アンコール

あきすけ。

第1話

自分で作る料理の匂いが鼻をくすぐる。今日はカレーだ。この料理が冷める前にあの人は帰ってくるのかと、不安が頭をもたげるがすぐに振り払う。


わからないなら作ればいい。文句を言われたくないから。


焦げる前に火を止め、蓋をした。これでしばらくは大丈夫だろう。きっとごみ箱が美味しかったと言うことになるだろうけれど、こうでもしないと時間が潰せないのだ。私にとって料理は暇潰しだ。


わかりあえる?わかりあえない?お互い意地になっている。

疲れた?疲れてない?日々張り付いた笑顔の2人。


どうして終わらせないのだろう。自分でもよくわかっていない。不意に泣きたくなるけど、理由もわからない。とにかく私は疲れていて。気を使い続けて疲れていて。きっとあの人も疲れている。


テーブルへ行き椅子を引き、座っては小説を読む。何度も何度も繰り返し読んでいる本だ。きっと今日もあの人は遅いだろう。

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