大切な人へ
「ちょっと待って!」
ボクは、宇宙船を止めようとした。
宇宙船は、今にも飛び立とうとしている。
周りには、オルタ及び騎士団のみなさん、大魔王やラジューナちゃんたちやドルパさんたちもいる。
しかし、無情にも宇宙船は飛んでいってしまった。
月へ帰って行く宇宙船を見上げて、ボクは呆然となる。
ボクに何も告げず、行ってしまうなんて。
きっとシズクちゃんは、ボクに愛想を尽かしたんだ。
ハッキリしないボクを見捨てたんだろう。
「ちくしょう、ちくしょう! ボクは大バカヤロウだ! いなくなってから、大切な人の存在に気づくなんて!」
膝を突き、地面を叩く。
「シズクちゃんは、待っていてくれるだろうとか、ボクが立派になったらちゃんと話そうとか、悠長なことを考えている間に、シズクちゃんは自立の道を進んでいたんだ!」
「自覚はあったんじゃのう」と、ラジューナちゃんが呆れた口調で言った。
「今となっては遅いがな」とは、リムさんの弁だ。
「それをわかろうともしないで! ボクは自分の都合を優先した!」
「そうだな」と、オケアノスさんがため息をつく。
「ちょっとでも、シズクちゃんに『キレイだね』とか、『かわいいよ』とか、言ってあげればよかった!」
ボクの言葉に、シャンパさんやオルタも「そうねえ」「そうッスね」と相槌を打つ。
「どうしてもっと、大切にできなかったんだろう? 大事な人はすぐ目の前にいたのに!」
「そうですね。カズユキさんはもっと、私をいたわるべきです」
「もっと伝えるべきだった! 大好きなんだって! ボクには……シズクちゃんしかいないんだって!」
「わかってるんだったら、さっさと伝えればよかったじゃないですか」
「なんだよ、さっきからうるさいよシズクちゃん! ってえええシズクちゃん!?」
ボクの横でツッコミを入れていたのは、シズクちゃんだった。
「あれ、宇宙船に乗ったんじゃ?」
「私が生存していることを、母が父に報告しに言っただけですよ」
シズクちゃんも、どうかと誘われたが、ボクを放っていけないと断ったらしい。
「キミは、シズクちゃん……だよね?」
目の前にいるシズクちゃんを見て、ボクは息を呑む。
シズクちゃんは真っ白いドレスを着て、ティアラを付けていた。この格好を見ると、本当にお姫様だったんだって思い知らされる。
「それでも、今話さないと、二度と口に出せない気がしたんだ。シズクちゃん、聞いてくれますか?」
「いいですよ」
黙ってシズクちゃんが、ボクの言葉を待つ。
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