オタクでボッチが恋をした件
モッチー
第1話 俺ボッチですが
教室に入ると、自分の席に一直線に行き座る。
俺の名は、堂本謙、高校生になって早2ヶ月になるが、誰とも挨拶を交わさない。
ポケットから、スマホを取り出し無線イヤホンを耳に付けるとお気に入りの音楽を流す。深夜アニメの主題歌でお気に入りになったL○SAの声が流れる。
俺には、友達という物が居ない。小さい頃に、同い年の子と比べると一回り小さな体に鼻に掛かる声をからかわれて依頼、人と話すのが嫌いになったのもあるが、父親の転勤に次ぐ転勤や過保護すぎる父親に連れ回され大人の中で育ったのも原因だ。
大人の話に、入らないでおとなしくそばで話を聞くだけだったのも大人には、良い子に映ったのだろう。
本当は、人見知りなのに寂しがり屋というのもあって父親に付いていただけなんだけれど、知らない事を色々聞けて楽しかったのは本当だ。
父親は、いろんな事を教えてくれた。教えたことをすぐに理解できた事や、尊敬の眼差しで見られるのが嬉しかったらしく、こんな事知っているかと酔うといろんな宿題を出されたっけ。
父親が居ないときには、百科事典が友達だった。TVなんかで出てくる興味引かれる単語を引いていくと知らない言葉に出くわす。その意味を探るべくまたページを捲るということが楽しかった。
こうして、高校生になった今も他人に対して興味がわかなかったために、ボッチとなってしまった。
家族が、偏食過ぎる俺に対してよく愚痴をこぼしていた“あんたは、霞を食って生きているのか”と、でも当時稼ぎの良かった父親のお陰で贅沢な食事を食べて今は、180㎝に届きそうなぐらい背が伸び、武術の稽古事で体も細マッチョになった。
転校につぐ転校で、友達が出来無かったし、学校により教科書や授業ペースが異なるため、独自で勉強する癖が付いてしまって学校には、出席するだけのような状態であるが、成績は学年十指に入っている。
そんな俺の前に、紙を短く切った細面の男が立った、名前を桐ヶ谷敦という野球部に所属しているやんちゃなやつだ。
「おい何聞いてる?」いうが早いかスマホを取り上げると画面を見た。
そこには、頬杖をついて微笑むL○SAと曲のタイトルが映っていた。
「キショ!こいつアニソン聞いてやがる。高校生にもなって!オタクやろう」と侮蔑した目で見下ろした。
いや、L○SAだけでアニソンとか分かる方も大概だと思うんだがと、思っていると一人の女生徒が近づいてきて「誰が、何聞こうとかってでしょ?それで迷惑掛けていないんだから」と桐ヶ谷からスマホを取り上げると、俺に返してくれた。
彼女は、クラス委員長の市ノ瀬紗綾である。白い肌に整った顔立ち、スタイルも出るところは出て引っ込むところは引っ込んでいる。長い髪をポニテにしているが 背中の真ん中まである。そして何よりクラス一番の才女と来た。
目は、少しきつめだが、それも魅力の一つで男子生徒には、ファンクラブを作って慕っているやつもいる。
「あなたも、いやならいやといった方が良いわよ」と小さく微笑んでくれる。
「うぃす」ようやく返せた言葉はそれだけである。ほんとうは、ありがとうといいたいのだが、今も鼻に掛かる女っぽい声を聞かれたくないと心に引っかかって言葉が出ない。
朝から絡まれた最悪なスタートだったが、その後の覚えてしまったつまらない授業をなんとか終えると、荷物を片付けそそくさと家路を急ぐ。
急ぐ理由は、昨日夜遅くに仕上げたネット小説の校正とアップをする為である。
家は、電車で高校のある駅から4つ駅でおりてさらに自転車で10分ほど行った閑静な住宅街にある。
その日も、帰宅ラッシュで混み合った車内で、次のネタを考えていると、一人の女子高生に目が止まった。
彼女は、隣のリーマン風の男を睨んだりもじもじしたりしている。若干耳が赤くなっている。
彼女の様子からたぶん痴漢に遭っているのだろう。
俺は、人混みを縫うように移動し、彼女とリーマンの間に立った。
リーマンの腕を握り「おっさん、何してんねん」と睨んだ。
男は、「何だ、急に人の腕をつかんで」と逆に睨んでくる。
俺は男を無視して、彼女に掛けようと向き直った所。目に涙をためた市ノ瀬紗綾がいた。
「委員長?大丈夫か?」声が裏返りそうになりながら尋ねるとコクンと首を振った。
「この男に、触られた?」というとまたも、コクンと首を振るだけだった。
「次の駅で、降りて大丈夫?」優しく尋ねると「良いよ」とようやく言葉を発してくれた。
なので今度は男に向って「次の駅で降りようか」とにらみを利かせて言葉を発する。
男は、腕をふりほどこうと必死にもがいているがその手は離れない。
自慢じゃないが、調子が良ければ握力は50キロを計測するのだから、簡単には外れないよ。
次の駅に、着くと早速駅員に話をすると駅員室に3人を案内してくれた。
その間もリーマンは、間違いだのと騒いでいたが無視をした。
警察もやってきて、結構長い間事情聴取されたが、市ノ瀬は俺の横で事の顛末をしっかり話していた。俺の手をしっかりと握りながら。
解放されたのは、日が沈んだ後だった。なので彼女を家まで送ることになってしまった。
彼女の家は、俺が降りる駅の一つ前だったので一緒に駅を降りる。
何故か、彼女は俺の手を離してくれず、そのまま歩いて家を目指した。
彼女の家は、駅から5分ほどで着いた。
家は、一辺25メートルは有ろうかと思う大きな塀に囲まれた3階建てだ、彼女は、ご令嬢というやつ?
家には、母親が居たが痴漢に遭って助けられたと答えた市ノ瀬により夕飯を一緒に取ることとなってしまった。
初めての人と食事なんていやだ。早く帰りたいよ。
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