第860話 交渉成立! シリーズレシピゲットからの突撃。




 交渉は無事、大変有意義に行なわれた。とてもWin-Winな結果だと思う。

 専用系シリーズ装備を二つもゲット出来るとか運が良い。


 ヴィアラン会長の反応からもうちょっと要求出来た可能性もあるが、たかが〈成樹〉1本でそこまで釣り上げるのは俺の気が引けるのでこのくらいがちょうど良いだろう。

 多分〈救護委員会〉や〈サンハンター〉だってそのうちゲット出来るはずだしな。

 その時に〈成樹〉の価値は「装備シリーズ全集レシピ四つ分」とかなっていると笑えないことになりそうだし。〈成樹〉ってそこそこドロップするんだよ。復活アイテムの素材だから。


 まあそれはともかくだ。

 リーナとシズ用の上級シリーズ装備が手に入った。これはデッカいぞ。

〈救護委員会〉とはこれからも良い関係を続けたいな! ふはははは!


 また、今の所〈精霊の果実〉を高品質で加工することが出来るのがハンナしかいないので、その委託費のことも少し話し合ったが、これは俺ではちょっと判断が難しかったので後日セレスタンかリーナと交渉して欲しいとおねがいしておいた。

 またハンナの仕事が増えたな。

 そろそろ、ハンナを補助するメンバーを加えた方が良いかもしれない?


 交渉が纏まるとヴィアラン会長と握手して、そのまま〈救護委員会〉の建物の裏に案内され、伝令の人に「ここに置いてください」と言われた場所で〈精霊樹の成樹〉を取りだす。

 高さ10メートル級の木がドンっと出てくる姿は圧巻だ。やったの俺だけど。


「これが、〈成樹〉ですか」


「大きいですね」


「『鑑定』の結果、確かにこちらは〈精霊樹の成樹〉です。間違いありません」


 俺も〈成樹〉のちゃんとした姿は初めて見る。思ったより大きいなぁ。

 すでに鈴のような青い実をいくつも付けており、そのうち2個は赤く実っているようだ。あれはそのうち落っこちてくるので、それを回収すれば素材ゲット扱いになる。


 と、思った側から赤い実が落ちてきた。すぐ側に居た俺が2個ともキャッチする。


「おっと、と」


「ゼフィルスさん、それは」


「『鑑定』しますのでこちらへ見せてください。――おお! これは間違いなく〈精霊の果実〉です!」


 伝令の人に見せると即『鑑定』してくれた。やはりこの人、できるな。


「あの私にも見せてください!」


「俺もだ、見聞を広めるためにも是非」


 すると、見た目は大きな赤い鈴なそれを見に〈救護委員会〉のメンバーがどんどん集まってきた。ヤバい。このままでは物量に押し潰されてしまうかもしれない!?

 俺はヴィアラン会長の下へなんとか向かい〈精霊の果実〉を渡す。

 

「どうぞヴィアラン会長、受け取ってください。うち〈エデン〉への加工依頼、いつでもお待ちしていますよ」


「ええ。ありがとうございます。その時はまたお世話になるかもしれません」


 なんとか無事渡すことが出来てホッとしたぜ。

 いや、〈精霊樹の成樹〉って思ったより反響が大きいみたいでどんどん人が集まってきてるんだよ。

 このままだと帰るタイミングすら失いかねなかったので、ヴィアラン会長にお礼を言い、この辺でお暇させてもらうことにした。


 ヴィアラン会長が〈精霊樹の成樹〉の方を受け持って動けないので、シグマ大隊長たち一番隊のみなさんが入口まで送ってくれる。


 あ、それとカイリの『幸運』のことを思い出したので一番隊のみなさんには話しておいた。上級から宝箱が増えるのではなく、カイリが常時発動型の『幸運』を持っているのだと。

 するととても驚かれた。


「なんと! 薄々そうではないかと思っていたのですが、まさか常時発動型とは!」


「カイリちゃんすっごーい! なんで言ってくれなかったのよ~」


「装備は、幸運系の類いはない、か? どういう原理で付いてるんだ? まさか職業ジョブの能力!? いやしかしそんな情報は……だが〈五ツリ〉が開放出来ていればあるいは?」


〈ダン活〉では〈幸猫様ファミリーズ〉を抜かせば『幸運』スキルはとても希少だ。

 初級と中級装備は1種類ずつしかなく、防御力に難があって上級ボス相手には心許ないし、後は『幸運』を戦闘終了後まで付与する使い捨てアイテム〈幸運の小猫札〉くらいしかない。


 だから常時発動型の『幸運』をどういう原理で身に着けているのかとても聞かれたよ。まあ、それは〈エデン〉の秘密ということで内緒にしてもらったが。


 あとカイリにはせっかくなので〈金猫きんねこ小判こばん〉も渡しておいた。スキルLVが両方とも10になっている〈エデン品〉だ。

 これで〈救護委員会〉はさらに〈金箱〉ドロップを稼ぐことができるだろう。

 もし有用な品がドロップしたらまた交渉させてもらうのは大いに有りだ。

 諸々用事が終わったので、これにてさよならさせてもらう。

 

「また来ますね~」


「いつでもいらっしゃってください。歓迎しますよ」


「ゼフィルス君色々ありがとね~。またね~」


 そうシグマ大隊長やカイリたち一番隊のみなさんに手を振って別れた。



 そしてその足でマリー先輩の店に突撃した。


「ということでマリー先輩にはこのレシピのシリーズ装備の作製をお願いしたいと思います!」


「ま~た来たな兄さん! な~にがということか分からんわ! てまた上級装備シリーズの全集かいな! それも二つも!? はぁ、ほんま兄さんと一緒にいると退屈しないわ~」


「はっはっは! それほどでもあるぜ~」


 マリー先輩が目を見開いてレシピを受け取り、またか~みたいな息を吐いた。

 うむ、上級装備の〈金箱〉産、しかもシリーズ全集である。バラの方も全部揃っている。

 さぞ作り甲斐があるだろう!


 と思ったのだが。


「せやけどこっちの素材が足らんな。〈大艦長シリーズ全集〉は〈ウサ王〉の素材が必要みたいや」


「あっと、そういえば〈エデン〉はあそこまだ行ってなかったか」


 中級上位ダンジョンの一つ、ランク2、〈角兎の庭園ダンジョン〉。通称〈兎ダン〉。

 別名〈ホーンラビットの楽園〉。

 そう、なんとここは、ホーンラビットがメインで登場するダンジョンなんだ。

 信じられるか? 〈角の無いホーンラビット〉が〈初心者ダンジョン〉に登場するのに角有りは中級上位ダンジョンに登場するんだぜ? 「御猫様より上? どういうことだってばよ」とプレイヤーから散々草と共にツッコミが入ったダンジョンである。


 最近のゲームラノベ界では最弱の名をほしいままにしていた〈スライム〉がその名を返上し、今では〈ホーンラビット〉こそが最弱の名をほしいままにしているが、そこにテコ入れしたかったのだとかなんとか開発陣がコメントを残している。「可愛い~」と言って近づけば最後。「グッりやられるぜ? 逃げるほうで」とのことだ。どういうことだってばよ。


 そのレアボス〈闘拳王・キングキューサ〉。通称〈ウサ王〉の素材が足りていないらしい。

 思い出してみれば〈エデン〉は誰もそこには入ってなかったからな。何しろ人が多くてボス周回ができないし。やっぱりテコ入れしても〈ホーンラビット〉って弱いんだ。

 だから学生に人気のダンジョンの一つなんだ。レアボスは強いけど。


 ということで素材の納品依頼なども出しておき、素材がゲット出来次第リーナの装備に手をかけるとのことで、最初はシズの装備から手を付けるとのことだ。

 そっちはランク6、〈無人の巨城ダンジョン〉のレアボス〈黄泉誘い・グリム〉の素材で出来るのだが、こっちはリカやメルトが何度かレアボス周回しているので在庫はそれなりにあるとのこと。


「それじゃマリー先輩任せたぜ~! 明日はいよいよ上級ダンジョンの一つ、〈嵐ダン〉の最奥ボスに挑戦するからな。楽しみにしていてくれ~」


「おっかしいな~またうちの肝が取られる気がするわ~」


 マリー先輩の戦々恐々の呟き(?)を聞きながら貴族舎に戻り、その日はそのまま眠ることにした。

 さーていよいよだ。

 明日は上級ダンジョンの一つを攻略するぞ!



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