第2話

 一瞬物凄く眩しくて、思わず目を閉じてんだけど、次の瞬間には熱さも眩しさも消えて、静寂が訪れた。

 授業中に寝ているんだと考えたって静かすぎるし、机に伏して寝ている感じでもない。

 いうなれば……保健室のベッドの上?

 さてはさっきまでの異世界だのなんだのってのは夢だな?いや、まぁ夢なんだろうな。

 普通に考えて可笑しいし、一クラス分全員が転移させられたとか、どんな壮大な魔法だよってな。

 「お……おぉ……」

 目を開けてみると、そこは白い部屋の中で、そのくせ物が多くて小汚い……散らかった部屋の中だった。

 病院の個室だと前向きに考える事も出来たかもしれない部屋の中には、背中から羽を生やした男がいる事で台無しになっている。

 「あ、目覚めましたか。初めまして、私カロンと申します」

 さっきまで見ていたのが夢ではなく現実なら、俺は地球に帰されたはずなんじゃないのか?なのになぜまだこんなに異世界情緒著しい場所にいるんだ?

 「……俺は藍川。で?ここは何処なんだ?」

 本当に地球に帰してくれるんだろうな?

 「ここは私の作業部屋……ですかね?あ、私管理者なんですよ。えっと、貴方方27人を任されています」

 急に詳しい自己紹介をされても……。

 あぁ、27人の担当者って事なんだな?

 「俺さ、白い服着て羽ついた女に地球に帰すって言われたんだけど、いつ帰れんの?」

 「あ、はい見ていました。本当ならあのまま適当な場所に転生という形になるのですが……ある程度の希望を聞こうと思いまして」

 おぉ……適当な場所に戻されなくて済んでよかったよ。で、ある程度の希望まで聞いてくれるのか。

 でも待てよ?元の場所、教室に戻ったとしても、他のクラスメートはまだあの羽有女の所にいるんだよな?って事は、教室に戻っても俺1人なんじゃ……クラス全員が消えた怪事件の生き残り。みたいな珍獣扱いを受けるのは必至だ。

 なら俺は今日学校を休んだって事にして、家に帰してもらおう。

 「んじゃ、家に帰してくれたら良いよ」

 「あー……転生、なので……えっと、近々子を授かる予定の地球人リストです。この中からご両親にする地球人を選んでください」

 そう言って手渡された大量の資料には、男女の顔や性格などが細かくピッチリを書き込まれている。で?ここから両親を選べ?

 ん?

 「もしかして、俺……赤ん坊からって事?」

 「はい」

 「……念のために聞くけど、藍川としての俺じゃない?」

 「えぇ。藍川としては既に亡くなられておりますので」

 「はぁ!?」

 あの一瞬眩しくて一瞬熱かったあの瞬間、俺はあの羽有女に殺されたって訳か!

 勝手に連れて来て勝手にゴミ認定して、そんで殺すとか外道としか言いようがないぞ……どんな異世界にいる悪者よりも邪悪じゃねーか!

 「ここに来た影響から、来世では今世の記憶が残ってしまいますので、ご了承ください」

 うわぁ……地獄かよ。

 彼女との久しぶりのデートが今週末に待っていたんだぞ?それを奪われただけでなく、俺は赤ちゃんからのリスタート。彼女の事をはっきりと覚えているのに結ばれないどころか、幸せな結婚をしている様子を見る事になるかも知れないとか?子供連れて歩いてる所を見る事になったりとか?あるかもしれないって事なんだろ?

 こっちは久しぶりのデートだって喜んでる記憶のまま!

 まじで、地獄かよ……こうなったら彼女が結婚するまで待って、その子供として転生……してどうする。

 「転生する時間って、ここに連れてこられる時間よりも遡る事って出来んの?」

 それなら俺が産まれた日に合わせて生まれるようにして、尚且つ俺の両親を選べば、また俺として生き直せる。

 「貢献度が低いので、その……本当ならこうして両親を選ぶ権利も貴方にはなくて……」

 貢献度?

 勝手に連れてこられた場所には何やら細かい決まりがあるようだ。

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