第962話 ばったり。〈エデン〉とマッスラーズ遭遇戦。
「というわけで決定! Aチームは西だな!」
「Bチームは東ね!」
「そしてCチームが南か」
「ん、無念」
「DチームとEチームは防衛担当だな。よろしく頼むぜ」
自由最高。
クジ引きの結果、出撃の3チームはA、B、Cチームに決まった。
俺の手に西、ラナの手には東、メルトの手には南と書かれているクジが握られていた。
カルアのクジは防なのでDチームは防衛担当である。
公平に決めた。できれば南へ行きたかったが、お留守番と比べれば断然良き。
もちろんローテーションなのでDチームも出撃の機会はある。一定時間毎に交代と決め、早速俺たちは飛び出した。
Aチーム:ゼフィルス【救世之勇者】、アイギス【竜騎姫】、ノエル【声聖の歌姫】、エリサ【睡魔女王】、フラーミナ【傲慢】。
「行くぞAチーム! 俺について来い!」
「はい! ゼフィルスさんについていきます!」
「わったしもー」
「やったーご主人様とおんなじチームよー!
「にぎやかで楽しい出撃になりそう!」
みんなうっきうきである。
他のチームにさよならして俺たち5人は〈エデン〉の西側に飛び出した。
「飛び出したはいい、さてどこに行こう!」
「まさかのノープラン!?」
早速キレの良いツッコミが飛ぶ。今のツッコミはフラーミナだ。
彼女はなぜかツッコミに慣れてるんだよ。しかも日に日にキレが増している気がするんだ。あの淑女のカタリナや真面目なロゼッタといつも一緒にいてなぜツッコミに慣れるのか、不思議なこともあるものだ。
「私はご主人様の行くところだったらどこでも行くわ!」
「私もです。ゼフィルスさんが決めていいですよ」
「その辺で斥候狩りをするも良し、拠点攻めをするも良しだよ~」
エリサ、アイギス、ノエルはまったく気にしない。
うむ。ノープランでも楽しめれば問題無いのだ!
とりあえずは遠出しよう。何しろまだお隣にしか行ったことがないからな。
「よし! まずはこの先にある3×3のデッカマスに行ってみようか!」
「あ、それいいわ!」
みんな初体験であるデッカマス。
危険も伴うが、デッカマスは進行の重要地点にあることが多く、ここを制すると相手に大きな打撃を入れることが出来る、ハイリスクハイリターンな場所でもある。
まずドーンするのにとても良いところだと思うんだよ。デッカマスデビューだ!
エリサを始めみんなの同意を得たので出発です。
「それじゃあウーちゃん、ルーちゃん、フーちゃんカモーン!」
ウールーフーの〈ウルフ〉系3体がフラーミナのマントから登場する。
「『仲間騎乗』! エリサとノエルは乗っちゃって」
「じゃあフーちゃんは私ね!」
「よろしくねウーちゃん!」
エリサがフーちゃん、ノエルがウーちゃんに乗る。
俺とアイギスはAGIがむっちゃあるので、移動用の足としてフラーミナが出した形だ。
やっぱ3体出せる【傲慢】はめっちゃ強いよ。
ちなみにフラーミナの乗るルーちゃんが一番強い〈ラウルゼ〉で、他のフーちゃんとウーちゃんはまだ〈バトルウルフ(第三形態)〉である。
「いっくぜ~」
「はい!」
「わ、はや~い!」
「ウォン!」
先頭が俺、続くアイギス、そしてウルフに騎乗する3人。初めて騎乗するノエルがはしゃいでいた。
いいね。こういうのテンション上がる! 上がりすぎてアイギスを引き離さないように移動速度を調整しながら進むと、あっという間にデッカマスに突入する。
そこで見たものは、
「「「「「筋肉! 筋肉! 筋肉――!!」」」」」
「「「うわああああああ!?」」」
筋肉が腕を組み合ってスクラムし、筋肉以外を蹂躙しているところだった。
「ふはははははは! 筋肉こそ最強! 他はいらねえ!」
「「「「筋肉こそ最強!! 他はいらねえ!!」」」」
「わー!?」
総勢8人の裸の筋肉が固まりになってダッシュしてくる光景はあまりにも怖すぎる。
しかも逃げたら追いかけてくるのだ。超速いスピードで追って来るその光景に恐怖で足が縺れ、転んでしまった男子。そこに容赦なく筋肉たちが迫った。
「お母さーん!? あぶしゅ――」
「これで7人目か!」
「アラン、このままドンドン行こうぜ!」
「今の俺たちの筋肉、すっげぇ躍動してるよ!」
「相性が抜群さ!」
「筋肉が共鳴してるんだよきっと!」
一瞬で筋肉に飲み込まれて消えてしまった男子。
通り過ぎた筋肉たちがさらなる獲物を求めて走る。
あの先頭の真ん中にいるのは間違いない。同じクラスのアランだ。
それに元同じクラス、現在10組にいっちまったメンバーズもいる!
残りは知らんな、多分〈筋肉は最強だ〉のメンバーだろう。上半身裸だし。
相手は誰だ? この近くだと〈サンダーボルケーション〉だろうか? 〈ハンマーバトルロイヤル〉の可能性もあるが、ドデカいハンマーが見当たらないので違う?
「ひゃー。あんな格好で恥ずかしくないのかな?」
「筋肉たちからしたら自慢のマイボディを見せたくて仕方ないんじゃないか?」
ノエルが素朴な疑問を言ったので答えた。
「む! また新手が現れたぞ! 右向けー右! 前進ー!」
「「「「応!」」」」
「こっち来ちゃった!?」
「う、うーん。さすがにルーちゃんたちじゃ無理かも!」
筋肉スクラム。その名も〈筋肉ビルドローラー〉だ。
さっきのアランたちの会話を聞く限り、彼らはここでただ走り、相手を蹂躙してきたらしい。
ただ走るだけで蹂躙できる【筋肉戦士】のポテンシャルがもうヤバイ。一種のトラックかな? 転生はしないっぽいが。いやモンスターならリポップという名の転生は可能か? よくわからなくなってきたぜ。
チラリと見ればフラーミナ自慢のモンスターたちも尻尾が垂れ下がってやがる。モンスターもあれに巻き込まれたらやばいと本能で理解してるんだ。やっぱり転生トラックじゃ無いな。ただの筋肉だった。俺の眼は覚めた。
「やばくない!?」
「どうしますかゼフィルスさん。迎えうちますか?」
「まあ、筋肉によく効く対策ってのをお見せしておかないとな。ノエル、エリサ、眠らせろ!」
「オッケー! 『スリーピングメロディ』!」
「『誘いの睡魔』!」
【筋肉戦士】には弱点がある。とんでもない弱点だ。
ユニークスキルは最強格で強い。しかしそのデメリットとして装備をすると能力の上昇が下がってしまう上に、他のスキルを覚えないというとんでもない特性を持っている。
故に、【筋肉戦士】は装備でカバーすべき状態異常に極端に弱くなってしまう。
というわけで冷静にノエルとエリサが〈睡眠〉状態にするスキルを放った。
「ふはははははは! ゼフィルスよそんなもの対策済みよ!」
「え、えええ!?」
「わ、効かないじゃない!?」
「こりゃ、〈オール耐性ポーション〉を飲んだな? そういえばハンナが筋肉が大量買いしていたとか言っていたような」
ただ、筋肉たちも自分たちの弱点を放置するわけが無かったようだ。
しっかり耐性ポーションを飲んでいたようで誰一人〈睡眠〉にはならない。
だが、甘いな。甘甘だ。こっちにはエリサがいるんだぜ?
「エリサ」
「『睡眠耐性封じの闇球』! 『睡魔の砂時計』!」
「『アンコール』行くよー♪ 『スリーピングメロディ』♪」
「ぬ!?」
出ました『睡眠耐性封じの闇球』。これは相手の睡眠耐性を一時的に〈封印〉する強魔法だ。単体攻撃ではあるが、〈筋肉ビルドローラー〉でスクラムを組んでいたため2人がこれの直撃を食らう。
これによって一定確率によって耐性が無くなってしまった2人の筋肉が、続いて歌うノエルによって眠らされてしまった。
〈筋肉ビルドローラー〉は失速。当然エリサは『睡魔の砂時計』で〈睡眠〉状態からの回復はしない。
「さすがだ。ならば――残りで組みなおせばいいことよ!」
「「「応!」」」
アランはすぐに対応してきた。寝てしまったものをその場に置き、残りの全員で〈筋肉ビルドローラー〉を組んだのだ。
「筋肉!」
――ガシャン!
「筋肉!」
――ガシャン!
「〈筋肉ビルドローラー〉!」
かっこいい!
でもさようなら。
「『闇の檻』! これで終わりよ――『ナイトメア・大睡吸』!」
エリサの『抗えない睡魔の罠』を使ったコンボ。
『闇の檻』で目くらまし、〈暗闇〉状態にしたことで『抗えない睡魔の罠』が発動、〈睡眠〉状態の付着率を特大上昇させた上でのユニークスキルが筋肉たちを襲った。
その後に起きていられた者はアランを含め、たったの2人しかいなかったのだった。
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