第14話 醜い男。 side レオナード
この世の醜さを全て詰め込んだかのような男。
そう呼ばれるのは、ギースベルト王国の第一王子であるレオナード・フォン・ギースベルト、僕だ。
産まれた瞬間、その醜さから産婆が悲鳴を上げ、母である正妃は僕の事を死産として、秘密裏に殺そうとした。それを止めたのは、この国の国王である父であった。
でも僕は知っている。
それが決して愛情からくる行動ではなかったことを。
その証拠に。
2年後、弟である第二王子が産まれると、僕は毎日のように暗殺の危険にさらされた。
混入された毒で悶え苦しみ、それでも誰も世話をする者がいないこの状況。
負けるもんか、と思った。理不尽な悪意に晒され、ただ無様に殺されてなどなるものか、と。
地獄のような日々が続いた。
耐性ができたのか、いつしか毒が効くことはなくなった。あぁ、毒だな、そう感じるくらいで。
胸の奥にはしる小さな痛みは、意図的に無視した。
僕は、王になることを目標にした。
最初は、復讐心にも似た心から掲げた目標。僕のことをいらないと殺そうとした母、僕に興味のない父、皆からの愛情を受けて育つ弟、僕を見下す使用人…その全ての人が、僕が王になることで嫌な気持ちになるに違いない。
そう想像するだけで、ほの暗い喜びが胸を満たす。
王になるためには、知識が必要だと色々な本を読み漁り、家庭教師に嫌な顔をされながら、質問攻めにした。
そして気がついた。この国は、おかしい。
中央に近付けば近付くほど、容姿の悪さでふるい落とされる。容姿の良さなど、能力に関係ないというのに。
色々と調べていく内に、僕は1人の公爵の名前を知る。
フィリップス・フォン・シュタイン公爵。
醜い容姿の女性を妻にしようとした、風変わりな公爵。
僕はシュタイン公爵に手紙を出した。直接会って話がしてみたい、と。
シュタイン公爵は、美しい男だった。こんなに美しければ、わざわざ醜い女性を妻にしようとしなくて良さそうなものだが…。
僕の戸惑いは顔に出ていたのか、シュタイン公爵は言う。
「私は、容姿が優れていると言われますし、自覚もしています。けれど、容姿がまた全てではないことも知っているのですよ」
僕は気付いた。
僕もまた、容姿に囚われている者の1人なのだと。
「私は、将来王になりたい」
気が付くと、そんな言葉が口から出ていた。シュタイン公爵は驚いた顔をしながらも、問いかける。
「何故ですか?」
「この国は間違っている。容姿ばかり気にして、その人個人を見ようともしない。私は、この国を変えたい」
「それはきっと、茨の道ですよ?」
「分かっている。けど、最後の瞬間まで諦めたくない」
そう言いきった僕に、シュタイン公爵は眩しい笑顔を見せると、協力させてください、と言った。
僕が最大の協力者を得た、8歳の夏のことだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます