十三年前、一家が惨殺された。蘇槿は奇病にかかり、光を恐れ、男恐怖症で、肌が透明に近いほど白くなった。彼女は「吸血鬼」となり

第1話おかしな女法医学者

二〇〇七年。

八月二十九日午前三時、赫国の首都郊外のリゾートで殺人事件が発生した。

一門は惨殺され、そのうちの三人の男性はバラバラにされ、現場は血だらけで、無残で、警察が駆けつけた時には、もう一人の生存者が、三人のナイフを受け、息も絶え絶えになっていた。

一家八人、七人に一人が重傷、現場は掃除され、指紋もフケもなく、cctvが壊れていた。犯人は意図的に知能を持った高度な犯罪者で、何の手がかりもつかめず、結局は懸案になった。

たった一人生き残った女の子は、まだ十歳だった。

この未解決事件は警察のアーカイブでは「829惨事」となっています

二〇二〇年、晩春。

赫国の首都、帝城。

城南署、法医学棟。

深夜九時、二階の解剖室一番からは、確実にモーツァルトの交響曲第40番g短調が響いた。

ビオラ、バイオリン、オーボエなどの楽器が合奏する軽快で高揚した曲は、寂しげな夜にこだまして妙にはっきりとしている。

がらんとした解剖室の中では、解剖台の前の一カ所に明かりがついているだけだった。

一人一人の死体で、左手に開胸器を持ち、右手には砕けた肋骨を握っていた。

左耳にbluetoothヘッドセットをつけ、マスクをした顔からは、真っ黒な集中力のある目だけがのぞいている。

「死亡した男性、54歳、現場の肛門温度は23.5度で、現在の肝臓の温度、死斑と死体の硬直の程度から、死亡は1617時間と判明した。死亡時刻は今日午前2時から3時までで、肋骨が4箇所骨折し、そのうちの1本のchaが肺に入ったが、致命傷ではなかった。臓器に病変があり、糖尿病の合併症であるため、臓器の腐敗と壊死が加速している」と指摘した。

「胃の中の食物は未消化で、食事後三十分もしないうちに死亡したと考えられます。心臓の軽症、それから」

彼女が立ち止まり、bluetoothヘッドセットの向こうから、「死因は分かったの?」と聞いてきた。

受話器からは返事はなく、計器の冷えた音だけが聞こえ、執刀医が皮膚を切り裂いていく様子は、受話器越しにも想像できそうだった。

「ok、十分後に待合室で」マイクの側の池は彼女のことをよく知っている。そういうときは仕事の邪魔をしないほうがいい。

彼は糸を引き、踵を返して事務所を出て階段を上がった。

チ事務室は五階にあり、彼は法医学部の課長で、法医学部の事務を総括している。

最上階は受付エリアで、多目的の会議室が点在している。

vipルームの外には、制服警官が一杯に立っていて、三十代か四十代かと思われる黒々とした顔をした人々がいた。

これだけの人が集まっているのに、現場はしんと静まり返り、不気味な空気に包まれていた。

全員が勝手に道を譲られ、池がドアを押して中に入った。会議室には四人がいた。外の捜査員よりも地位の高い四人だった。

もちろん、雰囲気はもっと抑えられていた。

一級警視が二人、三級警視が一人、もう一人が窓の前に背中合わせに立っていた。

陰のせいで,警備員の階級がよく見えない。

男は紺色の制服を着て、身長一九〇センチ近く、背筋はポプラの木のようにぴんと伸びていて、そこには大きな強靭な力が秘められている。

怒りも威張りもなく、後ろ姿だけでも強烈な圧迫感を与える。

窓の外に広がる果てしない夜のように、冷たく、孤高で、忍んでいた。

池𨩱はハッとした。男の勢いは地位を示しているにもかかわらず、礼儀正しく言った。

「おまえのところは、誰が担当なんだ?」