第1104話 テスト期間に突入! そして結果発表の1位が!?




 ダンジョン週間は瞬く間に過ぎていき、大体勉強、少しダンジョンに行ったりしてみんな成績上昇に励んだ。

 やっぱり息抜きにダンジョンは大事だなと痛感したよ。ハンナのメイちゃんの力の入れ具合が違ったもん。ゴブリン、南無。


 また、勉強の合間を見て息抜きも兼ね、まだ上級下位ジョーカーを攻略していない戦闘課メンバーに初の〈嵐ダン〉攻略という偉業を成し遂げてもらった。

 攻略者の証を持っているかいないか。これは非常に大きい。

 これも成績上昇のために必要だったのだ。うむ。


 なお、最奥では〈笛〉をじゃんじゃん吹いてレアボスの〈カマグマ〉も狩りまくってしまった。

 みんなテスト期間で鬱憤的な何かが溜まっていたのだろう。最後の方は〈カマグマ〉の耳が垂れ下がって「くま~ん」と情けない声を出していたような気もする。いや、きっと気のせいだろう。


 適度にガス抜きしたおかげかみんな勉強に身が入ったようだ。これは高得点が期待できる。がんばってほしい。


 ダンジョン週間が終わってテストに突入すると、ダンジョンの入ダンは禁止になる。まあ、さすがの俺でもテストのある日にダンジョンには潜らないさ。

 さあ、今までの成果を試す時、みんながんばっていこう!



 ちなみに3年生はテスト無し。その代わり卒業準備で忙しいらしい。

 就活も大体終わったようで、そこら中で3年生が晴れたような表情をしていた。一部魂が抜けてしまったような真っ白い人もいたけれど。


 そして〈エデン〉唯一の3年生、タバサ先輩はというと。


「教師の認定テストでAAA判定だったわ。これで私も来年度からはこの学園の教師よ」


「内定おめでとうタバサ先輩!」


「「「「おめでとう~!!」」」」


「ありがとうみんな。会える時間は少なくなってしまうけれど、時々会いに来るから、その時は教師とは関係なく仲良くしてね」


「そんなのもちろんです。いつでも来てくださいタバサ先輩。ここはタバサ先輩のホームなのですから」


 そう、タバサ先輩は来年、ここ〈迷宮学園・本校〉の教師をすることが正式に決まったのだ。

 ギルドのみんなでお祝いの言葉を贈る。

 アイギスなんか涙目でお祝いしていたな。まだ卒業式には早いぞ。

 俺も人のことが言えるように気をつけなくちゃいけない。


「これからはタバサ先生か~。なんかぴったりって感じがするな。タバサ先輩には教師の姿がよく似合うと思う」


「ありがとうゼフィルスさん。私も教師という仕事は自分に合っていると思うの」


 元々タバサ先輩は面倒見の良い性格で、よく〈アークアルカディア〉のメンバーを鍛えたり、一緒にダンジョンに突入したりしていた。

 臨時教師活動をしていた俺と、人に分かりやすく教えるにはどうすればいいのかなど、話し合ったりしたこともある。その辺は俺の得意分野だからな。


 俺の3学期選択授業にはタバサ先輩も参加していたりしたのだ。

 なお、マンツーマンの個人授業もしたこともあるぞ。

 タバサ先輩も教師向けの性質だったのでかなり教えやすかった。


 さらに言うと、上級職で学園の中でもトップクラスの実力者であり、〈エデン〉所属ということもあって学園から熱心にスカウトを受けていたらしい。

 しかし、スカウトはされても教師が受けなければいけない採用試験でA判定以上を出さなくてはいけないのだが、タバサ先輩には余裕だったっぽい。


 なお、いくら学園からスカウトを受けていても、適性判定の低いB判定の人たちは不採用になるので注意だ。人に教えるには深い知識と理解がなくてはならない、結構厳しい判定なのだろう。

 テストで言えば90点以上を取れなければ不採用、みたいな感じだな。


 とはいえ、そもそもスカウトを受ける人たちはそういう面も見てスカウトされるため、大体の人がAランク判定以上を取るらしいけどな。

 ちなみにタバサ先輩のAAA判定は満点評価という意味らしい。さすがだ。A判定以上の人は数居れど、AAA判定だった人はかなり少なかったらしい。


 俺も採用試験〈育成論〉問題テストの作成に尽力した手前、正解してくれて嬉しいぜ。(ゼフィルスはテストを作る側)

 おかげでかなり良い条件で雇用契約を交わせることになったとのことだ。




 3年生の就活も終われば、2年生以下のテスト期間も終わる。

 この1年間勉強してきたことを出し切ったのだ。

 みんなやりきったという晴れやかな顔をしていた。いや、疲れている顔が大半かな?


「やっと終わったわ~」


「お疲れ様でしたラナ様。良い点であればいいですね」


「うにゅー、もう頭がぱんぱんなのです~」


「よく頑張りましたルル。頭を撫でてあげます」


 早速エステルとシェリアがラナとルルを甘やかしに行っていた。

 テスト期間中は珍しく厳しめモードだったからな。その分、甘やかしに熱が入っている気がする。


「クラス替え、どうなっちゃうんだろうね」


「また同じクラスがいいけど~」


「きっと大丈夫。そのために一緒に頑張ってきたんだから」


 仲良し3人組のサチ、エミ、ユウカも抱き合って励まし合っている。

 俺も3人と別クラスになるのは寂しい。

 3人は1組に残れることに不安のようだ。


 そんな光景が教室の至る所で繰り広げられていた。


「どうだったキール。手応えは?」


「それなり、だな。セーダンは?」


「1組に残るのは、少し厳しいかもしれないな」


「……俺も厳しいかもしれないとは思うな」


 向こうでは男子が固まっている。セーダンとキールは難しそうな表情だ。

 テストの点もそうだが、2人はまだ下級職だからな。


「ふぅ。俺の筋肉をもってしてもなかなかの難解だった」


「いや、筋肉は勉強に必要無いから」


「なに? 必要不可欠だろ?」


「それが必要なら、アランはきっと1組になれるよ」


「ふっ、ありがとよ」


「褒めたわけじゃ無いんだけどなぁ」


 こっちでは筋肉を盛り上げすぎて制服をパンパンにさせたアランと、苦笑気味だがどこか余裕そうなラムダが話していた。

 アランはちょっと厳しいみたいだ。筋肉を盛り上げてチェックを怠らない。

 どうしよう、こういう時チェックするのはテストの答えとかなのに、アランにとっては筋肉に不備が無いか確かめるのが普通のようだ。

 アランは上級職【鋼鉄筋戦士】。可能性は、ある……のか?


「リャアナは、どんな感じ?」


「自信あり! ミューちゃんは?」


「こっちも大丈夫」


〈ハンター委員会〉所属のリャアナとミューは自信がある様子だ。

 さすがは学園公式ギルドの所属メンバーだな。しっかり勉強してきたらしい。

 リャアナもすでに上級職、高の下【大駆動だいくどう氷凜槍士ひょうりんそうし】へ〈上級転職ランクアップ〉しているらしい。

〈ハンター委員会〉の第1陣はすでに〈山ダン〉も突破しているし、リャアナも続けて攻略できれば1組の可能性はあるな。


「メルトはん。2年生になってもよろしゅうな~。きっと同じクラスや~」


「おいハク、もう来年度の話か? まだ結果はわからんだろう」


「そんなん余裕やん。うちのメルトはんがクラス落とすことなんてないやろ~」


「たはは~余裕だね。そんなこと言っといて自分だけクラス落ちしたらどうするのかなハク?」


「あ、ミサトはん。もちろんミサトはんも同じクラスやろ~、来年も仲良うして~」


「ちょ、抱きつかないでハク!? ちょちょちょ!?」


 あっちは姦しいな。メルトがそっと距離を取り始めた。

 ハクは相変わらずメルトとミサトが大好きのようだ。

 それにハクは〈岩ダン〉攻略者の証の所有者。余裕度が違うな。


「うん。今回も良く出来たかな」


「アイシャはもうテストの復習? 真面目だねぇ。こっちはもう連日の勉強でヘトヘトだよ~」


「もうナギちゃんは。普段から勉強していればそんなことにならないんだよ?」


「普段から勉強してるよ!? アイシャが頭良すぎなの!」


 あちらはアイシャとナギ。あの2人は結構仲が良いんだ。合同攻略の時も仲良く話していたからな。

 アイシャはまた学年テストでトップ10に食い込んでくるのかな?

 この前の2年生合同攻略でアイシャも上級職に就いたし、1組に所属する可能性は十分高いだろうな。ナギも結構レベル上げしていたし、こちらも十分1組入りの可能性はある。


 しかしこうしてみると、男子がピンチだ。

 余裕そうなのがラムダとメルトとセレスタンと俺しかいない!?


「レグラム、レグラムはどうだった!?」


「どうしたのだ突然?」


「このままじゃ男子の人数がピンチなんだ。レグラムは1組に残れる自信はあるか? 大丈夫か?」


 最初11人いた男子も8人へと減り、さらに数を減らそうとしている。

 レグラムまでクラスから落ちてはとても困るぞ!


「安心するがいい。オリヒメと約束があってな。俺が1組に残ることは決定している」


「あ、確定じゃなくて決定なんだ」


 決定したのはオリヒメさんかな?

「来期は一緒のクラスになりましょうね。これは決定ですよレグラム様?」と言っているオリヒメさんの様子が見えるかのようだ。


 ふう。一瞬で焦りが鎮火したな。

 つまりレグラムはオリヒメさんとの約束を守るため、1組確定ラインまでしっかり勉強してきた、ということだろう。

 まあ、レグラムは元々勉強が出来るし、前回はテストで学年5位に入っていた。

 考えてみれば問題は欠片もなかったな。


 オリヒメさんなんて〈新学年〉の前回の期末テストで確か3位だったか?

 もしレグラムが1組から落ちていれば困ったことになっていたな。男子不足とレグラム不足の二重の意味で。

 なら、大丈夫だろう。レグラムはここで期待を裏切る性格ではない。


 でもこれで残留男子は5人は確定か? 〈新学年〉から男子が来てくれることを祈るんだぜ。



 そして土日を挟んで月曜日。

 今日はテストの結果発表と返却日だ!


 土日は打ち上げやらダンジョンやらを楽しんでしまった。

 テストの後はダンジョンで周回!

 みんなでボス狩りに精を出してしまったな。おかげで〈上級転職チケット〉が10枚も落ちてしまったぞ。ふはは!

 ラナの『プレイア・ゴッドブレス』が強すぎるぜ!


 いつも通りセレスタンとテストの順位が張られた学園掲示板の元へ向かう。


「うがあああああああ!?」


「よっしゃあああああ!!」


「いやあああああああ!?」


 なんだか勝者の雄叫びと敗者の嘆きのようなものが聞こえるな。

 壮絶な順位争いがあったのかもしれない。


 今回のテストはクラス替えの判断に直結する。

 見渡せば明るい表情の者も居れば真っ白の燃え尽きている者もいるな。

 燃え尽きている人は強く生きてほしい。


 しかし、俺が通るといつも通り(?)モーゼのように人が分かれる。

 この光景にも慣れたものだ。そのままトップが書かれた方へと迷わず進んだ。

 ふ、また俺は満点だろう。高笑いの準備をしておかなければなるまい!

 ふはははは!!(←フライング)


 ――結果は。


 第1位・ゼフィルス 点数900点

 第1位・シエラ 点数900点

 第3位・セレスタン 点数899点

 第4位・ヘカテリーナ 点数898点

 第5位・レグラム 点数894点

 第6位・メルト 点数893点

 第7位・アイシャ 点数892点

 第8位・ミサト 点数890点

 第9位・ラムダ 点数888点

 第10位・ケイシェリア 点数887点


 シエラが1位タイになってるーーーー!!


 マジかよ! すごい、全問正解か!? すげぇ!

 ついに俺以外にも全問正解者が、しかもシエラ!?

 おお、おおお、おおおおーーー!


 なんだかよく分からないが、心の底から驚いたぜ。

 なんか自分が満点取ったことなんて一瞬忘れるくらいの衝撃が来た。


「シエラがすごい!」


「ええ。抜かされてしまいましたね」


「おお~。そういえばセレスタンはいつも2位だったもんな」


〈敢えて1問間違えることで俺より下の順位にしているのでは?〉疑惑のあったセレスタンだったが、今回初めて3位になった。しかし点差は1点だ。899点てほぼ満点じゃんセレスタン。それで3位とかヤバい。


 順位を見てみると、あれ? トップ10常連だったキールがいない!?

 どこ行った!? その代わり10位にシェリアがランクインしていた。

 シェリアの本気を見た気がする。


 いや、キールマジでどこ行ったの!?

 探したら22位にいた。いったい何が!?


 いや、理由が分かったかも。

 今回のテスト、かなりレベル平均点が高い、壮絶な争いがあった模様だ。

 10位のシェリアが887点て。確か前回ミサトが10位だったとき870点くらいじゃなかったっけ?

 かなりハイレベルな点数だ。


 まあ、今回は1学期と2学期の問題も範囲に入っていた。3学期の授業なんて4週間くらいしか無かったからな。割と覚えていることも多い。

 元々しっかり復習していた人にとっては楽に点が取れたのかもしれない?

 いや、やはりこの点数が2年生のクラス替えに直結するとあってみんな頑張ったのだろう。


〈エデン〉〈アークアルカディア〉メンバーも、ダンジョン週間でしっかり勉強したおかげかみんな高順位にランクインしている。


 さて、この結果が来年度にどう響くのか。

 それはともかく、まずはシエラを祝いに行こうか!



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