たろうとばけぎつね

@KBunBun

たろうとばけぎつね

むかしむかし、あるお山に、百年も生きたきつねがおったと。その百年も生きたきつねは、なんと人間に化けられるようになったと。きつねはそれがうれしくって、毎日のように美しい女に化けては、お山のふもとで男をからかって遊んでおったそうな。

ある秋の日、きつねが若い娘のすがたでお山のふもとへおりると、一人の男の子がおった。          

「ねえちゃん、だあれ?」

「あたしゃ、ももって名前さ。坊やは?」

「おいらは、たろうだよ。ももちゃん、いっしょにあそぼうよ!」

「よしきた、何して遊ぶんだい?」           

それから、二人はお山で、日がくれるまであそんだと。ももと名乗ったこのきつねは、人間の友だちができたのがうれしくてうれしくて、毎日のようにたろうと遊んだと。

そんなある日、きつねはたろうを気に入るあまり、お山の奥にあるきつねのすみかへと、たろうをつれていった。そこは大きなおやしきで、何匹かのきつねがくらしておった。たろうは、ももちゃんがきつねだったことにびっくり。 

「ももちゃん、きつねさんだったんだ!」

「そうさ、おどろいたかい?」

「びっくりした!でも、きつねの友だちなんてすごいや!」きつねはますますたろうを気に入って、たろうもその日はずっと、おやしきできつねたちと遊んだと。

日がくれてもたろうが帰ってこないので、たろうの父ちゃんと母ちゃんは大あわて。山に入ってさがしたが、きつねのおやしきは見つけられなかったと。

「たろう、どこにおるんじゃぁー!」

「たろうやー、帰ってきておくれー!」          

そして次の日の朝、たろうはかわいらしい娘をつれてひょっこり帰ってきたと。                 

「どこへ行っておったんじゃ、たろう。その娘は誰じゃ?」

「きつねのおやしきにいってたんだ。この子はきつねのももちゃん、友だちだよ。」                

そのかわいらしい娘がきつねだと聞いて、父ちゃんと母ちゃんもびっくり。これは、山のふもとで男をからかっていたきつねではないかとあやしんで、            

「このばけぎつねめ、何か悪だくみしてるんじゃないだうね?」

と、きつねに問いただすと、きつねは、たろうの父ちゃんと母ちゃんに一つたのみごとをしてきたと。       

「あたしを、たろうのお嫁さんにして下さい。そうすれば、もうみんなをからかったりしません。」          

きつねはたいそうたろうが気に入ったようで、たろうもまた、きつねのことがすきになったようだったと。      

「よし、わかった。けれども、たろうはまだ子どもだから、あと六年まってくれ。そうしたら、たろうの嫁になるといい。ただし、この六年のあいだは、誰も男をからかったりしてはいけない。これが守れなければ、嫁にはしてやれないぞ」 きつねはすなおにうなずいて、たろうに別れをつげた。

「あたしはたろうのお嫁さんになる。そのために、これから六年は修行をするから、しばらく会えなくなるよ」

「ももちゃん、もう会えないの?そんなのいやだ!」

「なに、かならずまた会えるさ。その時までに、お前もりっぱな大人になるんだよ」                

きつねはさみしそうな顔をしながら、たろうのあたまをなでた。                        

「ももちゃん、ぜったいまた会いにきてね!やくそくだよ!」

きつねとたろうは指きりをして、それからきつねは山に帰っていったと。

それから六年のあいだ、お山のふもとでは男がからかわれることもなくなり、男たちはほっとしたそうな。そしてたろうもりっぱな大人になって、きつねを嫁にもらって、子どもをもうけて、幸せにくらしたとさ。めでたしめでたし。

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