第16話 断罪 女は自ら作りし穴へと堕ちる
ぎいぃぃぃぃ
手入れの行き届いている筈の公爵邸の奥にあるサロンの扉がまるで荒れた家屋の建付けの悪い扉の様な軋む音を、それも気づけば不気味な程暗い室内へじわりと静かに響き渡る。
また何故気付かなかったのだろうか。
先程まで眩い陽光によりここは清浄な光に満ちた場所だったのが、ほんの少しの時間経過だけで室内奥にまで光が射し込まなくなっただけなのだろうか。
いやその様な筈はない。
ヴィヴィアンの考案した魔石を用いた人感センサー付きの照明が公爵邸には沢山備え付けられている。
だからこのサロンに人がいると感知されれば問題なく照明は自動的に点灯するのだから……。
そうそしてこのサロンには確実に人間は存在した。
「ちょっとぉ、一体どうなっているのよったくぅ!! 公爵家と言えばお貴族様の中でも結構偉いんでしょっ。だったら明かりくらいケチケチするなって言うのよ!! ねぇ、おじさんもそう思うで……しょ?」
ベラは仄暗い室内の中、傍にいるだろうダレンへ文句を言ってみた――――と言うよりもである。
彼女はヴィヴィアン達が退室してからと言うものずっとダレンへうだうだと文句を言い続けていたのだ。
だがそんなベラに対しダレンは……。
「私は当家の
そうベラへ返答をした後は一切ダレンは何を言われようとも一切口を開かなかったのである。
ただ静かにベラと名乗る女を冷ややかな視線で以って見ていただけだった。
まあベラ
当のダレンは一向に返事すらなく幾ら壁と思えとは言えだ。
ベラにはどうしても自分以外の人の気配が、気付けば全くしないと言う事に益々恐怖を煽られてしまうのだ。
「ねぇちょっと……幾ら壁だって言っても返事くらいしなさいよっ。言っておくけどアタシは客!! それももう直ぐここの旦那と
どんなにベラが叫んでもダレンが返答をする気配はない。
いや、彼女の傍にいるだろうダレンの気配が冗談ではなく本当に一切感じられないのだ。
息遣いや衣擦れ、他にも生きている人間の出すであろう生活音と言う音の一つすらベラ自身のモノしか感じられない。
「ちょ、も、もしかしなくってもここにはあ、アタシ一人……だけ?」
不安に駆られベラは辺りをきょろきょろと見廻してみる。
確かにここは完全なる闇の中ではない。
ただ仄暗いだけ。
時間にすれば15時を過ぎた頃……?
そうまだ15時を過ぎた頃なのに、然も今は真冬ではなく初夏で日は長い筈。
そして何よりも15時と言えばまだまだ普通に明るい時間帯。
「あっ⁉」
そこで初めて今のこの現状が普通でない事にベラは思い至ると同時に、せり上がる恐怖感は既に限界を迎えようとしていた。
「じょ、冗談じゃあないわよっ。そ、そうよ命あっての物種なんだから!! そう、だから、だか……ひぃっ⁉」
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