第73話 黒鳥の平原
「もうすぐっすね」
「ああ……」
パールの言葉に、俺は目の前に広がる平原に目をやりながら答える。
ここは黒鳥の平原。
そこで人と魔族は北と南に別れ、睨み合っていた。
向かい合う両軍の数、人間側は3万。
魔族側は1万だ。
数では人間側が圧倒しているが、個々の能力を考えれば戦力的には此方が不利と言っていい。
かなり厳しい戦いになるだろう。
だが此処を抜ければ、残すは魔王城のみとなる。
数的に、魔族側はほぼ総力に近いはず。
つまりこの戦いを制する事さえ出来れば、人類側の勝利はほぼ確定すると言っていい。
とは言え。
人間側もここまで戦況を数で押し込んではきたが、無理な進軍や魔族による補給路の寸断で、出ている被害は甚大だった。
無理をしたしわ寄せが、足元に迫っている限界に近い状態だ。
もしここで敗れれば、戦況の逆転もあり得る。
その為、この一戦がお互いの未来を決める分水嶺と言っても過言ではなかった。
この戦い、絶対に負ける訳には行かない。
「テオード、大丈夫か?」
「ネッドが俺の心配をするなんざ、100年早い」
レーネがグヴェルに何処かへ飛ばされ、テオードは暫くのあいだ腑抜けていた。
だが今ではもう立ち直り、レーネが絶対に生きて帰って来ると信じて、今は目の前の戦いに集中してくれている。
「お前たち二人が頼りだ。頑張ってくれよ」
敵軍に魔王がいるとの情報がある。
俺達傭兵団
少し前の戦いでは、前線に出て来た魔王と一匹の魔獣により5000もの兵が失われている。
数で押そうとすれば甚大な被害が出ると判断した上層部は、俺達に相手をさせる判断を下したのだ。
団の活躍を評価してくれるのは有難いが、今度ばかりは少々相手が悪いと言える。
だけど……負ける訳には行かない。
俺は勝って帰るんだ。
母さんの待ってくれているあの場所へ。
レーネやテオードと一緒に。
「始まるぞ」
まるで黒鳥の泣き声の様な不吉な風音に混ざって、どらの音が鳴り響いた。
開戦の合図だ。
遂に魔族との最終決戦が始まる。
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