第6話 戦術思案

 ナグサが万屋として活動するようになってから約一週間が経ったある日、いつものようにアサギと共に朝食をとりに行く。併設された食堂で適当に定食を注文し、食事をとる。アサギは注文した料理を食べながらナグサに話しかける。




「最近少しは立ち回りがましになってきたな、苦無くないはあんまり当たってねぇけど。飛び道具を使うのが下手なんじゃねぇか?」


「自分少しは上手くなってると思うんだけどなぁ」


そう呟きながらナグサは左の掌を見つめ開いたり閉じたりしている。


「なぁナグサ、飛び道具作って魔力を無駄使いするくらいならいっその事俺の使ってる刀みてぇなもん作って戦えばいいんじゃねぇか?」


「え?でもアサギさん私に魔法術教えてくれた時魔法術士は魔法術を使って攻撃するって……」


「ああ、言ったな」


「でもアサギさんみたいに戦ったら魔法術士の戦い方じゃなくなるような気がするけど……」


「魔法術で作った武器使って戦ってんだから魔法術士だろ?」


「確かにそうだけど……」


「おめぇも前に自分で言ってたじゃねぇか、魔法術を飛ばせないなら投げれば良いって。それと一緒で武器として使えばいいじゃねぇか」


「うーん」


「試しにやってみようぜ、金はある程度あるし今日くらい仕事しなくても大丈夫だろ」




 食事を終え刀を扱うのに適した衣装を防具屋で購入する、購入した衣装は袖の狭い白緑びゃくろく色の半着はんぎに洗朱あらいしゅ色の籠手こてと臑当すねあて、甲懸こうがけを購入。その後訓練のために街の外へと出、ある程度広さのある場所へと向かう。アサギは帯に差していた刀を鞘ごと抜き抜刀しナグサに見せる。




「俺が使ってる刀は打刀うちがたなつって鞘から抜きやすいように少し刃の部分が反った形をしてる」




渡された刀をよく見てみると確かに少し反った形をしている、ナグサは様々な角度から刀を観察し形を覚える。




「でもナグサは鞘は作らねぇだろ?だったら直刀ちょくとうの方が良いかもな」


「直刀って?」


「直刀は俺が使ってるやつとは違って反りがない、まっすぐな刀だ」




アサギは地面に刀の図を描き、図の近くに文字で補足を入れながら説明する。刀の構造をある程度覚えたナグサは地つちの魔法術を発動し刀を作り始める。最初のうちは刀身が折れたりしたが少しづつ折れずに完成させられるようになった。完成した刀を握り軽く素振りをする。刀全体が岩を削り出したようにひと塊なためアサギが使っている刀よりも重く少しバランスを崩してしまう。倒れないようになんとか踏ん張り体制を立て直し何度か素振りを繰り返しコツを掴み、バランスを保ったまま刀を振れるようになった後、アサギに刀の使い方を教わる。




「日も暮れてきたし今日はそんなもんで良いだろ」


「はぁ……はぁ……疲れた」




ナグサは刀を地面に突き刺し仰向けに倒れる、軽く休憩を済ませ帰路に就く。街へ入ると適当な飲食店で食事を済ませ宿屋へと戻り就寝する。

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