第925話 妖怪退治完了。欲しかった1枚ゲットだぜ!
「今のは多分守護型フィールドボスなのでしょうね。やっぱりこのダンジョンにもいるのね」
「階層門が巨石の中にありますから、てっきり守護型フィールドボスは居ないのかと思っていました」
シエラとエステルの反応も分かる。
俺たち〈ダン活〉プレイヤーたちもうっかり騙されたからな。初見殺しよぉ。
巨石を落とすというギミック上、守護型とかいないのではないか。巨石の下にはそれらしいボスはいないし、巨石の中に一緒に埋まっているとか考えづらいと、ついそんな事を無意識に考えてしまうのだ。
答えは一緒に埋まっているが正解だったけどな。ゴーレムだから出来ることだ。
しかも記念すべき最初の守護型ボスがこれまでに見てきたゴーレムとまったく違う外見なせいで、というかキラキラしている宝石に見えるせいで犠牲者が増えまくったのだ。
俺もそんな犠牲者の1人だった。苦い思い出だぜ。
そんな事を考えているとラナとカルアが側にやってきた。どうやら初見殺し極太ビームを防いだことに感謝しにきたらしい。
「ゼフィルス、さっきは助けてくれてありがとね」
「ん、ゼフィルス。感謝」
「いいって事よ。でも今後は気をつけろよ? 俺が居ない場合もあるからな」
「そうね。今みたいのがあると困るわ」
「ん……」
多分、ラナのRESなら余裕で生き残ったとは思うけどな。装備も魔防力寄りだし。
だけどカルアは大ダメージを負っていた事だろう。ワンキルされてもおかしくはなかった。やっぱりやべぇボスだぜ。
「さて素材は、大きな琥珀材が多いな~」
これは宝石の原石なのでこのままでも結構な額で売れるのだ。加工すれば換金アイテムになってもっと高く売れる。魔法系の武器にも使える。回収回収。
「それで宝箱だが」
「残念だけど〈木箱〉ね」
「まあ、ラナとカルアがここにいる時点でお察しだけどな」
「ん? おまいう?」
〈銀箱〉以上ならばラナもカルアもここにはいないだろう。もちろん俺もだ。
確実だな!
だが誰だ、カルアにおまいうなんて教えたのは。ニーコ辺りか?
「エステル、回収頼む」
「承知しました。――『解析』の結果、両手槍の〈石貫きの槍〉でした。一応『ゴーレムキラー』が付いておりますが」
「いらないなぁ。〈マテンロウ〉の『貫通強化』の方が万能で役に立つし」
「はい。では〈
〈木箱〉産は
「それじゃみんな〈イブキ〉に乗り込め! 先へ進むぞ!」
「「「「おお~」」」」
というわけで、回収が済み次第、即出発だ。
まだまだ先は長い。
今日中に最低でも30層までは行きたいからな。
それから俺たちはほとんど最短ルートで進んだ。
寄り道はほんの少し、ずっと〈イブキ〉に乗りっぱなしだと体が鈍ってしまうので、階層ごとのゴーレムの違いなどの調査と俺たちの運動を兼ねて度々モンスターやエリアボスを狩りながら進む。
隠し扉は最短距離を進む関係上、なかなか寄る機会が無かったが、それでも今日だけで5箇所の隠し扉で〈銀箱〉四つ、〈金箱〉一つを回収した。この〈金箱〉の中身は絶対欲しかったので大きく迂回して寄り道した。『直感』頼りならこういうこともあるよね。中身は〈魔錬筋肉加工台〉というゴーレムを作製、アップデートする時にパワーアップさせる重要な生産アイテムだ。要はゴーレム用の人工筋肉を作ってステータスを上げるためのアイテムだな。
ハンナに良いお土産が出来たぜ。なかなか順調だ。
結局俺たちは今日だけで35層まで進み、ボスはエリアボスを4体、フィールドボス守護型を7体倒すことに成功した。
やっぱり最短ルートだけだとエリアボスとは中々出会えないなぁ。
その代わり7箇所有った転移陣は全て開放。守護型は全て狩って素材と宝箱を回収した。
ボスドロップの宝箱は〈木箱〉が4個、〈銀箱〉が7個、〈金箱〉が2個という結果だった。〈幸猫様〉の恩恵で宝箱が二つになる機会が2回あったが、これは両方〈銀箱〉で残念。〈金箱〉が増えて欲しかったぜ。
そして〈金箱〉の中身だが、片手剣に分類される〈稲妻の
悪くは無いが〈上級転職チケット〉が出ない……。妖怪が怖い!
まあ、良い物が手に入ったことは確かなので問題無し。〈稲妻の
名前の通り黒い稲妻を生み出したり、自分に稲妻の特性を与え高速移動をしたりとレグラム向けだったからだ。見た目が黒いのは、金髪のレグラムによく映えるだろうな。オリヒメさんの反応も楽しみだ。
〈アミダクのマント〉は〈アーミーダークゴーレム〉というアサシン型のボスゴーレムからドロップしたマントで、インビジブル系やハイド系の能力を高めて索敵系に察知されにくい性能を持つなかなかの装備だ。
これはカイリにでも渡そうかと思う。
「まさか1日で35層まで来られるなんて、やっぱり〈乗り物〉は凄まじいわね」
「はい。ですがそれもゼフィルス殿の指示があってこそです。結局一つも間違いませんでしたね」
「本当にね……」
おお? なんだか視線を感じる。でも良い感じの視線だと思うので俺は笑顔でサムズアップした。
「さて、今日の探索はこれで終わりだ。一度戻ろうか、そして明日に再出発だ!」
「「「「おお~」」」」
こうして俺たちは帰還した。
やっぱ空を突っ切れる〈イブキ〉がやばいな。
フィールドをショートカットしているもんだから中級ダンジョンよりも早いまであるぞ。
35層の転移陣で帰還した後、俺はマリー先輩の下に向かうことにし、ラナたちはシャワーを浴びに寮へ戻った。
Bランクギルドハウスは最低限の物しか置いていないので誰も寄らないみたいだな。
というわけでマリー先輩の店に突撃です。
「マリー先輩いるか~」
「いるで~」
いつものやり取りで入店すると、マリー先輩とは別の男子や女子が珍しく店にいてお客さんを捌いているところだった。
いや、実はこれも最近は見慣れた光景になりつつある。まだ違和感はあるけどな。
マリー先輩が上級ダンジョン攻略に向いた上級装備のモデルをいくつか売り出した。おかげで最近はこうしてマリー先輩以外も売り子が付くようになったのだ。
じゃあなんでマリー先輩が店にいるのかというと、俺が「これから店に行くぜ!」とメッセージを送っていたからだな。そうじゃないと、
「おい、〈エデン〉のゼフィルスさんだ」
「本物だぁ~」
「この時間に来れば一定確率で会えるという噂は本当だったのか」
こうして注目を浴びて買い物どころでは無くなってしまうのだよ。
いやぁまいっちゃうなぁ。
「さあ兄さん、奥行こか」
「あいよ~」
おかげで最近は店の奥で売買する感じになっている。
これも有名になった弊害だな~。
「ん? あれシャロン?」
「ゼフィルス君やほ~」
案内された工房へ行くと、そこにシャロンがいた。シャロンとここで会うとは珍しいな。片手を挙げて「やほ~」と返す。
「今シャロンはんの買い取りをしているところだったんよ」
「そうだったのか、ちょっと間が悪かったか?」
「いんや、そっちの査定はメイリーに任せとるしうちはちょうど手が空いたところやったから問題無いで」
「私は
どうやらレグラム率いるボス周回班は今日〈四季の妖精ダンジョン〉を周回してきたらしい。フラーミナが新しく妖精種をテイムしたりと色々あったようだ。
ここへはじゃんけんに負けたシャロンが素材を売りに来たらしい。レグラムは〈笛〉の回復にレンカ先輩のギルドへ行っているようだ。向こうも楽しんでるなぁ。
そこでニーコも送り出し〈上級転職チケット〉ゲットのお願いをしていたことを思い出す。
「そうだ! シャロン、〈上級転職チケット〉はドロップしたか? こっちはゼロだったんだ」
「ふっふっふ、そう言われると思ったよ。じゃーん!」
「おおお!」
なんと得意げに笑ったシャロンが取りだしたのは竜の絵が書かれた1枚の紙、間違いない。〈上級転職チケット〉だ!
「実はこの後ギルドハウスにも寄るから預かってたんだよね。今日ドロップした鮮度抜群、新鮮ぴちぴちのぺらっぺらだよ!」
「おおー! さすがだ! さすがだぜ!」
「あはは! 喜んでもらえて良かったよ」
シャロンの言い回しは良く分からなかったが、今日ゲットしたというのはわかった。
さすがはレグラムたち、見事に妖怪をぶっ倒してきてくれたらしい。
ニーコの能力さえあれば楽勝まであったか?
妖怪なんてニーコに掛かれば恐るるに足らず! ふはは!
これで懸念事項の一つだったAランク戦〈25人戦〉を全員上級戦闘職で揃えられそうだ。
「これで準備バッチリだね?」
「ああ! Aランク戦、〈エデン〉は再び全員上級戦闘職で挑むぜ!」
「…………な~んか聞いちゃいけないような話が聞こえた気がするわ~、というかそんな重要なことうちのギルドで話さんといて?」
そういえばここは〈ワッペンシールステッカー〉だったっけ。
マリー先輩が引きつった表情をしてらっしゃいました。
その後はランク6素材を積み上げてまたマリー先輩の悲鳴が響いたのは言うまでもない。
マリー先輩、いつもナイスリアクションありがとうございます!
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