タッセル

くろせさんきち

タッセル

 ポストを開けると一通の手紙が入っていた。最近、南の方へ引っ越した妹からのものだった。


 「急いで送ってほしいものがある」と書かれていたが、そこから先は文字が滲んでいて読めない。


 ベッド、ソファ、カーテン、お気に入りのぬいぐるみに古道具屋で買ったオルゴール……大事なものは忘れずに持っていったはずだった。


 もう一度文面に目を凝らすと、なんとか"タッセ……”とだけ続きが読めた。タッセ……タッセル……房飾りか。いや、それも一緒に持っていったはずだが……。




 貨物船は無事に到着しただろうか。そんな心配をしていると、妹からの小包が届いた。


 中に入っていたフィルムを廻すと、ペンギンと共に夜空を眺める妹の姿が壁に映った。そして、その視線の先にはオーロラのカーテンが束ねられたため、よりハッキリと見える逆様のオリオンがあった。



(了)




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

タッセル くろせさんきち @ajq04

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る