第1444話 〈亀ダン〉攻略完了!なら次は打ち上げだー!




 最奥へ転移し直すというのはいいものだ。

 最奥のボスを倒して〈亀ダン〉に入り直せば当然のように1ウェーブから再開される訳だが、モンスターが登場するまでには少しだけ時間が掛かるので、〈テレポ〉を使用。

 なお、安全対策のために最低でも5人行動推奨だな。1人とかで入り直すと万が一モンスターが発生した場合、波に飲み込まれてしまう可能性がある。

 だが、無事ウェーブが始まる前に転移は成功。


 最奥はサーバー分けされておらず到着駅が決まっているため、これでみんなと合流することが可能だ。

 ちなみにここで「30層へ転移」とか選択すると、転移せずに30ウェーブが開始される仕様となっている。不思議!

 ゲーム時代、ここで昔事故って、最奥が60層なのにミスって50層を選択してしまいウェーブに飲み込まれたことがあったんだよなぁ。あれは悲しい事故だった。



 最奥に戻る飛ぶと、ラムダたちが驚きながらも出迎えてくれた。


「いや、驚いた」


「だろ? 〈テレポ〉があればすでに攻略し終わったメンバーを呼び戻すことも可能だ。まだ量産は難しいが、できるようになったら〈救護委員会〉でもたくさん買ってくれよな」


「はは。報告しておこう」


 実際に見せることで〈テレポ〉の有用性を見せて興味を抱いてもらったりとちょっと宣伝。

 それからまた最奥ボスの攻略を再開することにした。


「よーし情報を共有するぞ! ボスのウィークポイント弱点となりうる職業ジョブ持ちをパーティに加え、全員の攻略者の証獲得を目指すぞーー!」


「「「おおー!」」」


 俺の説明に新しい〈エデン〉流を体験するクラスメイトたちは大盛り上がりだ。

 これが今の〈エデン〉のやり方です!(違います。他の人が居るとき専用の方法です)


 情報を共有し、早速〈亀ダン〉の攻略者の証をゲットしていく。

 待ち時間が長い人は一旦帰還するのも手だ。亀さん駅に止まりっぱなしだし。

 背中にある地上への階層門はずっと開きっぱなしだしな。


 ちなみに、最奥のボスを倒さずここで一時帰還した人は、ちゃんと最奥駅前から再開となるので安心してほしい。

 これは最奥に到着したから発生した現象だな。これが59ウェーブまでであれば、メンバー変更で入り直すと1ウェーブからになるが、最奥の場合はメンバーが欠けていても最奥からスタートになるのだ。


 これはここのダンジョンがレイドを前提にしているためのシステムだ。

 最奥に到着したメンバーは大人数である。そして一部がボスを倒すと、その者は1ウェーブからやり直しになるシステムのため、ボスをまだ倒していない人たちを再び1ウェーブからやり直しにさせるのは忍びなく、最奥からスタート、ということになっているという話だな。


 また、やっぱり1ウェーブからやり直すということも可能だ。その場合はリセットされて最奥からスタートできなくなるから要注意な。


 ボス戦して証をゲットした人は、一足先に帰ってもらい、時間がある人はさらに連携を高める練習をしたり、レベル上げしたり、クラス対抗戦作戦会議なんかをしながら過ごしたのだった。

 そして、ついにちょっと長く掛かった〈亀ダン〉攻略も、ラムダやタバサ先生を含む50人全員が攻略者の証をゲットすることに成功して終わったのだった。


 こうなれば、次にやることはお約束のアレだな!




「イエス、全上級下位ダンジョン制覇、おめでとうーー! これより祝賀会を開始するぞー!! みんなジョッキは持ったな!? 持ってない人はすぐに持て! それでは行くぞーー! 〈亀ダン〉攻略に、かんぱーーーい!」


「「「「「かんぱーい!」」」」」


〈亀ダン〉攻略で打ち上げだ!


「いやぁ。美味い! 〈芳醇な100%アップルジュース〉が美味い!」


「勝利の美酒、というわけか、いや美ジュース? しかし、本当に美味しい。〈エデン〉が〈上級転職チケット〉と交換してでも集めているわけがわか……いや、やっぱりわからないなぁ」


「はっはっは! ラムダもその内分かるようになるさ!」


〈エデン〉のSランクギルドハウスにクラスメイトやタバサ先生も招いて乾杯だ。

 いや~。ようやく上級下位ダンジョンを全攻略できたな~。

 始めたのが、いつだっけ? 確か去年の11月の終わり辺りだった気がする。今は9月後半だから、実に10ヶ月も掛けたのか。

 まあ、寄り道とか他の学生たちのスキルアップとかいろいろ手を出していたからなぁ。そろそろスピードアップしていかないと。


 次の目標は俺たちの進級までに上級上位ダンジョンの攻略だ。

 あと半年しかないが、準備はしっかりしているし、ペース的には問題無いはずだ。

 他のSランクギルドも上級中位ダンジョンに入り始めているらしいので、後続もちゃんとついてきている。


 基礎を固める期間は終了したと考えても良いだろう。

 最近は上級装備も充実してきて学生たちにも行き渡ってきているらしいからな。


 ラムダと話しているとメルトやレグラムも集まって来て、男子で色々語り合う。


「なんだか、これからが本番のはずなのだが、もうやり遂げた感が凄いな」


「分かるぞメルト。というよりクラス対抗戦の練習で上級下位ダンジョン最難関、未だ誰も未踏破のランク10ダンジョンを攻略する方がおかしい」


「確かに、俺たちは感覚が麻痺しているとは感じていたが、〈エデン〉メンバーではない者に言われてようやく実感できた。確かにおかしいことが理解できる」


「大丈夫だレグラム。なんもおかしいことはないぞ? クラス対抗戦の練習にダンジョンを1つ攻略するなんて普通だ普通」


「それはどこの普通だゼフィルス。他のクラスなんか1組がクラス対抗戦のウォーミングアップで上級ダンジョンを攻略したと聞いて震え上がっているぞ」


「もう広まってんの?」


 メルトの呟きから始まり、ラムダとレグラムが共感。

 もちろん俺はそんなことないと否定するも、メルトからはツッコミをもらってしまった。でもちょっと心地良い。


 クラス対抗戦まであと2日。なんとかスケジュール通りに終わることが出来たな。

 とても嬉しい限り。


 とそこでアルルが俺に話しかけてくる。


「ゼフィルス兄さん、ちょっとええか?」


「おう。どうしたんだアルル?」


「実はな、サチはん、エミはん、ユウカはんの装備が完成したんや」


「「「おお!」」」


 アルルの言葉に俺だけではなく、メルトとレグラムもざわめく。

〈エデン〉最強の威力を誇る『神気開砲撃』をぶっ放すことが可能な3人、サチ、エミ、ユウカの神装備がついに完成した報告だった。


 ラムダなんか目を瞬かせて「サチ殿たち、あれ以上強くなるの?」とちょっと震えている。

 今の時点でおそらく学園一の威力を誇る攻撃がぶっ放せる3人が専用装備を身に着けてもっと強くなるとか、もう素晴らしいしかないな!


「ふう。サチ殿たちは〈2組〉だったか……これは」


「ああ。面白くなりそうだよな!」


「いや、自分は手強くなりそうだなと言おうとしたんだが?」


「見ろゼフィルス。このラムダの反応こそが正常な反応だ」


 なぜかメルトにさとされた。

 ラムダも若干引きつった笑顔を浮かべている。


 なお、俺のテンションは上がりまくりなのでアルルの方に詳しい話を聞く。


「ふふははは! まあ、これは百聞は一見に如かず。実はサチはんたちにはすでに着てもろうてるんよ。ちゅうわけで、この場を借りて、お披露目や!」


 アルルがそう言うと、いつもの壇上に乗るノエルがマイクを使って場を盛り上げ始めた。


「みんな聞いて聞いて! アルルちゃんがついに納得のいくサチちゃんたちの装備を作り上げたんだって! サチちゃん、エミちゃん、ユウカちゃんのシリーズ装備全集! しかも3人ともそれぞれの専用装備なんだよー! これからお披露目あるからねーー!!」


「「「「おおー」」」」


「待ってましたーー!」


「エミちゃんとユウカちゃんのレシピ、頑張って取りましたからとても楽しみです!」


 歓声がギルドハウスに響く。

〈聖ダン〉周回ではみんながエミの〈神装本士シリーズ〉とユウカの〈神装弓士シリーズ〉の全集レシピをドロップするために頑張ったって話だからな。

 喜びや期待もひとしおの様子だ。


「では早速出てきてもらいましょう。サチちゃーん、エミちゃーん、ユウカちゃーん!」


「イエーイ!」


「じゃっじゃじゃーーん!!」


「これが私たちの専用装備だよ」


「「「「おおー!」」」」


 なんと打ち上げの場で装備お披露目だ! これは盛り上がる。

 アルルたちも粋なことするな!


 壇上に出てきたサチ、エミ、ユウカに、さらに歓声が響いた。

 それは〈神装剣士シリーズ〉〈神装本士シリーズ〉〈神装弓士シリーズ〉をそれぞれ装備した3人組。


 まず吸い寄せられたのは3人が着ているカラフルなマントだ。

 サチは赤、エミは黄、ユウカは青の、それぞれのイメージカラーとなっている。

 さらに〈お姫様になりたい〉の頃のドレスイメージを健在させつつも、かなり豪華な作りになっていた。


 今までドレススカート風だったサチは、かなり金属が増え、グリーブや手甲、胸にはアーマーを装着。それが白く美しい金属で、神々しい剣士のような風格を醸し出している。


 若干スカートの短かったアイドル衣装の様な装備だったエミは、ほとんどそのままに、マントなどが加わった白と黄色のコントラストがまぶしいこれまた豪華で神々しい装備を身に着けていた。まさにパワーアップ版って感じだ。

 トランプのダイヤ型のマークがそこら中に入っており、エミらしい元気の良さと溌剌さがアピールされている。


 ユウカは白と青のコントラストだが、上半身は白の服に青のマント、そして青色系でラインが出るほど細い長ズボンを装着。腰もキュッと締められていて優雅で神々しい雰囲気を持っていた。


 思わず「おおおお」と叫んでしまったよ。


「3人とも、すっごく似合ってるぞー!」


「キャー」


「やったね!」


「ありがとうゼフィルス君」


 なんと唐突なお披露目会、最高です!

 だが、お披露目はこれだけでは終わらなかったのだ。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る