059 鍛冶屋

「僕達はフティア王の弟子です。師匠からの紹介で来ました!」


「お前達、見た感じはガキだが、冒険者の級位は何だ?」


「今日、アダマンタイト級になったばかりです」


「なるほど、そういうわけか。イーリアスめ、一つ貸しだぞ……」


「?」


 何やらブツブツ言い始めたドワーフを黙って待つ。


「いいだろう、ついてこい」


「ありがとうございます!僕はロキ。シャル、アルエ、ロザリーです。こっちのランプに居るのはサラマンダーのサラです」


「俺はヴァル・オークウッド。……え!?火の精霊様!?」


「我は火の精霊だ。崇めるが良い。そして油を献上するのだ」


「油とか言っているのは気にしないで下さい」


 さりげなくサラが油を強請っていたのでロキが訂正しておく。


「長年生きてきたが火の精霊様に出会えるとはなんたる幸運!」


 ヴァルについて行くと山小屋の中に案内された。山小屋の中は工房になっていた。鍛冶窯やハンマー、作りかけの武器や防具が見えた。


「おーい!帰ったぞ!イーヴァルディ!」


 ヴァルが大声を出すと返事が聞こえてくる。


「爺ちゃんおかえりー!」


 12歳くらいのドワーフの女の子が奥の部屋から現れた。


「師匠と呼べと言っているだろう!」


 ヴァルはイーヴァルディの師匠のようだ。どこかイーリアス師匠のような雰囲気を感じた。


「はーい、師匠。それで、こちらはお客さん?」


「うむ、フティア王の弟子だ。まだ要件は聞いていないが大体察しはついてる」


「あたいはイーヴァルディ。よろしく!えーっと」


「僕はロキ」


「あたしはシャルだよ!」


「ロザリーと申します〜」


「アルエ」


「我はサラマンダー。特別にサラと呼ぶことを許そう」


 自己紹介が終わったので、本題に入ることにする。


「アダマンタイト級に相応しい装備が欲しいんです」


「お前達の今の装備を見せてみろ。まずはお前からだ」


 ヴァルに言われた通りに、テーブルに聖剣クレイヴ・ソリッシュを乗せる。


「ほう……聖剣とはな。武器はいいとして防具はひどいな。重いだけのチェインメイルに重い籠手と靴か」


 師匠から貰った特訓用防具をずっと装備したままだった。ぶっちゃけ【死んだふり】スキルがあれば防具は不要なのだ。


「装飾品は疾風の腕輪と力の腕輪か。これは良い物だ。ロキは防具一式だな」


「次はあたしの装備を見てよ!」


 シャルがテーブルに置いていく。


「ふむ。このエルフの弓は素晴らしい。だが、矢が足りないようだ。あと、近接戦闘用の短剣もあったほうがいい」


「そうそう。たまにどこかに飛ばしちゃうんだよね」


 ドジっ子エルフは矢を無くすことが稀によくあるらしい。


「防具は軽装だな。もっと性能の良い軽鎧にしたほうがいいだろう。装飾品も用意したほうがいい」


「次は私でしょうか〜」


 ロザリーさんが装備をテーブルに置いていく。


「ふむ、武器も防具も悪くはないが、白金級レベルだな。アダマンタイト級では役不足だろう」


「最近まで金級でしたからね〜」


「何!?金級からアダマンタイト級に飛び級したというのか?」


「そうですよぉ〜」


「驚いたな……。次はそこの嬢ちゃんか?」


「アルエです。ワタシには装備は不要です」


「どういうことだ?」


「こういうことです」


 アルエの手が片手剣に変化する。


「……!?うーむ、火の精霊様も驚いたが、この嬢ちゃんも凄まじいな。お前達の装備についてはよく分かった。一晩考える時間をくれ」


「ありがとうございます!よろしくお願いします!」


 装備については、ヴァルさんに全て任せることにした。装備のことについては鍛冶屋が一番分かっているだろうからね。


 その日は山小屋に泊まらせて貰った。代わりにクラーケンをごちそうするとヴァルさんは大喜びだった。


「クラーケンは酒の肴として最高!」


 だそうだ。その後は酔ったヴァルさんに聖剣をもっと見せて欲しいと言われたり、アルエの腕を剣にして見せてくれと言われたりで大変だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る