第19話 お買い物の合間

そうだ、怪我をしてもらう貴族は、シエンタがいいわね、ああ見えて意外と魔力量があるのよね、それにあいつはシスコンだから、きっと怪我しても文句も言わないでしょう。


 あとは、肝心の平民の子を誰にしようかな、そういえば、シエンタルートの時に出てきた可愛い子がいたはず、たしか、お菓子作りが趣味で、上級生のお姉さま方から邪魔にされてた…、そう、ラム!


 シエンタが呼んでるっていえば、あの子だったら来るわね、あとは上手くシェリーを巻き込めばいいだけ、あの邪魔な二人、アリシアとフェリミエーヌをどこかにやっておいたほうがいいわね。


 その翌日、アリシアとフェリミエーヌはアルファードと一緒に買い物に出かけていた。


「こんなもの、何に使うんだ、ろうそくなんて学園にもいっぱいあるじゃないか?」


「良く分かりませんけど、この店でとの指定でカルーア様からメモもいただいておりますので、なにかシェリー様にはお考えがあるのではないでしょうか?」


「そうですね、特に有名と言ったお店ではないですけど、変わった形やいい香りのものが沢山有りますわ、この中で私たち三人がそれぞれ気に入ったものと、なっておりますので、どれに致しましょうか、迷ってしまいますわ」


 三人は何が目的かもわからないまま、店内を見て歩く。


 最初はあまり乗り気ではなかったが、基本的に女の子はお買い物が好きなので、あれがいいかも、いえ、こちらのほうが、などと楽し気に言い合っていた。


 そもそもろうそく自体に何の興味も無く、変わった形や少し匂いがついているからどうなんだ、と何を選べばいいのか全く分からず、つまらない、と思いつつもシェリーの頼みだと思えば嫌だとも言えず、せめてシェリーが好きそうなものがわかればいいのだが、選ぶ対象がろうそくでは気乗りがしない。


 せめて、宝石とか、ドレスとかのおねだりだったら、もっと気合が入るのにと、手近な一本を手に取ってみると妙に重い、ろうそくってこんなに重い?  気になるまま、持ち替えて見たり、びっくり返したりしていたら、二人が戻ってきた。


「アルファード様は、そちらになさったのですか? 

青の微妙な色合いが美しいですわね」

「本当に、ろうそくでは見たことが無い色合いですわ」


 そう言われて、どうせどれを選んでいいか分からなかったんだから、これでいいか、色合いがきれいだと言ってくれたし、と、お会計をして学園へと戻る。


 その頃学園では、悲鳴が上がっていたことも知る由もなく、三人は帰り道を歩いていた。


 ラムはシエンタから、姉シェリーの選挙応援を手伝って欲しい。

 出来れば誰か一人平民からも応援してもらえたら有難いのだが、誰かいい人がいれば紹介してくれないか? との手紙を貰って、指定された場所に急いでいた。


 薬学科でしかご一緒したことは無いのだけど、グループ分けで私一人だけ貴族ではなかったので、なんでこんなお偉い様達のグループに入ってしまったのだろう、と緊張でガチガチになっていた私を、優しい笑顔でよろしくね、と、おっしゃって下さったシエンタ様。


「学園内では基本的に身分での差は無いから、呼び捨てでも大丈夫だよ」

 って、そんな真似とても出来ませんと必死に伝えたら、


「じゃあ、せめてハロウィン様ではなく、名前のシエンタで呼んでね」 

 うううっ、ハードル高いです、そんな、じっと見ないで下さい、顔が熱くなっちゃいますから。


 私、きっと今、顔真っ赤でみっともないよね、だから、見ないで下さいってば、もう、お貴族様じゃないのでそんな綺麗な顔が近くにくるなんて、慣れてないんですよ。


「……シ、シエンタ、様」

 その後、髪をわしゃわしゃ撫でられて、…その後は、覚えてない! なんて勿体ない! もうヤダ!

 でも、そのおかげか他の貴族の方々ともスムーズにお話が出来たの。


 そんな、シエンタ様の御力になることが出来るのなら、やります、やらせて下さい、私が平民代表で応援団を結成しますから!


 学園の中央階段、その下にシェリー様、カルーア様、そしてシエンタ様!


「お待たせしてしまいましたか? 申し訳ありませんでした」


「気にしなくても大丈夫よ、私達も来たばかりだから」


 ああっ、双子のシェリー様、お美しいです、そして、やはりシエンタ様と同じお優しそうな笑顔です、もう、全力で応援させていただきますから。


「今日は、カルーアがテラスに面したお茶会室を手配してくれたのよ、三階まで参りましょう」


「はい 」


 うわあ、一番眺めがいいって言われてる場所だよね、ちょっと、ドキドキしちゃう、私が入れるなんて思ってもいなかったから、わ、私、お茶会のマナー、ちゃんと出来るかな?


「どうしたの、ラムさん? 」


「私、お茶会のマナー、…良くわかりません、すみません」


「ふふふ、大丈夫よ、楽しくおしゃべりしながらお茶を楽しむ、それが一番のマナーなんだからね、お作法は必要でしたら、私がお教えしますよ」


 シェリー様、マジ女神です。


 カルーア様が先頭で、その後が私とシェリー様、最後にシエンタ様の順で階段を上っていきます、階段を上がる時男性は、女性の隣か後と決まっているのですって。


 階段の踊り場に差し掛かった時、カルーア様が振り返られ、その直後に悲鳴が学園に響き渡った。


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