Case ■-14.She read my message.

 その晩、空には雲一つなかった。


 部屋を暗くして、空を眺める。夏の大三角以外にも、いくつもの星が視認できる。

 きっとあの場所なら、もっとたくさんの星をこの目で見ることができる。


 じんわりと痛む足をさすりながら、俺はスマホをタップする。ぽっかりとした光が浮かび上がる。起動するのは、メッセージアプリ。

 会話履歴には、「どうして退部するのか」といった内容の、俺からのいくつものメッセージが未読状態で止まっている。

 今ならわかる。こんな訊き方は、正解ではないということに。


 俺は今一度、メッセージを送る。


『伝えたいことがあります。星を見ましょう。明日の夜、初めて会った場所で待ってます』


 送信ボタンを押すと、しゅぽん、と軽快な音とともに俺のメッセージが吹き出しの中に込められる。


「返事、くるかな」


 いや、諦めないって決めたんだ。返事がないならないで他の方法を考えるまでだ。


 が。


 送信してからまだ一分と経たないうちに、吹き出しの横に「既読」の文字が浮かび上がる。


 そして、ぴこん、という音。俺のものとは違う吹き出しが、画面に表示される。


 そこには、たった一言。


 わかった、と。

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