第20話 グループトーク
楽しいサッカー部の練習が終わった後、俺は重い足取りで家へと向かう。
1人で帰り道を歩く中、頭の中で思い浮かべるのは今日の昼休みの出来事である。
「一体‥‥‥何でこんなことになったんだ」
玲奈との関係も改善してきたと思った最中、今日だけで懸案事項が2つも増えた。
しかも1つは詳細がまだ判明していないし、これからどうしよう。
「ただいま」
家に帰ってすぐ玄関のドアを開けても、何も返事がない。
返事がないどころか、辺り一面シーンと静まり返っている
「誰もいないのかな?」
いや、バレー部の練習はサッカー部よりも早く終わってるはずだし、もしかすると姉ちゃんは部屋にいるのかもしれない。
俺はその場でため息をついた後2階の階段を登り、姉ちゃんの部屋の前に来た。
「正直入りたくないんだけどな」
だけど今日の朝姉ちゃんと約束した手前、中に入らないという選択肢はない。
しょうがなく、本当にしょうがなく姉ちゃんの部屋をノックしてドアを開けた。
「姉ちゃん、ただい‥‥‥ぶっ!?」
姉ちゃんの部屋に入ろうとドアを開けると、正面からゴミ箱がぶん投げられた。
そのゴミ箱を避けることができず、見事に顔面にヒットして体中ゴミまみれになる。
おまけにその衝撃でバランスを崩し、盛大に廊下に倒れてしまう。
「痛ってぇな!! いきなり何するんだよ!! 姉ちゃん!!」
「あんた!! 家に帰ってきてから、すぐあたしの部屋に入ったでしょ!!」
「そうだよ!! それが何か悪いのかよ?」
「それは悪くないわ。だけどね‥‥‥あんた今日部活やって来たでしょ?」
「何でそんなこと知ってるんだよ!? 姉ちゃんもしかしてエスパー?」
「エスパーじゃないわ。あんたね、汗臭いのよ。その様子だと、練習が終わった制汗スプレーも何もしていないでしょ?」
「うっ!?」
「どうやら図星のようね。まずはお風呂に入って体を綺麗にして来なさい!! 話はそれからよ!!」
勢いよくドアが閉められ、俺は廊下でゴミまみれ。
起き上がった俺はゴミをゴミ箱の中に入れ、姉ちゃんの部屋の前に置く。
「仕方がないな。ここは先に風呂に入るしかないか。風呂に入ってから姉ちゃんの話を聞きに行こう」
そうと決めたら話が早い。部屋で着替え等の準備をして、俺は風呂場へと向かう。
風呂場につき、全裸になり頭と体を洗って風呂に入った。
「ふぃーーーー、生き返るーーーー」
こうして熱い風呂に入ってると今までの悩みなんかちっぽけに感じてしまう。
それぐらい風呂は気持ちいい。気分が晴れる。
「そういえば、さっき紗耶香がゴールデンウイークの予定を
スマホをタオルで巻き、風呂蓋の上においてスマホを開く。
画面には既に何通か通知が来ていた。
「おっ! 早速連絡が来てるじゃん」
紗耶香:おっつーー
紗耶香:ゴールデンウイークにやる勉強会の件、いつが空いてる?
友島楓:私はいつでもいいですよ。‥‥‥帰宅部なので
守 :僕はゴールデンウイークの後半がいいな。前半は部活があるから。春樹はいつがいい?
やばい、気づかないうちに話が進行してる。しかも連絡が来てから結構時間が経ってるぞ。
紗耶香:春樹から返事がないわね
紗耶香:一体何してるのよ
守 :あいつもサッカー部だから練習が大変なんだよ
友島楓:もってことは、来栖君もサッカー部何ですか?
守 :そうだよ
紗耶香:同じサッカー部なのに、返事の速さが全然違うわね
まずい!! 紗耶香に不信感を持たれたぞ。
明日ギャアギャアと言われる前に、早く返信しないと。何を言われるかわからない。
友島楓:そういえばうちのサッカー部ってそこそこ強かったですよね
守 :うん。この地区でも中堅ぐらいの強さかな
守 :そういえば楓ちゃんは帰宅部って言ってたけど、紗耶香は何の部活に入ってるの?
紗耶香:何でそんなことをあんたに話さなくちゃいけないの?
守 :辛辣!? もう少し俺に優しくしてくれてもいいじゃん!!
守 :春樹には優しいのに
紗耶香:別に春樹に特別優しいわけじゃないわよ!!
紗耶香:私は平等に接してるわ!!」
守 :とかいって、実は紗耶香ちゃん。春樹のことを‥‥‥
紗耶香:守!! それ以上言ったら怒るわよ!!
俺が返信にもたついている間にも、グループトークは続いていく。
こんな盛り上がってたら、もう俺なんていらないんじゃないか?
春樹 :ごめん、連絡が遅くなって
春樹 :家の事情があるから、ゴールデンウイークの件はまた明日相談させてもらってもいい?
紗耶香:おつかれーー
紗耶香:全然いいよ! また明日相談しよう
友島楓:そうだ! それならまた明日お昼を一緒に食べませんか?
春樹 :えっ!?
守 :いいじゃん! それ! 楓ちゃん、ナイスアイディア!
紗耶香:それじゃあ明日のお昼もまた春樹の所に集合ね
守 :了解!
友島楓:わかりました
紗耶香:ふふっ、楽しみね
入るタイミングを逸してしまい、話がどんどん進んでいく。
こういうグループトークって、入力に慣れてないと会話のタイミングを外してしまいどんどん話に置いてかれてしまう。
「さすがにここまで盛り上がっている所に水を差すのは悪いよな」
しょうがなく『わかった。また明日よろしくね』とメッセージを送り、一旦スマホの画面を閉じた。
「春樹ーー!! いつまでお風呂に入ってるのよ!!」
「ねっ、姉ちゃん!?」
「この超絶美人で優等生のお姉さまが部屋で待ってるのに、一体どういう了見を持ってるのよ!!
「悪かったって。もう少しで出るから、ちょっと待ってて」
タオルに巻いたスマホを持って、急いで風呂を出る。そして部屋着であるジャージに着替えて、俺は姉ちゃんが待つ部屋へと向かうのだった。
------------------------------------------------------------------------------------------------
ご覧いただきありがとうございます
よろしければフォローや★★★の評価、応援をよろしくお願いします
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます