伊勢旅行(その6/7)
墓参りに行く前に、父の勤め先を見学
ということで、その施設の前に来たのはいいんですが
中に入ることができない。
「これは、どういう施設なの?」
甥が、妹に言っている。
「重度の知的障害者のための施設なの」
と、妹が言うと、甥は両目を見開いて、
「すごい仕事をしていたんですね!」
驚いた甥のほこらしげな様子に、わたしは胸が
ぐっとなるのを感じました。
これまで知らなかったこと。
それを知らされて、自分が何者かが
少しずつわかってくること。
なんだか、うらやましい。
わたしには、父は相変わらず、
謎の人だから。
施設の中には入れないので、そのままお墓へ参ります。
着いたとき、草ボウボウの実家を思い浮かべ、
「恥ずかしいです」と言うわたしに、先生が、
「だいじょうぶ」
先生が言ったとおり、うちの実家の墓は、きれいになってました!
「来たついでにやっとこうと思って」
義弟が、誇らしげに言いました。
わたしは、思わず拍手しました。
「素晴らしい! 立派!」
義弟の家の墓掃除をするなら、
ついでに嫁の墓の掃除もしようって心意気。
しかも、今までそれを黙ってるなんて、
なかなか、しゃれてる。
よかったよかった。
心配していたことは、杞憂だった。
わたしは、一気にホッとしました。
しかし、帰るときにわたしは甥に聞きました。
「おじいちゃんの死の真相は、聞いてない?」
「あー、脳のトラブルでしょ。初めて聞いてショックです」
「それは、おばあちゃん。おじいちゃんの話は?」
「いえ……」
「じゃあ、お母さんから聞いた方がいいよ。わたしからは言えないから」
「ご助言、ありがとうございます」
甥は、義弟の方へと向かいます。
先に立って歩く妹に、
「あんた、まだおじいちゃんの話、してないんだってね」
「え。ああ、あれ。もうほとんど忘れちゃって」
「あ、そう。ショックだわ。じゃわたしから甥に手紙、書くけど、いいのね?」
妹は、びくりとしました。
「わたしだってそんなことはしたくない。自分でちゃんと言うのよ」
けじめだからね。
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