第35話 誓い side レオナード
側近候補に名乗りを上げた全ての人間の選考を終え、最終的に側近候補は、リーフェルト、クローヴィア、ルードルフの3人に決まった。
早速3人を呼びつける。ルードルフはいつものように凛々しい立ち姿を見せているが、後の2人は眠そうにフラフラとしている。
「おい、そこの2人。知識欲を満たすのはいいが、時間に区切りをつけろといつも言っているだろう!」
「申し訳ありません、殿下。ですが、聞いてください!クローヴの読んだ本によりますと……「うるさい、黙れ。少しは反省しろ、リーフェルト」
「いやぁ〜、リーフの考えを聞いてると、ぼくも嬉しくって。持ってる知識を活かされるのって楽しいね!」
「お、ま、え、も、だ!クローヴィア!」
なんでこんなに自由なんだこの2人。
ルードルフが萎縮しないように、他に人がいない時に限り、改まった話し方をしないでいいとは告げたが、ここまで自由にしろとは誰も言っていないぞ!
リーフェルトとクローヴィアを合わせたその日。クローヴィアの記憶力に関して話をする最中に見せた、リーフェルトの目の輝きに嫌な予感はしたのだ。
だが、まさか3日も寝ずに話し続けるとは誰も思わないだろう!
リーフェルトの知識欲を甘く見ていた。それに付き合うクローヴィアもクローヴィアで大概だが。
「大丈夫か……ですか?大将」
「あぁ、なんとかな」
あの2人に比べると、ルードルフのなんとマトモなこと!敬語が拙いことなんて些細な問題に感じる。
それに、敬語が出来ないのは、ルードルフだけのせいでは決してない。この国は、貴族以外の者が学ぶ機会が余りに少ない。
ルードルフの言った、ドブみたいなところ……貧民街では、学ぶどころか、日々の生活すら危ういのだ、ルードルフが敬語が出来なくてもそれは仕方の無いことだと思う。
「お前たちを集めたのは大切な事を伝えたかったからだ」
「大切な事……でしょうか?」
「あぁ。今からお前たちに2つのことを誓ってもらう。誓約書も交わすが、いいな? 」
「「「承知致しました、殿下」」」
敬語が苦手なルードルフだが、この文言は覚えたらしい。僕は3人を見つめると。
「1つ目、私を裏切るな。2つ目、私より婚約者であるツェツィーリエを守れ。以上だ」
「大将」
「なんだ」
「1つ目は分かるが、2つ目、そりゃなんだ?大将は王になりたいんだろ?王の命は何より優先されるんじゃねぇのか?」
困惑する3人を代表して、ルードルフが質問してくる。
「最もな問いだ。だが私は、愚王になりたくはないのでな。いい機会だ、ここで宣言しておく。私はツェツィーリエを悪意により喪ったその瞬間、人を憎み国を憎み、復讐の鬼と化す。私をそうさせたくないのであれば、彼女を何としても守りきれ」
「分かった、要するに姫さんも大将も守りきりゃいいんだな?」
「ざっくり言うとそういう事だ」
「殿下、質問!」
「言ってみろ」
「殿下がその婚約者のツェツィーリエ様を愛してるのは知ってるんだけど、ツェツィーリエ様はどうなの?殿下の一方通行じゃないよね?」
「あぁ、私も愛されている」
「そっか、良かった、安心したよ」
笑顔を見せるクローヴィアに、他の2人が『なんで殿下がツェツィーリエ様を愛しているのを知っているのですか』『姫さんと会ったことあんのか?』と詰め寄るので、『あの事は絶対に他言無用だ、いいな?』と釘を刺すのを忘れない。
「話は以上だ。そうそう、学園入学後すぐ、ツェツィーリエにお前たち3人を紹介するから、そのつもりでいるように。退出していいぞ」
「な、何を考えているのですか、殿下!入学後すぐって、あと1ヶ月もないではありませんか!」
「そうだよ!ぼくみたいな髪の色見たらショック受けるに決まってる!貴族のご令嬢なんでしょ?」
「そうだぜ大将!俺もまだ言葉遣いがなっちゃいねぇし、姫さんに失礼だろ!」
「大丈夫だ、ツェリは外見の醜さも多少の無礼も気にしない女性だ。私が保証する」
僕の外見にも、衝立越しの初対面にも気分を悪くすることのなかった人だからな。
保証してやっているというのに、『そんな女性なんている訳が無い』とぎゃあぎゃあ喚く3人を部屋から追い出すと、私はツェリに彼らを会わせる日が、少し楽しみになったのだった。
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