何てカンタンな

たおり

第1話 カンタンな始まり①

 退屈だ。退屈だ。面白くない。学校行って部活に出て家に帰る。ご飯を食べた後、ゲームしてマンガ読んで、ゴロゴロしていたら、母親が声をかける。

「ノボル、宿題はやったの?さっさとお風呂入りなさい」

 言われた通りにして寝る。そして朝。同じことの繰り返し。


 今日も退屈で、何だかかったるい。授業中あくびをしたら、嫌がらせのように教師に当てられた。答えられずに、しどろもどろするノボルの姿をクラスメートたちは、にやにやしながら、眺めている。楽しそうだな。こんなことを面白いと感じられるなんて、うらやましい限りだ。


 部活に出る気もしなくなったので、具合が悪いと、適当な理由をつけて帰ることにした。先輩は渋い顔をし、同じ部の友人は心配した。

「ノボル、どうしたんだよ、最近おかしいんじゃないか?」

 何でもないよ、と適当に返事をして、帰途に着いた。


 ノボルはうんざりしていた。毎日毎日、変わり映えのしない退屈な日々。何か面白いことは起きないだろうか? 


 ぶらぶらと商店街に寄り道してみる。ノボルが子どもの頃は、まだ活気があった。今ではシャッターをおろしている店ばかりだ。よく、おやつに食べていた今川焼きの店は、タピオカ屋に変わっていた。つまらない。


 ひょいとゲーセンをのぞいて見た。置いてあるものは、古いものばかりで、入れ替えた気配はない。埃をかぶった台もある。あまり儲かっていないようだ。ここも早々になくなるかも知れない。


「そこのあなた」

 ゲーセンを出たところで、誰かが声をかけてきた。

 振り向くと、白いスーツに黒いサングラスをかけた、いかにも怪しい風体ふうていの男がいた。

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