出来損ないのハーフエルフ

燦々東里

記憶


「誰だよ! 誰が×××××をっ……」

 ここはどこだろう。誰かが叫んでいる……。

 ぼんやりした視界で、視線をめぐらせる。下方に地面が見えた。どうやら宙に浮いているようだ。

 ということは、夢、だろうか。

 そこは草原だった。眼下に二人の人物が見える。

 一人は幼少期の僕のようだ。今よりも幼い顔に、エルフらしい尖った耳と、それから一房黒髪の混じった銀髪。ハーフエルフは黒髪が混じるものだが、僕の黒髪の混じり方は特殊だ。

 そしてもう一人は、幼い僕より年上の女性。ちょうど今の僕と同い歳くらいだ。髪は僕と同じ銀色の長髪で、まだらに黒髪が混じっている。幼い僕が抱きかかえるその女性は、腹から血を流していた。

「やだ! やだよ、×××××!」

 その女性は虫の息で、今にもこと切れそうだ。

 幼い僕が必死に叫ぶと、女性がゆっくり口を開く。

「……聞いて……あの人は……」


           *

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