第883話 上級職ランクアップ! レグラム・オリヒメ編!
シェリアの〈
「ゼフィルスさん。レグラム様の順番を変えていただきありがとうございました」
「それくらい礼を言われるほどのことじゃないさ。もう一度確認するけど本当にオリヒメさんは自分個人が持つ〈上級転職チケット〉を使っちゃっていいんだな? 少し待てば〈上級転職チケット〉はギルドから支給されるぞ?」
「構いません。これは元々レグラム様との婚姻を邪魔されないように持っていた切り札でしたが、もうその効力は弱くなってしまいましたし。それにレグラム様を1人で進ませるなんていたしません。私も付いて参ります」
「愛されてるな~レグラム」
「あまりからかわないでくれ」
オリヒメさんのラブラブ光線によってレグラム敗北。微妙に顔を逸らすレグラム。若干顔が赤くなっていた。照れているようだ。
「はあ、助かる」
「栄養豊富なごちそうですね。ごちそうさまです」
シャロンがニヨニヨしながら、シェリアもニコニコしながら2人を眺めてらっしゃった。
「んじゃ、オリヒメさんの意思を尊重するということで、始めようか!」
「感謝します。ゼフィルスさん。お願いいたします」
「……頼むゼフィルス」
「任せろ! では発表するぞ。まずレグラムに就いてほしいのは【花形彦】の上級職、高の上、【ウラヌス】。オリヒメさんに就いてほしいのは【人魚姫】の上級職、高の上、【ネプチューン】だ!」
「やはり【ウラヌス】か」
「さすがはゼフィルスさんです。私は【ネプチューン】ですね」
2人はそれを聞いてもさほど驚かなかった。
それも当然だ、実は2人から前もって希望を聞いていたのだから。
【ウラヌス】と【ネプチューン】は【魔装】系統のようなコンビネーションスキルを持っている
単体でももちろん強いのだが、【ウラヌス】と【ネプチューン】が揃うと、非常に強力なスキルがいくつか使えるようになるのだ。
故に【ウラヌス】と【ネプチューン】、使うならセットという考え方がゲーム時代もあった。
実はこういうコンビネーションスキルが使える、セットと呼ばれていた
昔エステルが【姫騎士】になる前に就こうとしていた【近衛騎士】と「王族」系の
オリヒメさんもこれをご存じだったのだろう。レグラムも知っていたらしく、以前から就くのであれば【ウラヌス】と【ネプチューン】と希望を告げていたのだ。
むしろオリヒメさんは【ネプチューン】に就くために【人魚姫】に〈転職〉したらしい。すごい愛だ。
これについて、俺としても構わなかったりする。
【花形彦】の上級職、高の上は2ルート、【ウラヌス】か【光速の彦星】。
【光速の彦星】は単体の剣士としてはかなり強力だ。単身であればこちらを選んだだろう。
しかし【ネプチューン】と組ませることができるなら断然【ウラヌス】だ。
要はどちらも強いのでどちらでも良かった、ということだな。
「2人とも、改めて聞くが、異存は無いということでいいな?」
「もちろんです。最高の
「むしろ俺たちの希望を叶えてもらって感謝しかない」
【ウラヌス】と【ネプチューン】も「男爵」カテゴリーで最強の一角だ。
【ウラヌス】が剣士系、【ネプチューン】が回復系になる。
【ウラヌス】は飛ぶ斬撃や属性剣をメインに使い、主に雷、光、聖属性を操る純アタッカーだ。後半になるとダンジョンボスは属性によって無効化能力や属性耐性を備えてくるので、3属性を切り替えられる【ウラヌス】はアタッカーとしてかなり重宝する。
さらに『天歩』系という空中歩行が可能になって三次元の動きが可能になるところがかなり強いんだ。これはギルドバトルであっとお披露目したいところ。
【ネプチューン】は回復系、デバッファー系の他、攻撃系の性質も持ち始める。
〈氷属性〉をメインに使い、水系のフィールドでは全てを足場にしてしまう能力まで持っているが、メインは回復。その回復力はタンク無しで上級ボスを相手に出来るほどに高い。
また【ウラヌス】と組み合わせると発揮する特殊能力がまたすごい。
【ウラヌス】と【ネプチューン】はセット。それを知っているからだろう。
オリヒメさんなんて笑顔が晴れて眩しいくらいだった。
これは期待に応えねばなるまい。
「それじゃ、2人にはこれを持ってもらおうか」
「これは? アイテム、いや装備品か?」
「あ、これ知っています。〈コスモイヤリング〉ですね」
「あんまり強い効果では無いんだがな。二つしか無いから順番だが、まずはレグラム、アクセ装備を外してこの二つを身に着けてくれ。〈
「なるほど、承知した」
【ウラヌス】と【ネプチューン】は文字通り星に
これを考えた開発陣は「姫職があるなら彦職があってもいいだろう」と言っていた人物なので、きっと天の川から星系を連想したに違いないと攻略サイトでは囁かれていたっけ。
アルタイルとベガじゃないのは、なんか捻った結果だろう。「天の川」の「天」から天王星を連想して【ウラヌス】、「川」から海、海王星を連想して【ネプチューン】になったんじゃないかと考えられていたな。
同じ天の川から連想されているためセット扱いというわけだ。
レグラムはすぐに身につけていたアクセ装備を二つ外すと両耳に〈コスモイヤリング〉という
その間、オリヒメさんがスッと近寄ってきて頭を下げる。
「そういえばゼフィルスさんにまだお礼を言っていませんでした」
「ん? 礼なんて別にいいぞ? それにまだ〈
「いえ〈
「おう。確かに渡したが」
オリヒメさんの掌を見ればレグラムが外した装備があった。
確かにそれは俺が前に使っていた装備〈エースブレスレット〉だ。
「これほどの性能の装備はそうはありません。これほどの装備をレグラム様に渡していただき、ありがとうございます」
そう言ってふかぶかと礼をするオリヒメさんに少し慌てる。
確かに〈エースブレスレット〉は非常に優秀な装備だ。『STR+30』『MP+200』というとんでもない上昇率を持っている。
ただ、俺はすでに性能的にはその上である〈煌めく夜空の腕輪〉『STR+50』『HP+100』『MP+100』を装備しているので使いまわした経緯があった。
装備の使いまわしはRPGの常套手段である。
お礼を言われることじゃない。
「いや、お礼を言われるほどのことじゃないさオリヒメさん」
「ですが、お礼を申さなければ、本当にこれほどの装備は見つかりませんから」
うむ、オリヒメさんはお目が高い。〈エースブレスレット〉はマジエースになれる装備品だ。
レグラムは最悪下級職のままBランク戦に挑んでもらう可能性もあったので〈エースブレスレット〉を渡しておいたのだが、なんかオリヒメさんに美化されてる!
まあ。訂正するのもなんなので礼を受け取っておこう。その方が双方とも幸せだ。
「じゃあ、礼を受け取るな。今後もレグラムには頑張ってもらいたい」
「はい! 私も全力で夫を支えて行きます!」
オリヒメさんの愛、再確認。もうお腹いっぱいだぜ。
装備の換装なんてとっくに終わったレグラムがシェリアとシャロンに無言でポンポンと肩を叩かれている様子が微笑ましい。
その後はしっかりレグラムに〈上級転職チケット〉を渡し、〈
〈竜の像〉に手を置き、現れたジョブ一覧から【ウラヌス】を選択し、レグラムは上級職の仲間入りを果たしたのだ。
そして覚醒の光が起こる。
「これは、覚醒の光か」
「わあ、レグラム様、素敵です!」
男子の場合はかなりレアだ。本当にほんの一握りの
だが、レグラムめ、覚醒の光に照らされた姿、すげぇ似合ってるじゃないか!
イケメン度の指数上昇が留まるところを知らない!? オリヒメさんがうっとりしながら目をキラキラさせるという器用なことをしているぞ。
「レグラムさん、ここで一言オリヒメさんに声を掛けるべきだよ」
「はい。良い雰囲気です。私、とても興味があります」
覚醒の光が終わって、シャロンとシェリアがレグラムに囁いた。完全に野次馬、お邪魔虫だ。
「ええい、やかましいぞ。そういうことは2人の時にやるものだ」
「「えー」」
「うふふ。ごめんなさいね、レグラム様は私が独り占めの予定なんです」
「うう! 正妻の光が眩しいよ!」
「はい。後光が見えるかのようです。これが勝ち組、というやつなのでしょうか?」
余裕のオリヒメさんの言葉に目を庇うシャロンと楽しそうに慄くシェリア。
覚醒の光が終わるとレグラムはスッと俺のところに逃げてきた。
「レグラム、〈
「ゼフィルス、ありがとう。ここまで来れたのもゼフィルスのおかげだ。それにオリヒメの希望にも出来る限り応えてもらって感謝の言葉も無い」
「気にするな。俺たちはギルドの仲間だろ」
「ふ、そうだな。次はオリヒメの番だ。頼むゼフィルス」
「承ったぜ」
レグラムからも頼まれて、オリヒメさんにもしっかり【ネプチューン】に〈
やり方はほぼレグラムの時と変わらないので余裕で満たすことが出来た。
これもセットと呼ばれていた
「【ネプチューン】が出ていますね。これで私は常にレグラム様の隣にいる存在になれます」
そう言ってジョブ一覧にタッチするオリヒメさん。
【ウラヌス】と【ネプチューン】はセット。つまり、そういうことだ。
オリヒメさんも当然のように覚醒の光に包まれたのだが、レグラムは終始覚醒の光に包まれて幻想的な光景になったオリヒメさんを瞬きも忘れて見つめていたのだった。
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