第937話 〈カマグマ〉戦、五段階目ツリーでボッコボコ!
〈嵐ダン〉のレアボスは今までのトカゲ系とは一風変わって風を操る怪異が登場する。
その名も、
―――〈辻怪異・カマカマグマ〉。通称〈カマグマ〉。
ってまたクマかよ!? トカゲどこ行ったの!? と思うだろう? 俺も思った。
だってこいつ、カマイタチとクマが合わさったボスって設定なんだもん。でもバッチリクマだよ。完全に見た目クマだよ。ただの風を操るクマだよ!
と、攻略サイトのコメ覧ではもう全員が言っていたね。
開発陣、ボスといったらクマみたいな思考回路でもお持ちなんかな、と囁かれていたっけ。
まあランクの低い
その法則に則ればクマだって、いややっぱり分からんな。
俺たちが最下層に戻り、〈笛〉を吹いて門を潜ると、そこにはボスはおらず、続いてレアボスポップのエフェクトが溢れてそいつは出てきたんだ。
「……クマね」
「クマだわ!」
「すっごく大きいクマですね」
「ん。巨大グマ」
やっぱりクマだよね? カマイタチの要素皆無だよね?
おい開発陣どういうことだ! あの
もうこれ完全にクマじゃん! どういうことだ!(2回目)
まあ、そんなことは置いといて、今はボス戦に集中しよう。これでも奴はレアボスだ。
見た目はクマ。
その大きさは4メートルほどと〈クジャ〉よりだいぶ小さく見える。
両手足が太く、二足歩行から四足歩行までなんでもござれ。風を常に纏っていて、そのスピードは巨体に似合わず俊敏だ。首の所に白い三日月の模様があるためちょっとだけ可愛く見える。
さらにはそのユニークスキル。『
しかも
とはいえ〈即死〉は自分よりLVが低い相手にしか効果が無い、〈カマグマ〉のLVは上級LV20なので、LV19以下にしか効果が無いのでセーフだ。そこはランク1ダンジョンの低レベルに感謝である。
またこのユニークスキル『辻怪異流・撲殺鬼之我熊』は読み方を変えると「撲殺鬼之我熊ぼくさツキノワグマ」に読めなくも無い。くっ、開発陣め! やっぱりクマじゃねぇか!
ちょっとだけモフってみたいと思ったのは内緒。
HPバーは普通のボスと同じで3本だ。そしてとうとうボスが動き出す。
「クマアアァァァァ!」
「わ!? クマって言ったわ! 今回のボスはくまなのね!」
「クマが相手ね。今まで同じようなモンスターは相手にしてきたわ。上級レアボスの最初の相手にちょうど良いかもしれないわね」
ほら見ろ、もうみんな完全にクマって思い込んでるぜ!?
さよならカマイタチ要素!
「さーて、んじゃやっちゃいましょうかね。みんな準備はいいか?」
「任せて――『オーラポイント』! 『シールドフォース』! 『
シエラがヘイトを取る。
「それじゃ次は私ね、バフを掛けるわ! 『守護の大加護』! 『獅子の大加護』! 『耐魔の大加護』! 『迅速の大加護』!」
続いてラナが全員にバフを掛けた。
ここまではいつも通りだ。
「クマアアアアア!!」
「! 何か来るわ!」
シエラに目を向けた〈カマグマ〉が吠え、続いてまだ全然距離があるのに二足歩行で立ち上がり、右腕を下に振りかぶる。完全に遠距離攻撃の構えだ。そして、
「グマアアア!!」
放たれたのは風の爪。5本の爪が地面を抉りながらシエラに向かって飛んできたのだ。
だが、
「くらいなさい――『カウンターノヴァ』!」
そこにシエラの〈五ツリ〉が発動。
『カウンターノヴァ』は『カウンターバースト』の上位ツリー。
『カウンターバースト』の時はやや広い範囲のせいぜい4メートル弱しかなかった射程だが、『カウンターノヴァ』の射程は直線に長く、遠距離攻撃に対応したカウンタースキルとなっている。
シエラが発動した瞬間、シエラの盾に命中した風の爪がかき消え、衝撃波が飛んでそのまま〈カマグマ〉を巻き込んだ。
「グア!?」
カウンターを食らった〈カマグマ〉が大きくノックバックした。
俺たちと〈カマグマ〉にはまだだいぶ距離がある。故に今まではここからじゃこのチャンスにノックバックダウンまで取れなかった。
しかし、これからは違うんだな。
「ん! 『神速瞬動斬り』!」
まず動いたのはカルアだ。
『神速瞬動斬り』は『フォースソニック』の上位ツリー。
ソニック系で超速いスピードで瞬く間に接近してすり抜けざまに斬るスキルだ。
そして俺。
これさえあればどんな敵も勇者からは逃げられない。
「『
スキルを発動した瞬間、俺は〈カマグマ〉の前にいた。
やはり勇者といえば即時移動は欠かせない。これを覚えるのは〈五ツリ〉だ。
パメラも覚えているが、上級職になると瞬間移動系が登場するようになる。当然勇者も覚えるわけだ。
「ア?」
急に目の前に現れた俺に〈カマグマ〉がノックバックしながら目を丸くしていた。
それに構わず攻撃スキルを放つ。
バイバイ!
「『フィニッシュ・セイバー』!」
「ん!」
「マ!?」
フィニッシュ!
攻撃スキルが大ノックバック中の〈カマグマ〉に間に合う。
『フィニッシュ・セイバー』は『聖剣』の上位ツリーの一つだ。シンプルにて
ほぼ同時にカルアもすり抜けながら斬りつけた。眩しい光を放つ一閃と高速の斬りつけが叩き込まれて大きなダメージを受け、〈カマグマ〉はなすすべ無くノックダウンする。〈カマグマ〉が「マジで!?」みたいな声を出したが、マジだぜ。
「チャンスだ!」
「ゼフィルス、射線を開けて! 『大聖光の
すると後ろからラナの声が届いた。
俺は完全にボスの真正面にいたので遠距離攻撃組の射線を塞いでしまった形だ。
俺はすぐに右へステップして射線を開けながらダウンした〈カマグマ〉にスキルを叩き込みつつ後方をチラッと見る。
するとそこには、宙に浮かぶ十の光の宝剣を〈カマグマ〉に向け、その中央に堂々と存在するラナの姿があった。
「行きなさい!」
ラナの言葉に光の宝剣が飛ぶ。『大聖光の十宝剣』は『大聖光の四宝剣』の上位ツリー。
今まで光の宝剣4本だったのが単純に10本に増える高火力魔法だ。今まで最大4体にしか攻撃できなかったのが、最大10体、10回ランダムでモンスターに突き刺さるようになった。
それが1体に絞られたらどんなダメージを発揮するか。
ズドドドドドドドドドドン!! 強烈な雨のように宝剣が〈カマグマ〉に突き刺さった。ビクンビクンする〈カマグマ〉。大ダメージがその身を襲ったようだ。
さらに〈イブキ〉に乗ったエステルの番だ。よく見れば〈イブキ〉の船首から大砲のようなものが2門突き出している。これは〈イブキ〉に内蔵された武装の一つ。〈戦車〉カテゴリーの真骨頂。そこから、
「発射します。『ロングスラスト』!」
瞬間、大砲からズドンと砲撃音と共に槍が放たれたのだ。
これは通称〈槍砲〉。
使われたのは〈
本来〈馬車〉は『ドライブ』系スキルしか使えない制限を持っているため当然『スラスト』系なんて使用は出来ない。しかし、それを覆すのが〈戦車〉のカテゴリーとエステルの五段階目ツリー『戦車スラスト砲・解禁』だ。
パッシブスキル『戦車スラスト砲・解禁』は文字通り〈戦車〉〈馬車〉カテゴリーに乗っている時、槍砲を使用できるようになるスキル。スラストと名の付いているとおり、スラスト系スキルを発動すると槍砲としてそれが発射され遠距離攻撃になるという、ユニーク級の超スキルだ。
これによりエステルは〈戦車〉〈馬車〉に乗った状態の時は遠距離攻撃が可能になってしまった。
しかし、まだまだ練習中。
放たれた『ロングスラスト』は〈カマグマ〉を逸れて着弾してしまう。
今のは試射だ。着弾位置から逆算し、しっかりと目標に照準を合わせる。本番はこれからだな。
「修正しました。撃ちます―――『トライ・スラストカノン』!」
「―――!?」
ズドンズドンズドンッ!!
エステルの〈五ツリ〉、『トリプルシュート』の上位ツリーで強力な三連突きを放つ『トライ・スラストカノン』が〈カマグマ〉へと突き刺さった。
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