第六章 王国の賢者と帝国の勇者
第171話 子連れ冒険者夫婦
この世界における9月初めのことである。
ここは、魔王デルフィニウムを統領とした魔王軍と魔王討伐連合軍が激戦を繰り広げた地底魔城。あの決戦の日から2週間余りが経過していた。
既に騎士団もハンターも帰国しており、残っているのは調査隊として残された騎士団の1小隊のみだった。彼らは、魔王と魔族に関する情報を持ち帰るため、この日もボロボロの城内を探索していた。とはいえ、魔族はごく限られた者以外、文字を書く習慣を持っていなかったので、大した収穫は得られずじまいだった。
そろそろ引き上げ時かと小隊長が考えていた頃である。環聖峰中立地帯の奥地であるにも関わらず、そこに来訪した者たちがいた。
「あのぉ~~、お忙しぃところぉ、すみません。ちょっとぉ、よろしいでしょうかぁ?」
のんびりした口調で、城外に待機していた騎士に突如、女性の声が尋ねた。いきなりのことで仰天した騎士が、座っていた岩から立ち上がる。
そこには、神官のような出で立ちをした女性が立っていた。
「なっ!何者だ!貴様は!!いったいどこから現れた!!」
危険地域に、のほほんとした表情で出現した女性を見て、不審に思わないはずはない。騎士は警戒して叫んだ。
「あ、あのぉ、驚かせてしまってぇ、申し訳ぇありません。わたくしはぁ、怪しい物ではござぃません」
低姿勢でスローペースに話す女性を前にして、騎士は若干、警戒心を緩め、よく観察してみた。
少し丸顔だが、均整のとれた顔立ちはとても美しい。神官服で全身が覆われているため露出は全く無いのだが、ピッチリした素材の衣装によって、豊満な胸からヒップにかけてのボディラインがくっきりと浮かんでおり、むしろ、より蠱惑的に映ってしまう。
このような女性が、神に仕えているのだとしたら、かえって神殿の神聖な空気が乱されてしまうのではないかと心配してしまうほどである。
「こ、こんなところに女が一人で出歩くなど、どう考えても怪しいだろうが!名を名乗れ!」
結局のところ、女性の格好も雰囲気も、この場に全くそぐわないものだったため、騎士は再び怒声を浴びせた。そこに、もう一つの声が近づいてきた。今度は男の声である。
「ああ、すまねぇな。騎士さんよ。ウチの女房がビックリさせたみたいで」
森の中から現れたのは、身長2メートルを超える戦士風の男だった。背には大剣を背負っている。精悍な顔立ちだが、左目を裂くように縦に1本の傷跡が残っており、それが彼の風格を一段と凄みのあるものにしている。ただし、失明は免れたようで、両目はしっかりと開いていた。
「貴様、ハンターか?」
「ああ、そうさ。この辺に魔王がいるってんで、やって来たんだが、もう戦いは済んじまったみてぇだな。王国騎士団も大したもんだ」
「なるほど。このご婦人も、貴様が伴ってきたのか?」
「そのとおりだ。女一人が急にこんなとこに現れたら、警戒するのも無理ねぇわな。すまなかった」
「まぁ、そういうことでぇ、ございましたのね。配慮が足りずぅ、申し訳ありませんでした」
女性の方も、自分が勘違いを引き起こしたことに気づき、ともに謝罪する。ようやく騎士は落ち着きを取り戻してハンターに尋ねた。
「いや、こちらこそ、警戒してすまなかった。で、貴殿は、魔王討伐隊に志願するつもりだったのか?」
「うーーん……まぁ、そんなとこかな……それにしても、魔王デルフィニウムってのは、魔族の間では歴代最強って言われてたらしいんだが、よくぞ勇者抜きで倒したもんだ。王国騎士団ってのは、そんなに武力があったんだな。感心感心」
「……何を言っている?我らが王国には、”勇者”ベイローレルがいる。彼の活躍により、魔王デルフィニウムは見事、討伐されたのだ」
「ベイローレルね、噂は聞いてるよ。でも、彼は勇者じゃないだろ」
「貴様、我らが”勇者”を侮辱するのか?」
「いやいや。だって”聖騎士”殿は、前からいたじゃねぇか。異世界から来たわけじゃねぇだろ?」
「は?」
「……ん?」
異世界召喚のことは、王国の中でも重鎮しか知らない極秘事項である。一介の騎士がそんなことを知るはずもない。大剣のハンターは、話が噛み合わないことを不思議に思い、首を傾げた。そこに横から神官の女性がチョイチョイと小突く。
「オスマンサス様ぁ、それは限られたお方しかぁ、ご存じないと思われますのでぇ……」
「あっ、そういえばそうでしたな。ホーリー殿。これは失敬失敬」
『オスマンサス』と呼ばれたハンターと『ホーリー』と呼ばれた女性神官。二人のやり取りに疑問しか浮かばない騎士は、再び疑心暗鬼の表情になった。
そこに城内を調査していた小隊が戻って来た。彼はすぐに小隊長に報告する。小隊長は偉ぶった態度でハンターに詰め寄った。
「私がここの責任者だ。女連れのハンターがいったい何用でこんなところに参った?」
「いや、魔王デルフィニウムを討伐するって聞いたから、手伝いに来たんだがな。一歩遅かったみたいで、もう討伐された後だった」
「一歩どころではないな。とっくの昔に魔王は討伐されたぞ。我ら王国騎士団と”勇者”ベイローレルによってな」
「うん。それなんだけどな、本当に魔王は討伐されたのかね?」
「は?貴様は何を言っている?」
「いやな……本当に魔王デルフィニウムが討伐されたのなら、勇者に反応があってもいいんじゃないかって思うんだわ」
「……全く意味がわからん。ひやかしなら、とっとと帰れ!」
「なぁ、あんた達、実際に魔王は見たのか?」
「なに!?」
オスマンサスから急所を突くような質問をされ、小隊長は答えに窮した。実は、ここに残っていたのは、道中で立ち往生してしまい、決戦の日に間に合わなかった第二部隊から選出されていた。ゆえに魔城での激戦の様子は、他の部隊から伝え聞いただけだったのだ。
「み……見たに決まっているであろう。巨大な……ハチのような男だった……」
「ハチぃぃ?」
歯切れの悪い返事を聞き、オスマンサスは訝しむような顔をする。そして、彼は横にいるホーリーに目くばせした。彼女は一歩前に踏み出し、小隊長に顔を近づけた。しばらく女性に会う機会もなかったところに美人が近寄ってきたので、小隊長は少し緊張した。
「な、なんだね……」
「隊長様ぁ、本当のことをぉ、お聞かせくださいまし。あなた様はぁ、実際に魔王を見たのでしょうかぁ?」
目の前で囁かれたその声は、小隊長の耳の中で不思議な反響を起こした。不思議とその響きに酔いしれたくなる。そして、彼は目を虚ろにし、何も考えずに言葉を発していた。
「……我々は、戦いには参加していない。だが、戦った者たちからの報告によると、魔王は、巨大なハチ男の姿で城の上空に現れ、全員が見ている前で”勇者”に粉砕されたらしい」
言い終わってから、小隊長はハッとして後ろに下がった。そして、剣を抜き放ちながら叫ぶ。
「きっ、貴様!今、私に何をした!!」
目の前に剣を突きつけられたホーリーは、たじろぐこともなく、相変わらずのゆっくりした口調で微笑み返す。
「うふふふ、何のことでぇ、ございましょうかぁ?」
「とぼけるでない!貴様は今……」
小隊長は、途中で言葉を止めた。
いつの間にか、ホーリーと自分との間にオスマンサスが割って入り、しかも、剣を奪われていたのだ。小隊長はレベル31だが、その力の差に絶句せざるを得なかった。
「女に剣を向けるとは、王国騎士団はずいぶんと野蛮なんだな」
オスマンサスは、奪った剣を小隊長に返しながら侮蔑の表情で呟く。この光景を見た騎士団の調査隊は、一斉に剣を引き抜いて彼らを囲んだ。
「おいおい、先に剣を抜いたのはそっちだろうが。俺は手すら出しちゃいねぇぞ」
「黙れ!我らが”勇者”を侮辱した上に、わけのわからない術を使いおって!いったい何者だ!この魔王城に何をしに来た!よもや人間の姿を借りた魔族ではあるまいな!」
警戒して後退りしながらも、再び剣を握って吠える小隊長。
だが、オスマンサスは、彼らの包囲網に全く怯むことなく平然と語った。
「やれやれ……貴族出身のヤツらってのは、どこの国でも頭が固くて話にならねぇな……。ま、大方のことはわかったよ。あんたらは、本物の魔王を倒しちゃいない。おそらく偽物を掴まされたんだろう。でなきゃ、ここに本物の勇者がいるってのに、何の変化も起こらないのは、おかしな話だ」
「「……は?」」
余裕の表情で意味不明のことを言うオスマンサスに、調査隊は緊張感を持ちながらも首を傾げる。
まさか、この男が”勇者”だとでも言うのだろうか。
そんな疑問が全員の頭によぎった時だった。
突如、彼らの足元から小さな声が聞こえた。
「ねぇねぇ、おじさんたち。やっぱりおかしいですよ。城の中を見て来たんですけど、魔族の死体ばっかりで、魔王らしき人の遺体が無かったんです。もしかして持って帰ったんですか?」
なんと、そこには小さな少年が立っていた。
8歳か9歳程度の少年である。
訓練を積んできた騎士たちの誰一人、その接近に気づけなかった。予想外の登場人物に驚いた彼らは、少年がオスマンサスとホーリーのもとまで歩いていくのを黙って見守るしかなかった。
「魔王デルフィニウムはですね。ぼくより少し年下の女の子らしいんですよ。帝国の人たちが魔族を捕まえて尋問したので、間違いは無いはずです」
「「………………」」
もはや彼らの耳には、少年の言葉が入ってこない。この危険地域に女性が来たことだけでも驚く事実なのに、小さな男の子までも現れたのだ。その不自然さに彼らは愕然とした。
「こ、こんな所に子どもを連れてくるだと……これではまるで、あの……」
一人の騎士が思わず呟いた。それを聞き逃さなかったホーリーは、微笑を浮かべてその騎士に接近し、顔を近づけた。
「騎士様ぁ、本当のことをぉ、お聞かせくださいまし。この戦場でぇ、小さな女の子を見ませんでしたかぁ?」
甘ったるい口調の声を聞くと、この騎士もまた、虚ろな目になって気持ち良く全ての情報を吐き出してしまう。
「……奇妙なハンター夫婦が幼女を連れていた」
「そのご夫婦とはぁ、どこのどなたで?」
「……それは知らん。騎士団の誰もが不思議がっていたのだ」
「そうでございますか。ありがとうございました」
ニッコリとおじぎをするホーリー。
この騎士もまた、しゃべり終わってから、ハッとして後退りした。
「なっ!なんなんだ!お前は!」
不気味に思った騎士が警戒心を露わにするが、ホーリーは悠然としている。そして、彼ら3人は調査隊に包囲されたまま戦闘態勢にも入らず、オスマンは平然と少年に尋ねていた。
「おい、リュウタ。もう調査は済んだのか?」
「ぼくの名前は『
「お前だって俺のこと、短く呼ぶじゃねぇか」
「だって、オスマンさんは大人だから」
「なら、立派な勇者であるお前を大人扱いしても文句はないだろ」
「うっ……それはそうですけど……」
「んもうぉ!お二人ともぉ、いい加減にぃ、してくださぁい!」
悠長に話を続ける2人を止めに入ったホーリーだが、彼女の次の言葉はさらに場違いで呑気なものだった。
「この旅ではぁ、わたくしが母親でぇ、オスマンサス様が父親の役をすることにぃ、していたではありませんか。ね、リュウタローぼっちゃん?」
これを言われて、オスマンサスと『柳太郎』と名乗った少年は、慌てて言い直した。
「そうでした!お父さん!もうこの城の調査は終わりました!」
「そ、そうか。ご苦労だったな。息子よ」
「はい。中を見ても死体だらけで、魔王に関する物は何もありませんでした。目ぼしい物は、既に王国の人たちが持って行った可能性もありますね。ここにいても時間の無駄だと思います」
「しっかり者のお前が言うんだから、間違いないな。じゃ、次は王国まで行って、あっちの勇者に話を聞いてみようか」
「ですね。ホーリーさ……お母さんがいれば、どんな人も嘘をつけませんから」
「はい。ではぁ、王都マガダを目指してぇ、旅を急ぎましょう」
勝手に話を進め、何事も無かったかのように動き出す3人を見て、彼らを包囲している調査隊は呆気に取られた。しかし、そうやすやすと包囲網を突破させるわけにはいかない。また、突破できるとも思えない。
「待て。こちらの質問には何一つ答えず立ち去ろうとは、いい度胸だな。どこの誰だかは知らぬが、このままおめおめ帰らせるわけにはいかんぞ」
全員で剣を構えたまま、にじり寄り、小隊長がそう告げた時である。
既に彼らは、3人の姿を見失っていた。
「物騒ですね。おじさんたち。そんな危ない物を持って近づかないでくださいよ。こんな普通の9歳の小学生に……お互い、痛いのはイヤでしょう?」
少年、柳太郎の声が小隊長の背後から聞こえた。驚愕して振り返ると、既に包囲網を突破している3人は悠々と歩いて立ち去ろうとしている。
一瞬だけ息を呑み、怯んだ小隊長だったが、次の瞬間には、怒りを含んだ声で調査隊に号令をかけた。
「全員、突撃だ!!ヤツらをひっ捕らえよ!!!」
50人で編成される小隊が、一斉に3人の旅人に襲い掛かる。彼らに最も近い位置から走り出した1人の騎士が、真っ先に柳太郎を目掛けて剣を突き出した。
「ぼくみたいな子どもに剣を向けるんですか?それが騎士団のやり方なんですか。そうですか。おじさんたちにはガッカリですね……」
少年が、そうボヤいた瞬間だった。
ドスッ!!
調査隊の全員が、愕然として止まった。
「がっ……ふ……」
騎士の剣が突き立てられたのは、小隊長の腹部だったのだ。
この小隊長は、号令を発してから一歩も動いていない。だが、どういうわけか、柳太郎に向けられた騎士の刺突は、位置も方向も全く変えて、小隊長に向けられていたのだ。
剣を突き立てられた小隊長も驚愕しているが、それ以上に攻撃してしまった本人が最も動揺していた。
「た、隊長!どうして目の前に現れたんですか!?」
彼としては、自分が攻撃した眼前に小隊長が飛び込んで来たように映ったのだ。しかし、実際には彼が瞬間移動していたのである。方向すら反転された状態で。
「だから言ったんですよ……痛いのはイヤでしょう、って」
柳太郎は、いつの間にか抜いていた剣を鞘に戻しながら独り言を呟いた。剣は腰に差すと地面を引き摺ってしまうため、背中に背負うようにしている。大剣を背負ったオスマンサスと並んで歩くと、後ろ姿は本当の親子のようであった。
「相変わらず、本っ当におっそろしいな。お前の剣技は」
「でも、ちょっとやりすぎましたかね。あの隊長さん、死ななければいいですけど……」
「なぁに、あれでも実戦経験のある連中だ。治癒魔法の宝珠も持ってるだろうし、あの程度の傷、適切に処置すりゃ、問題ねぇよ。しばらく立てねぇだろうけどな」
「そうですか。なら、よかった」
自分たちの隊長が不可解な現象によって負傷してしまったため、調査隊はこれ以上の追撃をしなかった。
彼らを尻目に3人は悠々と崖を登り、断崖に囲まれた地底魔城を後にした。森に入った3人は今後の方針を相談しながら歩いた。
「てことで、次は砂漠の王国『ラージャグリハ』に潜入だ。まずは”勇者”ベイローレルを探すぞ」
「幼女を連れていたぁ、奇妙なハンター夫婦……というのも気になりますねぇ」
「それにしても、ここまで来るとずいぶん暖かくなりますね。『帝国』はずっと寒かったから、ぼく、すごく嬉しいです」
「いやいや、リュウタよ。これから本格的な冬に入るんだ。アレでヘコたれてたら、身が持たんぞ」
「知ってますよ。魔王を倒すため、僕は痛い思いをしなくて済むように、この世界に来てから1年も修行してきたんですから」
「うふふ。期待してぇ、おりますよ。我が『イマーラヤ』帝国の勇者、リュウタロー様」
「はい。元の世界に戻るため、『重圧の魔王』デルフィニウムを必ず討ち取ります!そのためにぼくは召喚されたんですから!」
――さて、戦争終結後の魔城にて、そのような事件があったことなど、僕、白金蓮が知るべくもない。
この世界における9月中旬。
僕たちは、魔王討伐記念の祝賀会に出席するため、王都マガダに向かうべく、自動車に乗ってベナレスを出発しようとしていた。
その直前、我が家を訪問してくれたハンターギルド本部長のウォールナットさんから礼を言われた。
「兄ちゃんと姉ちゃんのおかげで、この街の裏で行われていた人身売買が根絶されたよ。誰も知らねぇことだが、おめぇさん達は、この街の英雄だな!」
「いえ。もともとは牡丹が怒ったことが始まりですので」
「だよねぇ。牡丹は偉いんだもんねぇーー」
親バカな僕と嫁さんは、牡丹を褒めながら、全ての功労は彼女にあると主張した。それを笑いながら、ウォールナットさんはしみじみと言った。
「いやはや、それにしても、この子があの『破滅の魔王』だとは信じらんねぇな!」
「「え?破滅の?」」
不思議な呼び方をする本部長に僕たち夫婦は首を傾げた。
「なんだ、二人とも知らねぇのか?今年は『破滅の魔王』が出現するらしいってのが、世間の噂だったんだぜ?てっきり俺は、今回の魔王がそうなんだろうと思ってたんだが」
「そうなんですか……言われてみれば、今まで何度も魔王が出現してきてるんだから、固有の呼び名があっても不思議ではないですね」
「ま、今の話は忘れてくれ!その嬢ちゃんに『破滅』なんて言葉は似合わねぇや!それよりほら、ユリカの姉ちゃん!頼まれてたモンを持ってきたぜ!」
「えっ!ありがとう!わざわざおじいちゃんが持って来てくれるなんて!」
ウォールナットさんが持参してきた物。
それは、嫁さんの剣だった。
牡丹との決戦において、彼女は牡丹を正気に戻すため、自ら剣をへし折り、その音を利用して、死んだフリをした。剣士としては大いに間違った剣の使い方であるが、嫁さんはこれによって最高の仕事をしたのだ。
その修理をウォールナットさんに相談してみたところ、快く引き受けてくれた上、自分で職人に頼んでくれたのだ。
「お前さん達は、本当は世界の英雄なんだ。これくらい当然のことさ。元はただの鉄製の剣だったみてぇだが、俺のダチに腕のいい職人がいてな。頼んだら、最高の一本に鍛え直してくれたぜ」
「ありがと。大事に使うね」
「ありがとうございます!ウォールナットさん!」
僕も力強く礼を述べた。
この後、屋敷の使用人たちから総出で見送られ、僕たちは仲間を同乗させて自動車で王都へと出発した。
道中、シャクヤに先程の”破滅の魔王”のことを質問すると、意外な答えが返ってきた。
「ボタン様の真実をお聞きして以来、わたくしも魔王に関する印象が変わりまして、黙っていたのでございますが、実は今年は、この世界に出現した最初の魔王が倒されてから、ちょうど2000年になるのでございます」
「「へぇーー」」
「そして、この年、大魔王を超える魔王が降臨し、世界は滅亡すると予言されているのでございます。その名も『破滅の魔神王』と」
「「え?」」
僕と嫁さんは、予想外の深刻な言葉に疑問の声を出すのだった。
――第二部 破滅の魔神王編 開幕――
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