第一章 春〜一条みちるの場合〜
第1話 オープニングトーク
――どうも、ごきげんよう。お久しぶりです。
と言っても、ピンと来ないですよね。はい、分かってます。ちゃんと説明します。
ワタクシ、
そう、思い出しました? 今から二年ちょっと前、番外編その②で少しだけ作品にお邪魔させてもらった、あのちょっと天然の、みるちゃん曰く『穏やかで純粋無垢で、おっとりとしているようで実はしっかり者で、ご両親でなくても自慢したくなるような娘さん』の沙織です。えへへ。
分かった分かった、で、その天然キャラの沙織ちゃんが何の用かって? まあ、そうですよね。二年半近く前の、あれっきりの登場で、本編どころかその後の番外編でも名前すら挙がってこなかったわたしが、なぜこの新しい番外編の第一話の冒頭からいきなり現れるのか、何がどうなってるんだって? ええ、そこは正直、わたし自身も戸惑ってるんです。だって、あのあとわたしはとある有名企業の御曹司と結婚して、それはそれは何不自由なく、セレブならではの充実した日々を送っていて、わたしから見れば超ハードボイルドな生活を送るみるちゃんとは少しのあいだ疎遠になっていたんですから。
それでもね、みるちゃんはわたしの大切な大切なお友達。幼稚園から高校までずっと一緒で、しょっちゅう同じクラスで、大学進学で別々になってからも、ずっと仲良し。今だって、お互い忙しくて直接会えなくても、電話やLINEでずっとお話はしてますよ。だから、みるちゃんのプライベートに関しては、少し間が空いたとしてもきっちりアップデートして、ちゃんと把握してるつもり。そうだ、あの大阪の超イケメン彼氏さんにだって、みるちゃんのお友達やお身内の中で会ったのはわたしだけだって言うし、それだけでわたしとみるちゃんの絆の強さが分かるというものでしょ。うふふ。
そういうわけで、今回みるちゃんの一人暮らしデビューに向けたお引越しに関わる実情をいろいろ知っている人物として、わたしに‟語り手”としての白羽の矢が立ったのです。とっても光栄です。
と言っても、あくまでみるちゃん本人じゃないので、どうしても知らない、知り得ないことが出てくるだろうし、そこは上手く伝えられるか自信はないけど、出来る限り頻繁に、さっき言ってたアップデートをして、なんとかお話ししたいと思っています。あと、今のこの話し方も、もっときちんと、かつ淡々としたものでないとせっかくの内容が伝わりにくいと思うので、変えるように頑張ります。どうか暖かく見守ってくださいね。
それでは、お話を始めます。――よーし、がんばるぞぉ。
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