだと思う」


仲がいい? ミネルと私が?? なんだか腑に落ちないけど、それはまあ、一旦置いといて──


んー、そっか。セレスとカウイには、ミネルと文通している事を伝えてあったけど、他の人は知らないんだ。

そりゃ、知らないのに私とミネルが普通に話していたら、びっくりするよね。

だからといって、今さらみんなに「ミネルと仲直りしていますよー」と伝えるのも変な話だし。


「そういえば、もうすぐ学校が始まるね」


余計な説明を省く為、私は敢えて1ヶ月後に始まる学校の話題に切り替えた。


「そうだね。みんな一緒の学校だから楽しみだね」

「ああ、そうだな! 今まで一人で勉強や訓練をしていたから、大勢で出来ると思うと楽しみだ」


オーンが私の話に応え、エウロも彼に賛同する。


「みんな同じクラスだと嬉しいな」


マイヤが可愛らしい口調でにっこりと笑うと、セレスがハッと何かに気づいたような顔をした。


「アリア! そういえば、ずっと聞くのを忘れていたわ。魔法は使えるようになったの?」

「……それ聞いちゃう?」

「いや、今の言葉で全てを察したわ。まずいわね。時間がないわ……」


時間がない? なんで魔法が使えない事が、“まずい”の?

そういえば、以前セレスが「アリア! 一緒に魔法の訓練をするわよ。学校に通うまでには使えるようにするわよ!」って言っていたような。


どうしてだろう?

セレスの言葉に首を傾げていると、隣にいるカウイが控えめに口を開いた。


「ぼ、僕も楽しみ」


今、カウイが「楽しみ」って言った……? 1年前は「不安」って言ってたのに!!

なんか、嬉しいな。


カウイの変化を感じ取ったのか、オーンが興味深そうに話し掛ける。


「カウイは以前より話すようになったね」

「そ、そう?」

「うん、良い傾向だと思うよ」


そうなのだ。以前のカウイなら、うなずくだけで終わったはず……。

ところが、最近は首を縦に振ったり、横に振ったりする回数もぐっと減り、ちゃんと言葉で返事をしてくれるようになった。


オーンに褒められたカウイが私の方を向いたので、お互いに目を合わせてにっこり笑う。


その瞬間、オーンが驚いた顔を見せた。


「なるほどね」


何が「なるほど」なのかは分からなかったけど、オーンはそれ以上、何も言わなかった。


そういえば、ルナは!?

まだ一言も話していないような……?


「ルナはどう? 学校、楽しみ?」

「特に楽しみとかはないわ」


……は、話が終わってしまった。

まあ、徐々に……徐々にね。話せるようになれば嬉しいな。

それにしても、親達の方は随分と話が盛り上がってるみたいだなぁ。


「私の子供にもこんな可愛い時があったわぁ」


エウロのお母さんであるアネモイさんは、ウィズちゃんを抱っこしながら楽しそうに話している。


「ふふ、分かるわ。ねぇ、テウス。子供がほしくなるわねぇ」

「えっ、えっ」


カウイのお母さんであるホーラさんの言葉に、テウスさんが可哀想なくらいに焦っている。

よかったね、カウイ。カウイにも弟か妹ができるかもよ。


「あら、サウロが一番可能性があるんじゃない?」


思いついたように、メーテさんがアネモイさんへ声を掛ける。


……サウロ?

そういえば、以前のお茶会で年の離れた兄がいるってアネモイさんが言っていたな。お兄さんの事かな?


「いやいや、サウロは難しいわ。20歳なのにまだ婚約者もいないのよー」

「えっ、そうなの? 大体は、学生のうちに婚約者が出来るものなんだけど」


メーテさんだけでなく、他の大人たちもすごく驚いている。

へぇ、20歳で婚約者がいないのは、この国では珍しいんだ。


「そうなのよー。なんでも、同じ学校の女の子達が毎日のようにサウロの事で揉めてたみたい。あの子ったら、その生活にうんざりしちゃって『学校生活中に婚約者は作らない!』って、みんなの前で宣言したらしいの。そうしたら、今になっても婚約者が出来ないのよー」


話を聞く限り、サウロさんはかなりモテる人みたいだ。

まあ、エウロの家族を見れば、モテるのも納得だけど。


「気持ちは分かるが、アネモイ、そう言うな。サウロだっていい人が見つかれば、すぐに結婚するだろう。なんせ、俺の息子だからな!」

「まあねー」


カウロさんが豪快に笑い、アネモイさんも明るく返事をしている。


「そう考えると、エウロさんの方が早く婚約者が見つかるかもしれないわね」


オーンのお母さんである王妃様が、冗談交じりに会話へと加わる。王妃様って名前は何て言うんだろう。前会った時は名前を言っていなかったような。


「あはは、あり得るわねー。どうせなら、ここにいる子同士で婚約者になってくれたら嬉しいけどねー」

「確かに……! 将来この中から、結婚してくれたら嬉しいわね!」


アネモイさんの何気ない一言にメーテさんも同意している。

ホーラさんも「ふふ、それは面白そう」と楽しんでいるし、サールさんなんて「偶然にも男4人、女4人と人数も合ってるしな」と笑っている。


私の親も含め、みんなが婚約の話にワイワイと大盛り上がりだ。

 

あれ!? ちょっと待って! この会話の流れって──


「よし! この中から婚約者を決めるか!!どうだ? エウロ?」


カウロさんの明朗な声が広間へと響き渡った。



やっぱり!!

“婚約者を決めるイベント”が発生してる!?

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