月へ
松本タケル
第1話
羊を数えていた。寝つけないときの私の癖だ。二十匹目でウトウトし始めた。三十匹目で強い眠気に襲われた。少し眠ってしまったかもしれない。再び数え始めて四十匹目でハッと目が覚めた。
ベットに横たわっていた。起き上がるとそこはワンルームで白い机と椅子があった。壁も白。私も白のワンピース。ドアは一つだけで先にトイレとシャワー室があった。出口は見当たらない。天井が薄く発光して照明になっている。
何も思い出せない。名前すらも。シャワー室の鏡で自分の姿を見た。映っていたのは若い女性だった。
シャワーを浴びた。時計がないので時間が分からなかった。一時間くらいたった頃だろうか。壁に突然、映像が投影された。青年が映っていた。私と近い年代に思えた。細身で色白、イケメンといえる顔立ちだった。
「思ったより驚いてないね。」
「ここはどこなの? 何も思い出せない」
「焦らなくていい・・・・・・それより、お腹空いてない?」
「そういえば、空いてる」
数分後、壁の一部がスーっと上がった。リゾットと飲み物があった。机に運んで振り返ると壁は元に戻っていた。
「何かあったらすぐに呼んで」
映像は消えた。食事は薄味だったが美味しかった。
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