エピローグ

「陛下。お手紙です」


「ありがとう」


お手伝いさんから手紙を受け取り、寝室へと向かう。

グヴェルが死んで、あれから3年。

世界はようやく落ち着きを取り戻してきた。


あの戦いで人類は7割以上が命を落とし、国の機能も完全に停止している状態――王族や貴族は全て皆殺しにされていた――だった。

そんな中、生き残った人々は手を合わせ新たな国を立ち上げる。


レジェンディア王国。


それが新たに立ち上げられた国の名前だ。

そして俺は邪悪を倒した英雄の1人として、この国の王へと祭り上げられてしまっている。


「王様って……柄じゃないんだけどな」


因みに王様と言っても、別に城暮らしなんて贅沢はしていない。

今の経済状況で城を立てるなんてとてもできそうにないし――別に欲しくも無いけど。

元々あった三国の城も、グヴェルによって跡形もなく吹き飛ばされてとても再利用はできない状態だ。


その為、俺はレイクリアにあった貴族の屋敷に今は住んでいた。

此処も大概ボロボロだったが、少し手を加えて問題なく生活できる様にはしてある。

絢爛豪華な豪邸とは言い難いが、それでも一般家庭よりは遥かに高水準と言って差し支えないだろう。


寝室の前で立ち止まり、扉をノックする。

「どうぞ」と中から返事が返って来たので、ノブを回して中へと入った。


「手紙が来てたよ」


「あら、誰から?」


揺り椅子に座るレーネが微笑む。

そのお腹は、大きく膨らんでいた。

もちろん、俺と彼女の子供だ。


「ラミアルさんからだよ」


「じゃあひょっとして!」


手紙の中身は予想が付いているのだろう。

レーネは嬉しそうに手を叩く。


「たぶんね」


あの戦いの後、魔王は魔族の青年――イモータルと共に魔族領に帰っている。

魔王として魔族を立てなおす為に。


彼女は自らが隷属種レッサーである事を明かし、更に自分の魔獣が世界の破壊者たる竜であった事も魔族達に正直に話していた。

当然生き残った魔族達からの反発も大きかったが、それでも彼女は魔王として魔族を纏め頑張っている。


俺は人間の王として、魔族の王である彼女とちょくちょく手紙でお互いの国の近況を報告しあっているのだだけど。

今回は国の報告と言うよりも――


「見せて見せて」


レーネの側により、手紙を開く。

手紙は挨拶に始まり、元気な双子の赤ちゃんが生まれた事が記されていた。

手紙の最後に、双子の名前が書かれている。


女の子の名前はアムレ。

男の子の名前はオメガ。


女の子の方は彼女の親友から。

男の子の方は旦那さん――イモータルの父親から名前を貰ったそうだ。


「うふふ、私達と一緒だね」


「ああ」


レーネのお腹の中にいる子供は、もう男の子だと分かっていた。

名前ももう決めてある。

僕達にとって大事な人の名前だ。


俺はレーネのお腹を優しく擦って呟く。

愛おしい我が子の名前を。


「早く生まれておいで、テオード」

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