第13話 開幕
「グヴェル!」
王城に入り真っすぐ進むと、大きなホールへと出る。
その中央に、グヴェルが1人佇んでいた。
周りに魔獣の姿はない。
ここに至るまでにも魔獣達の姿が見えなかった事を考えると、どうやら俺達がここまで乗り込んでこれるとは考えていなかった様だ。
「玉座に踏ん反り返っているとばかり、思っていたんだがな」
「くく、お前達が来るのが待ちきれなくてな。こうして出迎えに来てやったぞ」
遅れてやって来た兵士達がグヴェルを取り囲んでいく。
だが、奴は顔色一つ変えずに言葉を続ける。
「ネッド。魔王討伐、見事だったぞ。流石俺が見込んだ男だけはある。どうだ、俺の配下にならんか?」
「……」
「お前には世界の半分をくれてやろう。悪い話では無いだろう?」
「半分か。悪くないな。だけど、どうせ半分貰うなら……お前の体の半分を貰うとするよ。勿論……力づくでな!」
俺は剣を構えた。
奴の体を真っ二つに断ち切り、その命を終わらせる。
「そうか、残念だ」
「突撃!」
司令官の男が合図をかける。
それに合わせて、その場にいる者達が突っ込んだ。
俺達もそれに――
「ならば死ね」
グヴェルの全身から、禍々しい黒いオーラが立ち登る。
俺はそれを見て思わず足を止めた。
本能が強く警鐘を鳴らす。
このままでは死ぬと。
「皆!あたしの周りに集まって!」
レーネが叫ぶ。
俺はその声に従い、彼女の元へと駆けた。
「
「
グヴェルの魔法より、レーネの魔法が一瞬先に発動する。
光の壁が何重にも俺達の周りを大きく取り囲み、その直後、凄まじい衝撃波が襲う。
圧倒的な破壊のエネルギーに結界が揺れ、バチバチと悲鳴を上げる。
結界の外では衝撃波が嵐の様に吹き荒れ、あらゆるものが吹き飛ばされ砕け散っていく。
人も、建物も、その全てが。
「なんだ!?」
不意に衝撃波が収まり、辺りが急に暗くなった。
周囲に散らばる瓦礫や遺体が重力に逆らい、浮かびあがっていく。
その進む先――上空を見上げると、何もない空間に黒く大きな穴が口を大きく開けていた。
全てがそこに吸い込まれ、消えていく。
まるで地獄の入り口だ。
もしレーネが魔法で結界を張ってくれなかったら、俺達もあの中に吸い込まれていたかもしれない。
「化け物め……」
レイダーさんがグヴェルを睨み付け、呟く。
こんな滅茶苦茶な魔法を見せつけられたら、俺もその意見には同意せざるを得なかった。
上空に開いていた穴が閉じ、日の光が差し込んでくる。
城の天井はもうない。
壁も。
奴の魔法で、城そのものが完全に消滅していた。
「ふむ、生き残ったか。全ての魔力を注ぎ込んだのだが、やるな」
今この場に残っているのは、
他の人間は全て吸い込まれてしまった。
全て……
「ああ、そうそう。人質達は別の場所に閉じ込めてあるから、安心するといい」
良かった。
どうやら母さん達は、今の魔法に巻き込まれてはいない様だ
「大事な生贄達だからな、くくく」
「グヴェル……」
俺は怒りを込めて、奴を強く睨み付ける。
だが奴は涼しい顔で言葉を続けた。
「それを止めたければ、俺を見事打ち取って助け出して見せるがいい。もっとも、魔法が打ち止めになった程度のハンデで、お前達が俺に勝てるならば……の話ではあるが」
グヴェルが口の端を歪め。
ゆっくり此方へと近づいてくる。
「ネッド」
俺の横にテオードが並び、剣を構えた。
「さっさと終わらせましょう」
そう言って、レーネが魔法の詠唱を始める。
レイダーさん、パール、アーリンも準備は出来ている様だ。
「勝つぞ!!」
泣いても笑っても、これが最後の戦いだ。
世界を救うためにも、俺達は絶対に負けられない。
「当然だ!」
「おう!」
「やるっす!」
「私の爆裂魔法で吹っ飛ばしてあげるわ!」
「終わらせましょう!ネッド!」
俺は両手に剣を携え、テオードと共にグヴェルへと突っ込んだ。
奴を倒し。
勝って未来に進むために。
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