紅蓮の獅子は恋を知る

茂庭

犬と猿、強いては犬猿の仲

戦場に立つひとりの女性。


彼女は齢15歳にて、こう呼ばれていた


『戦場の紅蓮の獅子』


彼女1人で敵国の全部隊を消滅させたという逸話もある。そして、四大精霊の一角火の精霊の加護を持っている。


「我々は帝国の騎士である。そして私の剣は誰一人残さず敵を駆逐するためにある。」

獅子の唸り声のごとく低く低く発せられた声は

一瞬にして敵を恐怖のどん底に叩き落とし、

味方を奮い立たせる咆哮でもあった。


彼女が一振剣を薙れば炎の鞭が放たれ、


千だろうが万だろうが彼女の前では意味が無い。


精霊に愛されし紅蓮の女騎士レオナ・パラディオン


獅子は雌が狩りをする彼女が戦う理由はごくシンプルな理由だ…………


彼女がただの戦闘狂だったそれだけだ。



「さぁ、出撃だ。」


彼女がそう発した瞬間誰かが呟いた。


「あれは人間じゃない、獅子そのものだ」と




時は流れ5年後………


15であった彼女も、成人の義を終え監督を継ぐ話が上がってきた。


彼女の家パラディオン公爵家は2人の子供がいる1人は、長女レオナ・パラディオンもう1人はレオナの弟、長男のロディー・パラディオンだ。



何故今監督騒動が起きているのかと言うと一重に姉であるレオナが戦場にたち続けすぎたからだ。基本的に女性であり且つ公爵令嬢であるはずの彼女が普通の王立アカデミーに通わず騎士団直下のアカデミーに通い、異例のたった9歳でアカデミーを飛び級で卒業し、騎士団の入団式で挑発されたからと言ってもまだ齢12歳の彼女が騎士団の副団長を倒してしまったのが事の始まりだった。


そこからは、実力主義の騎士団の中でもかなりの荒くれ者が配属される団に入り1年で団長を倒し団長の座を手に入れたと言われている。


国の方針では、長兄または長女が家督を引き継ぐという習わしがあり、なにか深い事情がない限り長が家を継ぐ。

だか、今回ばかりは少し違う。


そう、長女であるレオナに結婚のそれもその家の長兄からの手紙が届いたからだ。


公爵邸〈応接室〉


「お父様、今なんとおっしゃいましたか?」

思わず鉄製の仮面とも言われたレオナの顔がひきつく、そしてこの屋敷の主であり二人の子を持つ父であるアルベルト当主はゆっくりと口を開く。


「ふむ、もう一度言うぞレオナお前に結婚の手紙が来ておるぞ相手は、魔法騎士団長ライラック・ヴァーミリオン殿からな」


「お父様、恥を捨てて申し上げますその男とは絶ッっっっ対に結婚したくありません。」


「そうは言っても、これはどちらかと言うと王命でもあるからのォ無理とは言えんのじゃ」

「っっっ、では本人に伝えれば宜しいのですね分かりました今からあやつの息の根を止めて参ります。」

腰に長剣を帯剣し、さもこれから戦場へ向かう騎士の雰囲気を醸し出す。

殺気は、その場にいた弱者をを気絶させるレベルだった。

女性にしては長い足を大股に広げズカズカとドアへ向かう。


「待ちなさい、こら!レオナ!」

そんな娘を取り敢えず止める父。

実は父も王命でなければこのまま戦場ヘ駆り出していても良いと考えている。

決して父、アルベルトはレオナが嫌いな訳では無いむしろ溺愛していたレベルだ。

レオナが望むならば自由にしててもいいと思っている。

ただその溺愛が、かなり変なところまで曲がってしまったのはご愛嬌だ。

そんな、殺伐とした空気に一人の腑抜けた声が響く。


「そうだよレオそんなに急がなくても僕は逃げも隠れもしないよ。」


先程まで2人しかいなった応接室に、招かれざる客が現れた。


「出たな、ライラック・ヴァーミリオン」

「やぁ久しぶり、と言ってもさっき王城で会ったばかりか。」

「忌々しいな、何故お前が私の夫にならねばならぬ?」


単刀直入に切り込む。


「何でって、そりゃぁ僕が四大精霊の一角風の精霊を加護に付けているからさ。そして君も僕も宝石眼を持っていという因果かな?。」


___四大精霊と宝石眼

この国に伝わる伝説の一節で、魔力の高いものが持つ特殊な眼と精霊の話だ。


精霊の王精霊王は昔魔力の高い一人の女性と子供がいた。女性の方は美しく聡明でとても純粋なお方で精霊王は愛情深いお方だったそうだ。

そしてその間に生まれた4人の子供たちが後に四大精霊の加護を持ちそして祝福として宝石眼を手に入れることになったそんな話だ。


「ふっ、王も躍起になってるそうだな普段は温厚そうだがやはりそうもいかぬか、だが私は別にどうでも良いも感じている。恋愛も結婚も私が強くなる以外に興味はない。」

「確かに君は強いよ、でも興味が無いかい?自分の子供がいつか自分を追い抜かす姿を、私は見てみたいのさ偉大なる魔法使いの長である自分を抜かす子供たちを」

「夢を見すぎているのでわないか?ライラック殿。もし私と結婚しても精霊が加護をつけるかは分からない。もしもなんて完全なことは無いろくに戦場に出たことない若造並のことを言って何になる。」

正義、忠義、手の甲に送る誠意

そんなの、荒れ果てた荒野の前ではなんの意味もない。

「そうかな?まぁいいじゃないか」

「いい加減な………。」

「いい加減じゃないさ、僕は君にひとつ言わなければならない事があるんだ。」

そう言うとドアの前に立っていたレオナに膝づき手の甲に唇を当てる。

「僕は、精霊の血を引いているから気に入った人間は絶対に離したくない性を待っているんだ。だから諦めてね。」

「はぁ?」

突然の告白に思わず固まる。


そして、ここが2人きりでないことに気づいた。それもそのはず怒りを顕にし部屋を出ていこうとしたところを犬猿の仲であるライラックに出会い、口論を繰り広げ我を忘れていたのだから。

そして、レオナはみるみるうちに真っ赤な林檎のように染った。

戦場育ちで、青春という名の一時はほんの少ししか味わったことが無い。

=何に対してもウブだった。


「レオナ、僕は絶っっ対に諦めないからよろしくね。とりあえず僕は君を一人の女性として尊敬し、愛しているから安心してね。」

わなわなと彼女の肩が震える。

決してこれが歓喜で震えているのでわ無い。

これは………

「からかうのもたいがいにしろ!!私は絶対に結婚なんかしないましてや愛だの恋だのと腑抜けた事なともう二度と………」

彼女の瞳が揺らめく。

「レオナ」

「五月蝿い取り敢えず出ていってくれ。さもなくばその煩わしい口を叩き落とす。」

瞳の奥には、地獄の炎が揺らめく。

宝石眼は、角度によって色が変わる。

特に、妖精や魔力によって様々な色に変わるためとても珍しい。


ライラックは、ひとつ息を吐く。

「わかった。済まないが突然の訪問失礼した。後日また機会が会ったらよろしく頼む。」

前者はレオナに後者はアルベルトに、

そう伝えると、一瞬にしてレオナの前から消えた。


そしてアルベルトは思った、嵐のような風景だと。



1週間後

レオナはとあるところに来ていた。

そこは、先の大戦で亡くなったものたちが眠る墓場だ。

そして、1人の墓の前にたどり着く。

"ギルベルト"と刻まれた墓の前に酒と花を置くき墓石に寄りかかる。彼はレオナにとって親友兼相棒であり大切な副団長でもあった。元々は団長の座に座っていたがレオナが蹴落とし副団長の座に座った。

最初は、あまりにも粗野な男だったがそれ以上にレオナが独りよがりすぎて思わず負けたのに手を差し伸べてしまった。

負けた相手が勝った相手に情けをかけるのはとても失礼にあたるがレオナは気にしなかった。

持ち前の図太い神経が多分関係していたかもしれない。


そしてギルベルトも、大雑把な性格をしておりそれも相まってかなり仲良くなった。

でも、戦いは容赦なかった。


彼の最後は、レオナを庇い心臓を撃ち抜かれ呆気なくこの世を去って行った。

享年23歳であった。


「馬鹿なヤツ、私などほっとけば良かったのに本当に馬鹿なヤツだよ君は。そうだ、聞いておくれよ友よ、この前あいつに結婚を持ち込まれたんだ。でもさ、私には無理だ君は言っただろ?『自分を責めるなこれは俺が勝手にやったことだだから、もしこの先大切な人が出来たなら守ってやれなんて言わないだから……』この後君は顎が使えないとかほざきやがって呂律が回らなくなっていたね。愛を知って私は怖くなったんだ失う怖さを。君に向けた愛はたしかに親愛だけど怖いんだ……」

「酷いなぁ君は僕がそんなに弱い存在に見えるのかい?なら訂正しておくれ僕はとても強い自信があるよ。」

「ライラック・ヴァーミリオン……いつから居た。」

「何時だっけなぁ、ついさっき僕も部下の墓参りに来ただけだからなぁ。」

「ふん、そうかまぁいい聞いていたならそれでどうだ?呆れたか戦場の紅蓮の獅子と呼ばれたこんなはこんなにも弱々しい奴で」

「……そうでも無いよ」

「ふっ、口ではなんとでも言える。私でさえ言えるのだからな。」

「じゃぁ言うね、レオ僕は君のことを絶っっ対に離さないと言ったのを覚えているかな?僕はこう見えて実は攻撃魔法と精霊魔法のふたつが使えるんだ。まぁ普通はひとつしか貰えないはずなんだけどね。だから最強なんですよ。こんな優良物件他にないと思わないかい?」

「ふっ、普通の令嬢が聞いたら守ってもらいたいと思うかもしれないが生憎私は剣を持っているそして火の精霊の加護もある。守られる必要なんてないんだ。」

「ほら、君は強いじゃないか。」

ライラックは、指摘する

レオナは確かに強いと、

「レオナ、僕のお嫁さんになってくれないかな?君の親友に自慢出来るくらいの優良物件があったってね。」

「君は………本当に何故私なんだ?」

「それは、僕と結婚してくれたら教えるよ?」

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