第十七章 初の防衛戦と上級ダンジョン攻略編!

第826話 ついに上級ダンジョンを攻略する時が来た。




 ある日のことだ、それはアルルからとある報告を受けたことから始まった。


「待たせたなゼフィルス兄さん、やっとラナ殿下とエステルはんの装備が出来たで!」


「マジで!」


 それはついに上級攻略パーティ、全員の装備が完成したという連絡だった。




 学園祭が終わってのんびり~、となるはずだった翌日の土曜日。

 最上級ダンジョンのレイドボスである〈ヘカトンケイル〉を相手に学園の最強たちが挑む〈迷宮防衛大戦〉を全力でやり終えて、その後は後夜祭こうやさいで空が白んでくるまでワイワイ騒いだ。


 おかげで興奮とテンションが抜けず、消灯時間となってもそこら中で明かりが点きっぱなしだったな。

 まあ、その日だけの無礼講みたいなものだろう。翌朝日が出るまで完徹した者も少なくは無いはずだ。


 俺もその例に漏れず、上位ランクギルドのメンバーと接触する機会もあって、まあ気が付けば日が昇る時間まで過ごしていたわけだ。


 学園祭が終わればダンジョン週間に突入する。つまり9日間授業も無い!

 よし、もう昼まで寝る!

 という気持ちだったのだが、朝9時頃。

 寮母さんの許可を得て貴族舎にある俺の部屋へ出入り自由なハンナがアルルを連れてやってきたのだ。


 もうね、さすがの俺もこの日ばかりはおそよーする気満々だったが、冒頭の一言で目が覚めたよ。

 バッチリだ!


「さーて、どうするか。まずは飯だ! 英気を養わなくては!」


「そうだろうと思って朝ご飯持って来たよ。ゼフィルス君、お皿出して」


「ハンナはんの予想通りやったな~。んじゃ、うちは一度ギルドハウスに戻ってるで。ラナ殿下とエステルはんへの連絡は任せるわ」


「おう! アルルサンキューな!」


 まさか報告のためにわざわざ足を運んでくれたアルルに感謝して見送り、ラナとエステルにチャットメッセージで「装備が出来たからギルドハウスへ来てくれ!」と送っておき、ハンナ特製の朝ご飯をいただく。

 今日はトーストにレタスサラダ、ハムエッグというシンプルな朝食だった。


 しかしただのハムエッグと思うなかれ、齧りつくと塩胡椒のアクセントが口と鼻いっぱいに広がりぶわっと唾液が溢れたんだ。そのままトーストも食べればサクッとした音と共にパンの甘みと香ばしい香りが口いっぱいに広がって、朝から一気に幸せになった。


 うんまー!!


「ゼフィルス君、ちゃんとサラダも食べてね。昨日は飲み過ぎちゃったんでしょ?」


 その言い方だとお酒みたいに感じるが、ここではお酒は販売していません。いや大人が購入するために一部で売ってはいるが、学生が持つ〈学生手帳〉では決済できないので購入出来ないんだ。アーティファクトのセキュリティ意識がすごい件。もちろん飲んでもないぞ?


「はい。今日は結構冷えるからホットミルクを用意したよ~」


「ハンナには頭が上がらないな!? ありがとなハンナ~」


 俺はハムエッグとトーストとサラダを美味しくいただき、ホットミルクで一息ついた。

 なんだろうこの感じ、とてもホッとします。



 さて、ばっちり準備を整えたら俺たちもギルドハウスへと向かう。


「ゼフィルス君、結局昨日はどのくらい騒いでたの? 夜寒かったでしょ?」


「いやあ、あまり気にならなかったな~。時間は、夜の29時くらいまでは覚えてる」


「それ日付変わってるよ!? 朝の5時ってこと!?」


 だって楽しかったんだもん。それから部屋に戻ってさあ寝ようとしたとき外が白んでいたような気がする。楽しいと良くある事だ。


 とはいえもう11月も半ばを過ぎて、だいぶ冬の到来が近づいてきた今日この頃、昨日の後夜祭も寒さで帰る人は多かった。

 ラナも文句を言いながらも体調を心配した従者たちによって連れて行かれてしまったからな。ユーリ先輩も一緒に付いていったみたいだが、あの後どうなったのか。


 そんなことを考えながらハンナとギルドハウスに向かって歩いて行く。


「でもすっかり学園祭ムード無くなっちゃったね。あそこに臨時で建てられていたアーケードも無くなっちゃってるし」


「臨時でアーケードを建てるってだけでも凄いけどな。撤収も手際が良すぎるぜ」


 何しろ後夜祭の時にはすでに大体のでっかいものは片付けられていたからな。

空間収納倉庫アイテムボックス〉や【クラフター】の方々が超優秀すぎる!


「そういえばハンナは学園祭期間中に何してたんだ? あまり会わなかったが」


「うん。パレードの一つに〈生徒会〉として参加してたんだ~。でもユーリ殿下の発表のせいで変な紳士さんに囲まれちゃって大変だったんだよ~。なんだか〈転移水晶〉がどうとか言ってた」


「あ~、なるほどな~。確かにこの機会は逃せないか(変な紳士?)。それで大丈夫だったのか?」


「うん。学園長先生が騒ぎを収めてくれたから」


〈転移水晶〉のレシピ公開はまだ行なわれていない。

 やっぱり色々準備が掛かるらしく、上級ダンジョンの進出者や攻略者が増えると予想されるし、その素材の流通他、経済にも様々な影響を与えると予想されている。

 そのためユーリ先輩が主導し、現在大規模な法整備を行なっているらしい。


 色々と頑張ってるなユーリ先輩。


 ハンナの方に一部迷惑を掛けてしまったらしいが、どうやらそれも解決済みのようだ。


「それでね、お詫びにって学園長さんたちから上級の錬金レシピをたくさんもらったんだ~」


「良かったなハンナ」


 上級レシピで解決したらしい。さすがは学園長とユーリ先輩、生産職のことをよく分かっている。あとで俺もレシピを見せてもらおう。


 学園祭の名残がいくつか点在している道を歩き、もう学園祭が終わっちゃったんだな~と少し感傷に浸りながらハンナと歩いて、俺たちは〈エデン〉のギルドハウスへと到着した。


 さてさて、楽しみだぜラナとエステルの装備品!


 ラナの〈慈愛聖衣シリーズ〉とエステルの〈貴装蒼鎧シリーズ〉。

 素材集めに集中すれば直ぐ終わるはずだったのに、〈転移水晶〉の件や〈救護委員会〉の件、ギルドバトルに学園祭とイベントも盛りだくさんだったためにここまで時間が掛かってしまった。


 だが、ようやくイベントも落ち着いた。

 俺たち上級ダンジョン攻略パーティの装備が全部揃った。


 これで俺たちは、上級ダンジョンの攻略が可能になる。



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