物書きのいつもの朝

@KBunBun

物書きのいつもの朝

 どうやって小説を書くか。私にはどうしようもなかった。話を書こうにもネタがない。ネタがなければ続かない。そうだ、事実を並べよう。朝あったことをなるべく詳しく書き出して、文を繋げていこうじゃないか。


まず朝は6時過ぎに起床した。そこから着替えて朝食を食べた。歯を磨いて、顔を洗う。......それから?そう、それから私は原稿用紙と向かい合っていた。


何もないじゃないか。ならばさらに付け足すしかない。そうだ、小説で大切なのは、心情だ。その時何を思ったか、書き表そうじゃないか。


朝6時に起きて、まず思ったのは、眠い、ということだ。

二度寝がしたい。

二度寝がしたい。

そう思いつつパジャマから着替えていた。正直ここらへんは寝起きなのではっきりとは覚えていない。それから......そうだ。私はいつもパンを食べている。当たり前のこと過ぎて、書くという発想に至らなかった。今日のパンは少し焼き過ぎて、耳が少し焦げていたので、嫌な気分だった。歯を磨く時は、昨日歯医者の定期検診に行った時、歯茎が腫れていると言われたのがショックで、しっかり歯と歯茎の間を磨こうと思っていた。

顔を洗う時は、やけに今日の水は冷たいと思った。そうだ、今日から12月なんだと、カレンダーを見たのを覚えている。


さあ、これでかなり文字数を稼げただろう。これを踏まえて、小説らしく表現的な技法を用いて、一気に仕上げよう。


小鳥のさえずりが、目覚まし時計のアラームの遠くで聞こえる。

寒いのによく鳴くもんだと、私は睡魔に覆われながらも、微かに覚えている。朝食は決まってパンである。よく焼いた食パンに、マーガリンを耳まで塗りたくるのだが、今日は少し焦がしてしまった。その苦さを牛乳で濁し、その後は歯を磨く。赤く腫れた歯茎が、少し痛々しくまとわりついていた。顔を洗った。手に感じた、刺さるような冷たさが、師走の訪れを肌に感じさせた。


それでも足りない。それどころか、まとまりを気にして短くなってしまった。こうなれば奥の手である。書き始めから書き終わりまでの、この一連の過程を、私は書くことにした。

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