第47話 名称詐欺
グヴェルの言っていた遺跡内を警戒しつつ進む。
何があるか分からない以上、どんなトラブルにも対応できる様に神経を研ぎ澄まさなけらばならない。
「なんにもないわねぇ……あたし思ったんだけどさ」
廃墟と化した地下遺跡にレーネの声が響く。
本来暗闇に閉ざされる場所だが、レーネの魔法のお陰で当たりは明るく照らされていた。
お陰で視界は良好だ。
だがだからと言って、ここが安全とは到底言えないだろう。
声に引き寄せられて、何かが現れるかも知れない。
だが俺の直ぐ後ろを歩くレーネは、そんな事などお構いなしに大きな声で言葉を続けた。
こんな場所で無警戒でいられるとか……こいつはどんだけ肝が据わってるんだ?
「グヴェルの時間停止能力って多分、対策できると思うのよ」
「は!?」
思わぬ言葉に足を止め、振り返る。
「ネッドならね」
「俺なら対策できるって……それ本当か!?」
「多分ね」
「どうや――」
その時、大きな鳴き声が通路に響き渡る。
耳を澄ますと、通路の奥から何か大きなものが這いずって此方に向かって来ているのがわかった。
「ネッド。ちょっと確認したい事があるから、戦いの時
そう言うと、彼女は魔法を唱え始めた。
「確認?分かった」
何を確認する気か分からないが、俺は視線を前方に向けたまま返事を帰した。
地面を這いずる音がどんどん大きくなってくる。
恐らく蛇系の魔獣だろうと予測を立てつつ、俺は両手に剣を構え、暗闇の奥をじっと睨みつけた。
「ラミアか!?」
暗がりの中から姿を現したのは、魔獣ラミアだった。
下半身は蛇、上半身は人型の魔獣であり、その爪と牙には強力な毒を持つ危険な魔獣だ。
とはいえ――今の俺の敵ではない。
俺はレーネに言われた通り
ラミアの持つ毒は確かに危険だが、その動きは加速を使った俺から見れば遅すぎて欠伸が出る。
当たる事はまずないだろう。
俺は突っ込んできたラミアの腕と首を切り落とし。
そしてそのまま
ラミアの生命力はかなり高く、頭を潰しても直ぐには死なない。
だから下半身もきちんと処理し、安全を確保したという訳だ。
「お見事。さーすがネッドね!」
「これぐらいどうって事無いさ」
この程度の魔獣なら、
とは言え、まだ油断するのは早い。
通路の奥からラミアがもう一体姿を現した。
「じゃあ次行ってみよう!今度は
「分かったよ」
俺は指示通り、今度は加護無しで戦う。
速度が落ちた分少々手間取ったが、まあ問題なく2匹目も始末する。
「お疲れ様」
「それで?何を確かめたかったんだ?」
「風圧――空気の動きね。魔法で確かめたわ」
どうやら彼女の唱えていた魔法は、空気の動きを感知する物だったらしい。
「空気の動き?」
俺は他の魔獣が現れないか警戒しつつ、聞き返した。
正直、そんな物確かめて何が分かるというのか?
「動きには必ず力、つまり圧力が付き纏うのよ。空気ってのは知ってるでしょ?」
「そらまあ知ってるけど」
この世界には大気というものがあり。
それは空気によって構成されているらしい。
子供の頃学校で習った事だ。
「人が動くときってのは、動いた分だけ周りに力がかかるのよ。一昨日ネッドはお兄ちゃんに突き飛ばされたでしょ?それを空気に置き換えて考えて見て」
俺と空気を置き換える?
空気がテオードによって突き飛ばされるって事か?
いまいちよく分からん。
「じゃあ水で例えるわね。水の中で動こうとしたらかき分けて進まないと駄目でしょ?空気も同じなの。空気は簡単に動くから感じてないだけで、私達は常に周りの空気を押しのけて動いてるのよ」
「成程」
分かりやすい説明なので、何となくは分かった。
だがそれが何だというのか?
「手っ取り早く結論だけ言ってくれ」
話が長くなりそうなので、過程はもうお腹いっぱいと手を振る。
ここは街の憩いの広場ではない。
魔獣の徘徊する危険な場所だ。
ちんたら講釈を垂れ流されても困る。
「せっかちねぇ。要はネッドが普通に戦ってる時と、
「それで何が分かるんだ?」
「高速で動けば動く程、空気は強く押されて勢い良く動くの。それが全く変わらないって事は――って、また長くなりそうね。簡潔に言うわ。いい、
「逆?」
「そうよ。
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