第12話 容姿≠能力
私が、シュタイン公爵家の養女になってから、早いもので4年の月日が経ち。
私は先日7歳の誕生日を迎えた。
私はフィリップス様のことをお義父さまと呼ぶようになり、公爵家の令嬢たるに相応しくあるように、と家庭教師の方々に色々と教わったりと、日々を忙しく過ごしている。
「ツェツィ、おはよう」
「おはようございます、お義父さま」
朝食の席で、お義父さまと挨拶を交わし、ふと違和感を覚える。なんだか気落ちしているような、疲れているような?
私はさり気なく探りを入れてみる。
「お義父さま、お仕事はお忙しいのですか?」
「いや、仕事は順調だ。ただ、その他に色々と煩わしいことが山積みでな……」
ふぅ…とため息を吐くお義父さまの心労を少しでも軽くしてあげられたらいいのだけど……。そう悩む私に、お義父さまが声をかける。
「ツェツィ、結局お前に頼ることになってしまって心苦しいのだが、第一王子殿下の話し相手になってはくれないか?」
「第一王子殿下の…ですか?」
幼い頃に私が抱いた予想の通り、この国は地球とは違う異世界の国のひとつだった。
この国には今現在、2人の王子殿下がいらっしゃる。第二王子殿下は、その美貌と無邪気で明るい性格から、太陽の王子と呼ばれているらしいことは知っている。
今話題に挙がった、第一王子殿下については謎に包まれており、月の王子と呼ばれているらしいことしか知らない。
そんな第一王子殿下の話し相手を何故私が?そんな心の声が表情に出ていたのかもしれない、お義父さまは続けて。
「ツェツィも、第二王子殿下の容姿が優れていることは知っているな?」
「はい」
「第一王子殿下が先に側近を探すために候補を募ったのだが、それに合わせるように第二王子殿下が候補を募ってだな……」
「まぁ……」
「第一王子殿下が候補を募った時の倍以上、候補者が集まったらしく、第一王子殿下が自信を無くしておいでなのだ」
私の顔には呆れが浮かんでいることだろう。過去に容姿ばかりを気にしていた私が言えることではないのだが、容姿とその人の能力は決してイコールではない。
現に、醜いと呼ばれている私の実の父は国でも有数の剣の使い手で、今も治安維持のために警備隊をしている。
本来なら、騎士としても働けるくらい有能なのだけど、その容姿のせいで難しいのだそう。
私は、父が剣を使うような危険な仕事についているとは知らなかったので、その話を聞いてすぐに父に手製のお守りを送った。
ドン引く程の長文の返信に、勿体なさすぎて使えない、大切にしまっておくと書いてあったので、無くしたり汚したりしたらまた送るから持ち歩いて!と叱ったこともある。
ちなみに、そんな父でも私を守りきれないとした理由は、貴族にある。
父は、伯爵家出身といえども今は勘当された身なので平民となる。平民は、例え爵位の中で最も低い位の男爵といえども、逆らう術を持っていない。
話が脱線してしまったが、容姿が良いから有能だと決めつけるのは酷く愚かな行為だということと、容姿を理由で候補者の数に差をつけられた第一王子殿下に同情してしまったということだ。
私は、何かお義父さまが言う前に言い切った。
「私、第一王子殿下のお話相手になりますわ」
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