024 オークダンジョンのボス

5階層は大きなドーム状の建物内だった。4階層での暑さ、溜まった疲労の為、ロキ達は休憩を取りたかった。


「ロキよ、どうやら休憩を取らせてはもらえないらしい」


サラが言った通り、ロキ達が転移した先は大量のオーク達の真ん中だった。今まで倒してきたオーク全種類が勢揃いしているようだ。


「みんな!囲まれてるよ!作戦Bで行くからシャルはサラを持っててね」


シャルにランプを渡す。


「わかった!サラ様、よろしくねっ」


「うむ、任せておけ」


作戦Bとは、敵に囲まれた場合の作戦である。シャルを中心に置き、メイン火力とする。シャルの護衛はサラに任せる。ロキとアルエはシャルの周囲で遊撃を行う。


「ブオオオオオオオオ!!」


遠くで一際大きなオークが号令をかけると、オーク達が一斉に攻撃を開始した。


「いっくよー!ウィンドアローレイン!」


大量の矢を上に向けて放つと矢は放物線を描いて落ちてくる。風魔法で矢を加速し、更に軌道修正をかけると全ての矢がオーク達の眉間に刺さった。


「さすがだ。風の子よ」


「へっへーん!」


ロキとアルエはシャルに近づくオークをひたすら斬っていく。


「あっ!いいこと思いついた!」


ロキは一番手前のオークに接近すると拳を叩き込む。


「【死拳デス・ストライク】!」


オークは後方に吹き飛ばされ、巻き込まれたオーク達も倒れる。倒しつつ敵の接近も防げて一石二鳥である。


一方アルエは、全身から刃を出しながらオーク達の間を走り回っている。それだけでオーク達は傷つき倒れていく。アルエ、恐ろしい娘……。


「あ!シャル危ない!」


シャルの背後からオークジェネラルが迫っていた。


「ファントムフレイム」


サラが魔法を唱える。


「!?ブアアアアアア!」


オークジェネラルは幻の炎に焼かれて倒れた。しかし、オークジェネラルの死体に外傷はなく、魂だけが焼かれたかのようだった。


「サラ様!ありがとう」


「この程度、容易い事だ」


その後も、押し寄せるオーク達を倒し続けた。


「【死拳デス・ストライク】!」


「ウィンドアローレイン!」


初めは大量にいたオーク達も大分数が減り、残すはオークジェネラル5匹、オークウィザード5匹、そして一際大きなオークだけとなった。


「あの大きなオークは、伝説のビッグビッグオークに違いないよ」


チラッとサラを見る。


「全然違う!オークキングだ」


「あはは、オークキングじゃん!ロキの説明を一瞬信じちゃったよ」


「マスターの命令により、ビッグビッグオークをデータベースに登録しました」


「アルエ、ちょっと待って!オークキングに変更して!」


「ブオオオオオオオ!!」


何を無駄話をしているんだと言わんばかりにオークキングが怒っている。


「作戦Aに変更!いつも通りにいくよ!」


「「おー!」」


ロキがオークキングに先制攻撃を仕掛ける。


「【死撃デス・バレット】!」


瓦礫を拾いオークキングに撃ち込む。


オークキングに当たった瓦礫は粉々になったが、ダメージを与えることは出来なかった。


オークキングはお返しとばかりに巨大な槍を振り回す。


ロキはノーダメージであろうとも【死撃デス・バレット】をし続け、オークキングからのヘイトを集める。


横から寄ってきたオークジェネラルは脚を斬りつけて機動力を殺し、オークウィザードから飛んできた魔法は【死盾デス・シールド】で弾き返す。


「僕の役割ってけっこう忙しいな!」


シャルは単純に敵の殲滅。アルエは遊撃である。


ロキが最前線で耐えていると、残すはオークキングだけとなった。


オークキングは近くに倒れているオークウィザードを持ち上げると死体に手を突っ込んだ。


「何をしているんだろう……?」


オークキングが手を抜き取ると魔石が握られている。そして大きく口を開けると魔石を飲み込んでしまった。


「魔石を食べてる……」


オークキングは同じように魔石を食べ続けている。


「オークキングを止めろ!不味いことになる!」


シャルと一緒にいるサラが叫ぶ。


だが、もう手遅れだったようだ。


オークキングは最後の魔石を食べると、身体が変異し始めるのだった。

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