第2章 銀級

015 盗賊退治の結果

 翌日、城に行きイーリアス師匠に報告を行う。


「師匠!昇格依頼のトロール討伐達成しました!」


「トロールを倒せるほどの実力が身についたか!うんうん、計画通り、いや、少し早いくらいか!」


「計画?」


「ロキの育成計画だよ。予想より成長が早いのなら計画を見直す必要がありそうだな。よし、今日は走り込みと実戦訓練をしたら、後は好きにしていいぞ」


「分かりました!」


 チェインメイル走り込みを終え、実戦訓練を始める。


「よし、今日はロキの実力を測ってやろう。チェインメイルも籠手もなし。全力で来い!」


「行きます!」


 ロキは素早く間合いを詰めて拳を突き出す。


「【死拳デス・ストライク】!」


 しかし、イーリアス師匠には当たらない。


「その攻撃に当たったら不味そうだったんで避けさせてもらった!」


 石を拾ってイーリアス師匠に狙いを定める。


「【死撃デス・バレット】!」


 これも避けられる。


「うお!こんな技も編み出したのか!?」


 ショートソードを構えてイーリアス師匠に向かって走る。


 途中でジャンプし、上段から斬り下ろす。


 キィン!


 イーリアス師匠の剣と正面からぶつかる。


「【死撃デス・バレット】!」


 ショートソードの刃を掌底突きで加速させた。


「ぐおっ!」


 イーリアス師匠の剣は弾かれ、師匠はバランスを崩している。


 ショートソードの勢いをそのまま利用し、一回転して斬りつける。


「勝った!」


 勝利を確信して叫んだが、剣に手応えはなかった。


「ロキ、お前の負けだ」


 いつの間にか背後に回っていた師匠が剣を突きつけていた。


「勝ったと思ったのにー!」


「まだまだ10年早いわ!」


 実戦訓練は終了し、いつものようにゴブリンダンジョンに行くことにした。


 王都の北の森を更に北に進んでいると、馬の悲鳴のようなものが聞こえた。


「今、馬の悲鳴みたいなのが聞こえなかった?」


「うむ、我にも聞こえたぞ」


 ロキはサラの言葉を聞くと悲鳴が聞こえた方向に走り出した。


 少し走ると女の子が複数人の男達に囲まれている。状況から考えてロキは女の子の味方をすることに決めた。


「やめろーー!!」


 ロキに気づいた盗賊風の男達は一斉に振り向く。


「おめぇは誰だ?」


「僕は銀級冒険者のロキだ!」


「「銀級!?」」


 周りに居た男達が動揺している。


「てめぇら!こんなガキが銀級なわけねぇだろ!ハッタリだよ」


 名前を聞いてきた男が親分のようだ。


 落ち着きを取り戻した子分達がロキを囲む。


「さあ、ハッタリは効かなかったんだ。武器を捨てて命乞いしな!」


「僕は命乞いなんてしない。さっさとかかって来たらどう?」


「ふぅ、せっかく助けてやろうと思ったがやめだ。てめぇらやっちまえ!」


「「うおおおおおおお!!」」


 子分達が一斉にロキに斬りつける瞬間


「【死んだふりで防御するーヨ】!」


 子分達は吹き飛び、気絶した。


「ロキよ、【死盾デス・シールド】にしておけ」


「サラは技名の宝「言うな!敵に集中しろ」」


 敵の親分は赤い顔をして怒っているようだ。


「ふんぬぬぬぬ!フンッ!」


 親分が気合を入れると片腕だけが巨大化した。


「すごっ!バランス悪い!」


「見た目はどうでもいいんだよ!俺は右腕巨大化のスキルを授かり、最強となった!」


 親分が右腕を振り上げる。


「死ねーー!」


 腕が叩きつけられ大きな砂埃が舞う。


「この程度でどうやったら死ねるの?」


 親分の後ろに回り込んでいたロキがショートソードの鞘で親分の後頭部を殴った。


 親分は気絶した。


「大丈夫だった?」


 ロキは女の子に話しかけた。


 女の子はロキに抱きつくと泣き出した。


 相当怖い目にあったのだろう。しばらく泣いた後、落ち着いたのか赤面しつつ感謝の言葉を言った。


「助かったよ、ありがとう!あたしはシャル!見ての通りエルフだよっ」


「僕はロキ。エルフなんて初めて見たよ」


「この地域ではエルフが珍しいみたいだね。さっきの人達はあたしを捕まえて売ろうとしてたみたい」


 また不安気な顔をするシャル。


「大丈夫だよ!僕とサラがついてるからさ!」


「サラ?」


「このランプの中にいる精霊の事だよ」


 ロキがランプを持ち上げて見せる。


「我はサラマンドラ。火の精霊だ。敬うがいい、風の者よ」


「サラマンドラは長いからサラって呼んでるんだ」


「よろしくね!サラ様!」


「サラ、風の者って?」


「それはね」


 サラの代わりにシャルが答える。


「あたしが風魔法を授かったからだよ」


 そう言って、風をまとって物凄い速さで走って見せた。


「凄いね!それで、シャルはこれからどうするの?」


「乗っていた馬もどこかに逃げちゃったし、ロキに付いていく事にするよ!」


「あ、王都まで送ってほしいんだね。いいよー。その前に盗賊には罰を与えないとね」


 ロキは盗賊の身ぐるみを剥いで、パンツ一丁の盗賊達を2人3脚に結んだ。後ろ手にして両手を結んだ。


「これでよし!さあ、王都に行こうか」


 ロキはシャルを王都まで送っていった。



「王都に着いたよー」


「ここが王都オーティス!」


「じゃあ、ここでお別れということで」


 ロキが別方向に行こうとすると


「え?なんで?」


 シャルが引き止める。


「王都までついていくって話だったでしょ?」


「違うよ、あたしはロキに付いていくって言ったんだよ」


「え?どゆこと?」


「あたしも冒険者になってロキに付いていくから、ヨロシクね!」


「…………え?」


 どうしてこうなったー!?

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