きみの心の中にいた妖精

びしゃご

森の妖精




 都内のホテルのフロントで仕事をしているワタシ……

 忘年会で、同じホテルの年下の調理人からラインを聞かれ教えると、翌日に森林浴の誘いのラインが来た……

 その年下くんの車で行くことになる。




 午前9時




 初デートで、森林浴って……


 コンビニの外の喫煙所で待つ。

 アイコスを吸いながら待っていると、スズキの軽が駐車場に入って来た。 運転席に年下君が見えた。 ワタシはアイコスを仕舞う。




 ブ―― ピタッ 




 ワタシの前でバックで停まる。 窓から顔を出して、


「待ちました?」


「全然」




 助手席に乗る。


 ブ――――――


 秋川渓谷へ走る。




 車中の会話は…… 年下君はずっと質問ばっかり。



 秋川渓谷を散策し、昼にソバを食べる。




 食べる間は会話は無い。


 今日、今までの間、ずっと年下君のシークレットブーツが気になった。


 コンプレックスかな? ワタシの方が背が高いから尚更か?


 食事を終え、ワタシは告げる、


「帰ろうか? ワタシ、家でやる事があるし」


「それなら仕方ないですね」


 笑顔で心を隠して言ってきた。



 会計を割り勘で済まし、トイレに行きたくなったから、


「先に外で待ってて」


「はい」


 トイレを済ませ、助手席に座ると、

 ドリンクホルダーに缶コーヒーが置かれている。

 それに軽く触れて、


「コーヒーありがとう」


「それ、森の妖精から」


「え? ……その妖精の名前は?」



 少しの間から、



「……ケンタ」


 うけた。



 帰り道、ワタシがいじるように、ホットコーヒーを買ってきてくれた妖精の事を聞く。


 缶コーヒーを持って来た妖精は…


 👼 身長10センチで緑の服


 🌲 年下君以外の人にはケンタは身を隠す


 💰 お金は一円も持っていない


 👍 その妖精は良い妖精


 🥰 ケンタもワタシに一目ぼれした





 やがて……


 まめな性格で、仕事も真面目に働く、ケンタじゃない…… 年下君にだんだんと好感を持って来て…


 同棲するようになる…


 彼氏の言う10センチの妖精は二人の同棲生活にも現れ、

 時に、彼氏が休みの日に、ワタシが仕事から帰ると、


「妖精が晩御飯を作ってくれた」


 時に、


「妖精が掃除してくれた。 洗濯もしてくれたよ」


「ケンタやるね♪」




 だけど……


 その妖精は忘れられたのか… いろいろと飽きたのか…


 彼氏の口から、名前すら出なくなる。




 4年後…



 クリスマスの家での遅い晩御飯の時に、プロポーズしてきてくれた。


「オレと結婚せん?」



「一つ条件があるの」



「浮気?」



「それは当然」



「お金? がんばる」



「それも大事だけど」



「なに?」



「森の妖精も一緒なのかな?」



「え?」



 これからワタシと結婚する人は、小さく頷いた後に……


「うん」


 笑顔で言ってくれた

 ワタシも笑顔をかえして


「これからもずっと一緒だよ」




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

きみの心の中にいた妖精 びしゃご @bisyago

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ