第3話 そのまた次の土曜日



「あ、今日は朝からでっか、お父さん。毎週毎週、お疲れさんですなぁ。と言うても、わても変わりまへんけどな、ははっ。

 まぁ、特に何もすることない年寄りにとったら、唯一の娯楽みたいなもんですからな。

 おたくも? そうでっしゃろなぁ。また奥さんもいてはるんでっか? 夫婦そろって、よろしいですなぁ。

 横、あいてまっか? ほんだらここで打たしてもらいますわ。


 ……そやけど夫婦でパチンコとなったら、トモコちゃんはまた駐車場でんな。ここに連れてきはったらよろしいのに。寂しいやろし、何より危ないでっせ。あんな車の出入りする場所に子供一人やなんて。

 わてが言うのもなんやけど、もうちょい面倒みたらなあきまへんで。人さらい、子取ことりにでも取られたらことでっせ」


「いやぁ……そう言われたら何も言えませんけどね。この中、空気悪いでしょ。音もやかましいしね」


「子供の遊ぶ場所のある店、ってのも聞いたことあるけど、こないな郊外のさびれた店にはありまへんしな」


「それにここ、結構ガラも悪いですからね」


「それもそうでんなぁ……お父さん、いつもこないして来てはるんでっか?」


「ええ、まぁ……ここんとこ、会社帰りに毎日通い詰めですわ。景気も全然よぉならんし、残業もさしてもらわれへんしね。ちょっとでもと、まぁ小遣い稼ぎとストレス発散を兼ねて」


「奥さんも一緒に、でっか」


「いやぁ、あいつは朝からずっとですわ。ここのぬしみたいなもんですから。大体私らが出会ったのも、パチンコ屋ですし」


「そうでっか……まぁ、よそさんの台所事情を聞くのもなんでっけど、奥さん、パートとかは考えてはらへんのでっか」


「私もそれ、よぉうんですけどね……トモコがおりますでしょ。なかなか子供を預かってくれるようなパート先なんてないですしね。かと言って、一人で家に閉じ込めておく訳にもいきませんし。

 嫁も、トモコさえ何とかなったら、パート口はなんぼでもある、みたいなことはうんですけど……ちょっと頑張って稼いで、今よりもぉちょいましな家にでも住みたいんですけどね。

 保育園に入れるわけにも行きませんし。高いでっしゃろ、きょうび何するにしても、みんな金ですからね」


「なるほどねえ……おっ、お父さん、来たんちゃいますか」


「ほんまや、頼むで……7、7……7! 来た!」



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