超強くてニューゲーム

プロローグ

「久しぶりだな」


辺りを見回し呟く。


空を覆いつくさんばかりの建物。

大勢の人々が行きかう雑踏。

俺は帰って来た。


――かつての世界うまれこきょうへと。


街行く人間は俺を見て、奇異の眼差しを向ける。

パニックにならない辺り、俺のこの姿をコスプレか何かだと思っているのだろう。


これから自分達に何が起こるのかも知らないで、めでたい奴らだ。


「あれから6年……いや、7年か……」


俺のいない間に、さぞかし大量のゲームが発売されている事だろう。

以前の俺なら喜んで買いあさったに違いない。

だが今更、子供だましのゲームになど興味はなかった。


――何故なら、俺の目の前に面白い現実ゲーム盤が広がっているのだから。


「レジェンディアの方は、まあもう大丈夫だろう」


影からネッドを王に押し上げ。

3年程背後から不自然のない程度に状況をコントロールし、現状はかなり安定している状態にある。

まあ偶にチェックはするが、余程の事がない限り問題は無いはずだ。


最早あの世界に、不必要に干渉するつもりはなかった。


ネッドへの報酬と言うのもあるが――


「オメガには、大きな借りが出来てしまったからな」


奴には奴の目論見があった訳だが。

だがそれでも、あのムカつく女神を殺せたのは大きい。

あれは奴の協力なしには到底成し得なかった事だ。


「くくく。奪われた力を回収できただけではなく、神を殺した事でその力まで取り込む事ができた。奴には感謝してもしきれん」


こう見えて、俺は借りはきっちり返す質だ。

だから、オメガの最後の願いを俺は聞き届けてやった。


息子イモータルと一緒に……いや、今は奴の方が父親か。

ま、精々幸せに暮らすといい。


「さて……まずはどうするかな」


――魔王を生み出す?


いや、今度は最初から俺が魔王をやってもいいか。

裏でこそこそやるのも悪くはないが、いかにもなボスですをやるのも案外楽しかったしな。


「取り敢えず、月辺りでも拠点にするとしよう」


周りから悲鳴が上がる。

姿をドラゴンへと変えた俺から、雲の子を散らす様に人間達が逃げ惑う。


翼を羽搏かせると、突風が巻き起こる。

逃げ惑う人間達が宙を舞い。

ビルのガラスが一斉に飛び散った。


俺は構わず数度翼を羽搏かせ、大空へと舞い上がる。


「さあ、ゲームスタートだ。タイトルは、そうだな――――」


月明りの中、一匹の赤い竜が夜空を駆け昇る。


それは危険なゲーム開始の合図。


果たして、次のゲームにはどんなエンディングが待っているのか?


それは神すらも知り得ない。


願わくば幸福なエンディングを――



~Fin~




――――――――――――


拙作に最後までお付き合い頂き有難うございました!


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