063 火氷ダンジョン3

「次は極熱鉱石ですねぇ〜。極熱鉱石があればお料理を作る時に火を起こさなくても良かったりして〜」


 ロザリーさん天才ですか!?


「極熱鉱石もいっぱい取って帰ろう!」


「極熱鉱石は次の階層だよ」


 今居る氷の階層はアイスタートルが主だったようで、他の魔物や罠はなく、すんなりと転移の魔法陣にたどり着いた。


 次の階層は、やはり暑い階層だった。しかし、前回の炎の通路やマグマがあった階層よりも熱くない。それは嵐の前の静けさのような不気味な暑さだった。


「ここにもアイスタートルみたいな魔物が出るの?」


「出るらしいけど、あたいも見たことないよ。爺ちゃんが全力で回避してたから」


 嫌な予感しかしない。


 ジメッとした暑さの通路をひたすら真っ直ぐ進んでいく。アイスタートルの時と同じように広い空間に出た。


 そこには5メートルほどのマグマの池と極熱鉱石らしき岩がいくつか見えた。


「あ!あれは多分極熱鉱石だよ!」


 イーヴァルディが近づこうと走り出した直後、マグマの池が盛り上がる。


「イーヴァルディ待って!」


 マグマの池からマグマの塊が飛び出てきた。マグマが流れ落ちて中の何かが姿を現した。


「あれは……バルログだ」


 大きな2本の角、炎のタテガミ、燃えている爪、火のムチのような尻尾、翼まである。凶悪さが滲み出ている魔物だ。


「グルルルルル……」


 バルログの目は既にロキ達を捉えている。戦いは避けられないだろう。


「戦闘準備!」


 合図と共に、散開し各自武器を構える。ロキはバルログの攻撃を引き受ける為に前に出る。



「グルルオオオオオオォォ!」


 バルログはロキを敵もしくは邪魔な虫ケラ程度に思ったのだろうか、ムチのような燃える尻尾によってロキを打ち払った。


 バルログは虫ケラを一匹排除出来て少し満足したような表情をしたが、次の瞬間には信じられないものを見たとでも言うかのようにピタリと動きを止めた。


「どんな攻撃も【死んだふり】の前では無効だよ」


 そこには無傷のロキが立っていた。自身の攻撃が虫ケラに傷一つさえ与えられなかったという屈辱でバルログは激昂した。


 バルログの次の攻撃は最も攻撃力のある燃える爪による切り裂きだ。四つ脚で地面を掴み力を貯める。


 そして一気に力を開放し、突進を行う。狙いはロキの頭だ。燃える爪を突き出す。虫ケラの頭は木っ端微塵になり終わるはずである。


「【死鎧デス・アーマー】」


 バルログの爪は予想外に大きく弾かれた。そして虫ケラも吹き飛んだが、木っ端微塵にはならなかった。


 吹き飛んだ虫ケラがむくりと起き上がり、元気そうにしている。もうバルログには訳が分からずに困惑するしかなかった。


 そして、吹き飛んだ虫ケラの近くに仲間が居ることに気づいた。しかも、巨大な剣が空中に浮かんでいる。


「【スーパーアルエカノン砲】発射!!」


 しまった!と思った時には巨大な剣はバルログに突き刺さり、バルログの意識は途絶えたのだった。



「ロキに注意が逸れたおかげで倒せたね!」


「久々のスーパーアルエカノン砲だったけど上手くいって良かった」


「何今の!?凄いカッコよかったんだけど!?」


 イーヴァルディはお気に召したようだ。


「3人で連携して繰り出す必殺技だよ〜!凄いでしょ〜」


 シャルは自慢気に言う。


「あたいも連携技欲しいな」


「一緒に考えようよ」


「仲が良いのは良い事ですが、そろそろ極熱鉱石を取るべきです」


 さすがアルエ。こんな暑い場所は一刻も早く去りたいからね。


「そこのマグマの付近にあるのが極熱鉱石だよ」


「もうバルログは出てこないよね?」


「これ以上は勘弁して欲しいよ」


 極熱鉱石は名前の通り、高温を発している。


「今度はどうやって採取するの?」


「次は万年氷で作ったツルハシを使うんだよ」


 透き通った氷で出来たツルハシを取り出すイーヴァルディ。赤く光る極熱鉱石を万年氷のツルハシで叩くと叩いた箇所が黒く変色し、パキンと簡単に割れた。


「沢山取って帰ろう」


 見える範囲の極熱鉱石を全て採取したので、帰ることにする。


「それで、帰るにはどうすれば?」


「あ、そういえば爺ちゃんと一緒に行った時はダンジョン脱出魔道具を使ってたよ。でも、あたい持って来てないよ」


「えええ!?じゃあ、ダンジョンをクリアするしかないってこと?」


「そうなりますねぇ〜どんなボスが出るのかしら〜」


 ロザリーさんはこの状況でも意外と楽しんでいるようだ。


「仕方がない。ダンジョンをクリアしてさっさと脱出しよう!」


「「「おー!」」」


 みんなが一致団結している間、サラが「戻って魔法陣に乗れば1階層ずつ戻れるのだが……」と呟いていたのだが、聞いている者は誰も居なかった。

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