最終話 無敗の冒険者ロキ
王都に到着した。急いで戻ったが、4日かかってしまった。そのまま城に直行する。
「師匠!師匠は居ますか!?」
「ロキ様、私は大臣のウォードです。何度か会った事がありますな。国王は自室に居りますので、ご案内します」
「お願いします」
ウォードの案内で国王の自室へと向かう。ちょうど国王の自室の前まで着いた時、扉から出てくる回復師とすれ違った。
ウォードが扉をノックする。
「ロキ様一行が参りました。入っても宜しいですかな?」
「ああ、ロキか、入っていいぞ」
部屋に入るとイーリアス王は包帯だらけの身体でベッドに横になっている。
「師匠!その怪我は!?」
「おい!国王がめちゃくちゃ怪我してんじゃねぇか!ハイヒール!」
ロザリーさんがハイヒールを行うが、国王に変化はない。
「どうやら回復魔法も回復薬も効かないらしい。回復師からは呪いの類ではないかと言われたよ」
「そんな……だって師匠、片腕が……」
「ああ、黒い巨人と戦った時、腕を持っていかれた。あの黒い巨人には気をつけたほうがいい……グッ!」
傷が痛むのか、国王は苦しみだした。
「すみません、これ以上の会話は傷が広がる可能性があります。今日はお引取りください」
ウォード大臣に促され、ロキ達は退室した。
「ロキ様、数日以内に聖ガルド教皇国はこの王都にやって来ます。どうか、イーリアス国王を、この国を守って下さい」
ウォード大臣は深々と頭を下げた。
「頭を上げて下さい。お願いされなくても僕達は戦うつもりです」
「あたしもこの国が気に入ったからね!」
「爺ちゃんを守る為にも、あたいが戦わないと」
「傷ついた人達を放っておけません〜」
「ありがとう、ありがとう!」
何度も頭を下げるウォードに見送られながらロキ達は城を後にした。
拠点に戻ったロキ達は作戦会議を開き、王都での決戦に向けて準備を行うことにした。
まず、イーヴァルディとサラはロキの持っていたゴーレムの改造に取り掛かった。
「あたいの技術とサラ様の知識があれば最強のゴーレムになるよ!」
「うむ、その通りだ。あと足りないのは最高級油くらいだな」
ロキは今まで溜め込んだ素材や資金を冒険者ギルドへ提供し強力な武器や防具を大量に作ってもらうことにした。
「こ、この大量の素材とお金は……?」
「これで大量に装備を作ってください。そして戦争に強力してくれる冒険者に提供してください。後でシャルも来ると思います」
シャルは氷河の矢筒から矢を大量に生産し、その矢も冒険者ギルドに提供した。
「魔法の矢は毎日持って来るからヨロシクね!」
ロザリーさんは戦争で傷ついた者達を次々と回復していった。
「いつまでも寝てんじゃねぇぞ!ゴラァ!エリアハイヒール!」
アルエは兵士、冒険者達を再教育・再訓練を行って戦力を増強していった。
「お前達の使命はマスターの役に立つ事だ。現在役に立っていないお前達は等しくウジムシだ。だが、ワタシが考えた訓練メニューをこなせばお前達は戦士になれる」
「「「サー、イエッサー!」」」
ロキ達の活躍でフティア王国の戦力は大幅に増強されたのだった。
3日後、ついに聖ガルド教皇国軍は王都の近くまで進軍してきた。あと2日もあれば王都に聖ガルド教皇国軍が押し寄せることだろう。
ロキはイーリアス師匠から城へと呼び出された。
「こんな時に呼び出して悪かった。どうしても渡しておきたい物があってな」
「いえ、気にしないで下さい。渡しておきたい物とは何ですか?」
師匠が召使いに合図を送ると、奥の部屋から剣を取ってきた。
「この剣は、エクスカリバーですか?」
「そうだ。この剣をお前に託す。白い巨人、黒い巨人には無力だったがな」
「では何故その剣を渡すんですか?」
相手に無効化される剣では役に立たない。
「この聖剣はまだ覚醒していない。王家の言い伝えでは、聖剣が真に目覚めた時、全ての闇を払うと言われている」
「全ての闇を払う……ですか」
「実は先代の国王、俺の師匠はな、【死んだふり】スキルの使い手だったんだよ。このエクスカリバーも先代から託されたんだ。次の世代に託す時が来たのさ」
師匠は失った片腕を見つめる。
「……分かりました。師匠の剣で敵を倒します!」
師匠の剣とは、聖剣だけではない。戦い方、生き様を含めて師匠の剣である。
「頼んだぞ」
聖剣を受け取ったロキは城を出てクランの拠点に戻ることにした。城を出ると既に辺りは暗くなっていた。拠点への道を歩いていると誰かが倒れている。よく見ると裸足でボロボロの衣類を着ている。
「大丈夫ですか!?」
助け起こすと、その人物は見知った顔だった。
「……ウィリアム」
「うぅ……お前は、ロキか?」
体中傷だらけで、片目も失っている。
「酷い怪我だ。僕のクランの拠点に行けばロザリーさんが回復してくれる。そこまで歩ける?」
肩を貸して助け起こす。
「……すまない。俺はお前を何度も殺そうとしたのに、お前は俺を助けてくれると言うのか?」
「そういうのは回復した後でいいよ」
ウィリアムを支えながら拠点に戻った。拠点に戻るとロザリーさんが激怒し、ウィリアムを回復してくれたが片目は時間が経っていた為、治らなかった。
「もう治せる怪我はありません〜。次は気をつけましょうね〜?」
「すまない。あ、ありがとう」
ウィリアムはほとんど食事も取っていなかったようなので、食事も与えた。食事も終わり、落ち着いた頃にウィリアムは説明を始めた。
「知っているとは思うが、俺は聖ガルド教皇国の第三王子だ。しかし、クラン対抗戦にてロキに敗北した俺は謹慎処分を言い渡され、自室に閉じ込められた。そして謹慎中に、とある計画を聞いてしまったのだ」
「計画?」
シャルが尋ねる。
「そうだ。フティア王国と戦争をする計画、そして黒い天使を降臨させる計画だ」
黒い天使……黒い巨人のことだろう。
「黒い天使と呼んでいたが、あれは天使などではない。悪意に満ちた邪神の使いだ。俺はそれをなんとか止めようとしたが、逆に追放されてしまった……」
「それはいつのことですか〜?」
「2ヶ月ほど前の事だ。その後はフティア王国までなんとかたどり着いたのだが……俺にはもう頼れる仲間も知人も居ない。自暴自棄になり、後は死を待つだけだったところを助けられたと言う訳だ」
「なるほど、これからウィリアムはどうするの?」
「俺は……出来るのならば黒い天使を止めたい。あれを止めなければ聖ガルド教皇国は終わりだ」
「サラはどう思う?」
「嘘は言っていないように思える。利害も一致しているし、協力するのも悪くないだろう。あとはロキが此奴を許せるかどうかだな」
「僕は許すよ。ウィリアムも辛かったんだろうしね」
ウィリアムは顔を上げると涙を流した。
「すまない。ありがとう……」
「じゃあ、聖剣クレイヴ・ソリッシュは返すね。防具は冒険者ギルドで貰ってきて」
「む、聖剣クレイヴ・ソリッシュを返す!?そんな気軽に!?」
「僕はほら、これがあるからさ」
「聖剣エクスカリバーだとおおおお!?」
聖ガルド教皇国との決戦を前にロキヘイムに(一時的に)新しいメンバーが増えた。
2日後、ついに聖ガルド教皇国が王都の目前に迫ってきた。
フティア王国側も兵士や冒険者が隊列を組み、聖ガルド教皇国軍と睨み合っている。
ロキ達はフティア王国軍の先頭に立っている。
聖ガルド教皇国軍から2人の男がこちらに歩いてくる。
「あれは、グレン兄貴とオズボーン将軍だ」
「ウィリアムのお兄さん?」
「ああ、第一王子だな」
「こっちも向かったほうがいいの?」
「教皇国では戦いの前に最後の交渉をするのが常識だが、応じるのならば俺もついて行きたい」
「じゃあ、行こうか」
ロキとウィリアムも両軍の中間地点まで歩み出る。すると、第一王子グレンが話しかけてきた。
「よくやったウィリアム!ロキとかいうアンデッドを捕獲してきたのだな!」
何か勘違いしているようだ。
「まず、僕はアンデッドではありません。それにウィリアムとは現在協力関係にあります」
「黙れアンデッドめ!お前が話す事をグレン様は許可していないのだぞ!」
オズボーン将軍が激怒している。
「それはお前もだ、オズボーン」
グレンの冷たい声が響く。
「も、申し訳ありません……!」
「グレン兄貴、俺は黒天使降臨に反対だ。あれは神の御業ではない。聖職者の心臓を捧げて召喚するなど悪魔の所業だ。今からでも遅くない。作戦を中止してくれ」
「可哀相なウィリアム。冒険者などという低俗なものに触れたせいで歪んでしまったようだ。協会施設で再教育としよう。そしてアンデッド、お前は今すぐ死ね!」
突然グレンがロキに斬りつける。
「【
見えない盾に弾かれてグレンが後ずさる。
「うーん、やっぱり聖ガルド教皇国の人とは話が通じないなぁ。帰ろうウィリアム」
「あ、ああ」
ロキとウィリアムは後ろを向いて戻っていく。
「ま、待て!なんだこの見えない壁は!」
グレンとオズボーン将軍は必死に追おうとするが、見えない壁に阻まれて進めない。
交渉は決裂した。後は戦うだけだ。グレン王子とオズボーン将軍が敵軍に戻ると、敵軍は侵攻を開始した。
「敵を十分に引き付けろ!魔法と弓部隊はそのまま待機せよ!」
フティア王国のマクファーソン将軍が指示を出す。
聖ガルド教皇国から魔法と弓矢が飛んでくるが、まだ遠すぎる為、ほとんどの攻撃が外れている。
「今だ!放て!」
将軍の命令で魔法と弓矢が一斉に放たれた。神殿騎士は大きな盾でそれを防ぐが、全ては防ぎきれず負傷者が続出しているようだ。
敵軍の至るところで白く発光し、白い巨人が生まれていく。
「黒い巨人はどこに居るんだろう?」
「あたしの視力はかなり良い方なんだけど、見えないね。まだ居ないのかも?……あ、あそこに黒い巨人が出てきた!」
シャルが指差す方向を見ると、白い巨人よりも一回り大きな黒い巨人が立っていた。黒い巨人は禍々しいオーラを発している。
黒い巨人の周りに白い巨人が集まっていく。そして、黒い巨人が白い巨人を食べ始めた。
「白い巨人を食べてる……」
黒い巨人は白い巨人を吸収し、巨大化していく。
「嘘だろ……」
黒い巨人は白い巨人だけでなく神殿騎士も吸収し、既に身長20メートルほどになっている。巨人の周囲に居た神殿騎士達は逃げ惑い、混乱している。
聖ガルド教皇国軍は混乱しながらも侵攻し、王都のすぐ近くまで接近している。
「全軍突撃せよ!」
マクファーソン将軍の指揮術のスキル発動と共に全軍に命令が下された。
今回の作戦ではロキの【
「僕達も行こう!僕とサラとウィリアムで黒い巨人を押さえるから、みんなは白い巨人を倒して!」
「オッケー!」
「あたいのファイアーハンマーが唸るぜ!」
「ただちに命令を実行します」
「ゴ!」
シャル、アルエ、イーヴァルディ、ファイアーゴーレムは白い巨人を倒しに向かった。ロザリーさんは後方支援だ。
「おい、ロキ!俺の聖剣ではダメージを与えられないぞ!?」
「大丈夫。【
ウィリアムの持つ聖剣クレイヴ・ソリッシュが黒く変色する。
「うお、俺の聖剣が真っ黒に!?これ、元に戻るんだろうな!?」
「ウィリアム!攻撃が来るよ!」
黒い巨人が蹴った神殿騎士がウィリアムに向かって飛んでくる。
「危ねぇな!」
ウィリアムがギリギリ回避した。ロキとウィリアムは全速力で黒い巨人に接近する。
ザンッ!
黒い巨人の右足をロキが、左足をウィリアムが斬った。しかし、傷口はすぐに塞がった。
「攻撃自体は効いているみたいだ!」
「俺が斬る!お前は殴り飛ばせ!」
「分かった!」
黒い巨人が大きなモーションでウィリアムを踏みつけようとする。
ウィリアムは踏みつけを回避し、再度黒い巨人の足を斬った。
「【
斬った足を思いきり殴ると、巨人の足だったものは遠くへ吹き飛んだ。
「よし!いける!」
ウィリアムが斬ってロキが殴る作業を繰り返すと巨人はダルマ落としのように小さくなっていった。
「意外とあっけなかったな」
「攻撃さえ通じればなんとかなる相手だったのかもね」
ロキとウィリアムが会話をしていると、千の神殿騎士に守られたグレン第一王子が進み出てきた。
「停戦交渉にでも来たの?」
ロキが尋ねる。
「ふん、その程度で上位我らが黒天使を倒せたとでも思っているのか?周りを見てみろ」
周りを見渡すと、黒い巨人が復活しているのが見えた。それだけじゃない、散らばった手足からも再生し、黒い巨人が増えている。
「お前達には更なる絶望を味わってもらおうと出てきたのだよ」
グレンがそう言いながら5個の箱を並べていく。
「ウィリアム、知っているか?教皇の血を引く者を生贄に捧げればより上位の天使を降臨出来るのだ」
グレンが箱を開け、中身を取り出すとその手には心臓が握られていた。
「ま、まさか……」
「そうだ、これらは教皇やお前の兄弟の心臓だ!これで最強の天使を降臨してやる!我らがガルド神よ、聖なる者の命を対価とし熾天使を降臨させ給え!」
グレンが心臓を掲げる。空に暗雲が垂れ込め暗くなってきた。
「空が暗く……」
熾天使は天候さえも操るというのか。
「うわぁ!?」
グレンの叫び声に振り向くと、グレンに漆黒の液体が
「私は違う!生贄は心臓だ!何をしている神殿騎士!早く私を助けるのだ!」
だが、誰も動こうとしない。助けに行けば間違いなく取り込まれると本能で分かってしまったからだ。
「やめろおおおおおぉぉぉぉ……」
グレンは黒よりもなお黒い漆黒に包まれた。
「グレン兄貴……」
「ロキ、ウィリアム!ここからすぐに離れるのだ!」
サラが今までにないほど慌てている。
「急いで!」
ウィリアムを引きずるようにその場を離れると、元グレンだった黒い塊から無数の棘
「【
棘を死盾で防ぎ、その場を離脱した。改めて周りを見ると、シャル達は白い巨人を倒し終えて、今は黒い巨人と戦っている。黒い巨人は大きさが桁違いな為、苦戦しているようだ。
「僕達は、アレの相手をしよう」
ウニのように無数の棘が生えた塊はどんどん巨大化し、30メートル近くはありそうだ。
「グオオオオオオオオオォォォォ」
地面が振動するほどの大音量がそこから聞こえた直後、黒い塊が割れ、中から真っ赤な色をした悪魔が誕生した。
「久しぶりの地上だ。とても気分が良い……」
悪魔は両手を広げて、喜びを味わっているようだ。
「ふんっ!」
悪魔は自身の翼をもぎ取ると、翼が大鎌に変化した。
「武器はこれで良い。腕が鈍っていないか試してみるか」
フォンッ と大鎌を振るうと、遥か遠くにある山が爆発した。
「うむ、少しは調子が戻ってきているな」
悪魔はゆっくりと王都に向かって歩き始める。
「王都を守れ!悪魔を近づけさせるな!」
マクファーソン将軍が命令を下した。味方の軍から無数の魔法や氷の矢が放たれる。
「邪魔な虫共め、消えろ!」
悪魔が大鎌を振るうと味方の軍の半分が消し飛んだ。
「ロキよ、我に魔石を全て渡すのだ」
「いいけど、どうするの?」
サラに今まで溜め込んだ全ての魔石を渡した。
「見れば分かる。それよりも、我があの悪魔を足止めしている内に聖剣エクスカリバーを覚醒させるのだ」
「分かった」
「俺も手伝うぞ。グレン兄貴の馬鹿野郎を一発殴ってやらないと気が済まない!」
サラが地上に降りてポイポイと魔石を口に入れていく。全ての魔石を食べるとサラの身体が光る。
「どうだ?我の真の姿は?」
光が収まると、そこには巨大なドラゴンが居た。
「え……サラ??」
「そうだ。あの悪魔を押さえておける時間はそう長くはない。聖剣の覚醒を急げ!」
そう言うとサラが空を飛び、悪魔に襲いかかった。悪魔とドラゴンの壮絶な戦いが始まったが魅入っている暇はない。
ロキとウィリアムは走り出し、出来るだけ悪魔に近づく。ロキは聖剣エクスカリバーを鞘から抜くと、天高く掲げる。
「聖剣よ目覚めろ!【
巨大な光が天高く伸び、白く輝く。
「くっ!威力が凄すぎて支えきれない!」
ロキは聖剣を両手で持つが、支えることが出来ない。
「聖剣の扱いならば俺の方が心得ている!」
そこに、ウィリアムも加わり、2人で聖剣を支える。
「今だ!」
サラが合図を送る。
「「エクスカリバアアアアアアアアア!」」
2人で聖剣を振るう。サラはベストなタイミングで避けたようだ。
エクスカリバーが悪魔に直撃した。激しい光の奔流が悪魔を包み込んだ。
光が収まると悪魔は消え……てはいなかった。
「今、何かしたかな?私に聖属性は効かないのだよ」
白い巨人や黒い巨人には聖属性が無効だった。何故そんな大事なことに気づかなかったのだろうか?ウィリアムはガクッと地面に膝を突いた。
「失意のまま死ね」
悪魔が大鎌を振るう。
「【
山を吹き飛ばす程の斬撃をなんとか死盾で防いだ。
「小癪な。ならばこれはどうだ?」
悪魔は空高く飛ぶと、大鎌を回転させ始めた。無数の斬撃が飛んで周囲のモノを切り刻む。
「【
死盾でロキとウィリアムを囲む。終わらない斬撃がロキ達を襲い続ける。
「……何か方法はないのか。考えろ……ここで死んだら冒険者1位にはなれない」
聖剣エクスカリバーは未だに光り輝いている。そしてある事に気がついた。まだ【死んだふり】をしている……?
「ウィリアム!もう一度やるよ!」
「ロキ、無駄だ。聖属性は無効なんだ」
「倒す方法が分かったんだ!」
「本当か……?これで最後だぞ!」
ロキとウィリアムで聖剣エクスカリバーを再度天高く掲げる。
「ふん、最後のあがきか。良いだろう。その希望を打ち砕いて絶望を与えよう」
悪魔は大鎌を構える。正面から受けて立つようだ。
「いくよ!【
エクスカリバーが真の姿を現す。虹色の光が天高昇っていき、重く垂れた暗雲を吹き飛ばした。そこには澄み渡る青空が見える。
「「エクスカリバアアアアアアアアアアアアア!!」」
虹色の軌跡を描き、悪魔に直撃する。一瞬、大鎌で拮抗したかに見えたが、大鎌は切断され、悪魔も両断された。
「ギャアアアアアアアアアア!馬鹿なあああああああああ!!」
悪魔は叫びながら切断面から灰になっていった。
「やっと勝てた……」
「もう駄目だと思ったわ!」
ロキとウィリアムはその場で座り込んだ。周りを見ると、シャル達に倒されたのかエクスカリバーの余波で消えたのか、黒い巨人は居なくなっていた。
「ロキー!やったね!」
「さすがはマスターです」
「あたいも活躍したんだよ!?」
「怪我は?怪我はありませんか〜?」
「ふう、よくやった。褒めてやろう」
元の姿に戻ったサラがランプに戻った。ロキ達の活躍によって王都は守られた。
「よくやった、ロキ。よくやってくれた……!」
城の窓からその光景を見ていたイーリアスはそう呟いた。
こうして、聖ガルド教皇国との戦争が終結した。
聖ガルド教皇国の教皇や王子のほとんどが死去した為、ウィリアムが新しい教皇となった。
ロキは戦争での功績によりオリハルコン級となった。
怪我により片腕を失ったイーリアス師匠は、冒険者を引退した。ロキと師匠の戦いの約束は代理として繰り上がりで1位になった元オリハルコン級2位の冒険者と行うことになった。
「ロキ、大丈夫?忘れ物とかない?」
決闘の当日シャルが心配そうに尋ねてくる。
「僕は大丈夫。シャルのほうこそ、パジャマのままじゃないか」
「ええええええ!?」
顔を真っ赤にして自室に戻って行くシャル。
「相変わらずおっちょこちょいですね〜」
ロザリーさんが微笑む。
「今日の決闘ではあたいの作った剣を使ってくれるんでしょ?」
イーヴァルディが嬉しそうに聞いてくる。
「そのつもりだよ。聖剣は大技が多くて扱いにくいからね」
「マスター、そろそろ出発しないと決闘に遅れます」
「アルエ、教えてくれてありがとう。さて、そろそろ出発しよう」
「ちょっと待ってよー!」
――――
100年後、フティア王国の王都。中央広場にある銅像の前で少年と母親が立ち止まった。
「お母さん!この人誰ー?」
銅像を指差して少年が尋ねる。
「ロキ様よ」
「ロキ様ー?」
「昔むかしに、この国を救ってくれた英雄よ。冒険者なのに王様にもなったんだって」
「そうなんだ〜僕も冒険者になる!」
「それじゃあ、お勉強を沢山して身体も鍛えなきゃね〜」
少年と母親の幸せそうな笑い声は平和な王都に響いた。
完
無敗の冒険者〜スキル【死んだふり】を授かったせいでアンデッドと勘違いされ国外追放されたけど、流れ着いた国で最強の冒険者を目指す〜 パピプラトン @Papiplaton
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