猫姉ちゃんの人海戦術式ネットワーク部
猫田螢雪
第1話~僕の姉ちゃんは変わり者だ
僕の姉ちゃんの特技は、自力で情報収集をして調査したり事件を解決したりすることだ。
今日も学校の終わりに部室で奇怪な事件の調査が行われる。
猫姉ちゃんは、オホン、と言うと黒板に書いたことを説明する。
「この事件の特徴について話すと、駄菓子屋を経営している野口さんが急に消えてしまったことね」
僕はウンウン、とうなずく。
「そして、島の警察は事件性がないと判断したわ。なぜならば、野口さんは貿易関係の仕事もしているのでよそに行ったのではと判断したからね」
「そもそも、貿易関係の仕事をしていて駄菓子屋の経営をしているのは奇妙だと思うよ」
僕は猫姉ちゃんに伝える。
「そうね、不思議な働き方ね・・・・・・。しかし、島で人口が少ないから兼業するのはしょうがないことと捉えることもできるわ」
「そうか・・・・・・。それは分かったけども、どうして姉ちゃんは事件であると思ったの?」
これが事件と判断したのは、警察なのではなく猫姉ちゃんなのだ。
普通の人が言えば、デタラメと判断されて相手にされないが、今まで独自の情報収集で調査や事件を解決してきた猫姉ちゃんが言うことだ。
他の人は信じなくても、嘘くさくても僕は信じることにしている。
「それはね、定期的に調べていることから総合的に判断して確信したの」
「どんなこと?」
「はじめに、私たちが所属する高等学校の数学教師の渋川が作成する定期テストの問題が異常に難しい時は、何か起こる際の前触れ、その1ね」
「はい?」
「それから、私たちの猫ばあちゃんの実験料理で美味しいものができれば、何か起こる際の前触れ、その2ね」
実験料理とは、猫ばあちゃんがつくる格安の弁当のことでカエルの唐揚げなどの普通の人間が食べないような内容となっている。
念の為いておくが、普通の弁当もあるのでご安心を。
「最後に、島の南港で貿易船よりも観光船を上回ることが、何か起こる際の前触れ、その3ね」
「なるほど、これらの3つが重なったから野口さんはいなくなったのか」
普通の人が聞けば姉ちゃんを変わり者と言うだろう。
「さて、野口さんがいなくなった理由は何かしら?」
「理由? それはいなくなった本人しか分からないじゃない?」
僕は姉ちゃんのなぞなぞみたいな問いに答える。
「ええそうかもしれないわ。でもね、島の多くの人は野口さんと毎日のように会っていて、いなくなった理由をすべての人間が知らないというのは不自然でない?」
「つまり?」
「野口さんがいなくなる前に、少なくとも一人でも目撃者がいる可能性があるということね」
「そうだけども、真夜中にいなくなった可能性があるかもよ。そうすれば、目撃者は一人もいないことになるよ」
「ええ、真夜中にいなくなればね。だけども、島を出るためには、船に乗る必要があるわ。仮に船に乗ったとしても灯台の光で見つかってしまうわ」
そして、姉ちゃんと僕は聞き込みを行った。
満足した結果は得られなかったが、姉ちゃんは嬉しそうであった。
きっと何か収穫でもあったのだろう。
「姉ちゃん、聞き込みの結果、何か分かった?」
姉ちゃんは嬉しそうな顔をして満足気に答えた。
「ええ、野口さんがいなくなったのは間違いないけども、島からはいなくなったわけではないということが分かったわ!」
「え? どうゆうこと?」
姉ちゃんの言葉にクエスチョンマークが頭に浮かぶ。
理由が分からない僕に姉ちゃんは説明する。
「前にも行った通り、島を出たならば必ず目撃者がいるはずよね」
「うん」
「だけども、目撃者は一人もいなかった。それどころか、野口さんを最後に目撃した人はいないということだったわ」
「それで?」
「考えられることとしては、野口さんは島からはいなくなったわけではないけども、どこかにいるということ。島の中で迷子になるわけないし・・・・・・」
その言葉に僕は素早く正解を言った。
「分かった! 野口さんは島の中にいるけども出られないような場所にいるということか!」
「そう。島で出られなくなりそうな場所といえば限定されてくるわよね?」
「海賊半島の洞窟か、マンホールの中?」
「そう、二択になるけども、ここで疑問が浮かぶわね。何をしに行ったか?」
そうだ、選択肢が二択になったからといって、闇雲に探しても見つからない。
姉ちゃんが言ったように、どうしてその場所に行ったか推理しなければ。
「うん・・・・・・。もしかして、貿易に関係あること?」
「そうね・・・・・・。そういえば海賊半島には漁業用の倉庫があるわね!」
そして、姉ちゃんと僕は海賊半島の倉庫へ向かった。
姉ちゃんの言った通り、野口さんは倉庫の中に閉じ込められていた。
姉ちゃんが言うには、第三者の犯行ではなく、立て付けが悪くなった倉庫の扉が原因でないかと。
「どうもありがとう! 死ぬかと思ったよ」
野口さんは生きててよかった、という声をあげた。
こうして、事件は解決した。
話は第二話へ続く・・・・・・。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます