第801話 カイリ就職内定のお知らせ!?




〈救護委員会〉にお邪魔した俺はカイリに今後の活動を説明。

 是非カイリの力が必要なんだと説くと、カイリは表情を引き締めた。少し引きつっている気がしなくもないが、きっと気のせいだ!


「カイリさんには新設する第一上級救護部隊の副隊長をお任せしたいと考えています」


「ふ、副隊長!? し、しかも一番隊!? そんな重要な役割を私に、ですか!?」


 これが上級職に就いたカイリの待遇である。

〈救護委員会〉ではたくさんの部隊を抱えているが、数字が若くなるほど精鋭とされている。

 そこら辺、学園のクラスと同じだな。実力主義だ。

 一番隊とはつまり精鋭中の精鋭の意味である。


 そして副隊長とは、これは公式三大ギルドの副隊長の地位と考えて相違ない。

 つまり他の三大ギルドで言えばナンバー2の地位である。

 それを聞いたカイリは天地が逆転したかのような素っ頓狂な声を上げていた。


「本当は〈エデン〉から引き抜きたかったのですが……」


「あげませんよ? カイリの実力を見いだして〈上級転職チケット〉を使用したのは〈エデン〉なのですから」


「分かっていますよ。ゼフィルスさんの素質を見抜く慧眼は本当に素晴らしいですね」


「いえいえ、カイリの努力の賜物ですよ」


 カイリはあげません。でも褒められてちょっと嬉しい。


 とはいえ俺はアドバイスを送っただけでここまで成長したのは間違いなくカイリの努力の賜物だ。そう、カイリは努力する子なんだ。俺たちが育てるよりも、道を示したほうが成長するまである。


 そして今回も同様だ。

〈救護委員会〉への紹介も、カイリの成長を著しく助けてくれるだろう。


「当面はカイリさんの助けを借り、まずは上級ダンジョンで〈上級転職チケット〉集めをして〈救護委員会〉を強化します」


「〈救護委員会〉が上級ダンジョンで活動出来るようになれば学生が安心して上級ダンジョンに進出出来ますからね」


 会長と俺は互いに見つめ合い、頷く。


 しかし、1人頷けない人がいた。


「ちょ、ちょっと待ってください! ねえ待ってゼフィルス君!? そんな壮大な話は私には荷が勝ちすぎるよ!? 私が副隊長って!?」


 カイリだ。

 今俺と会長のしたやり取りにとてもではないが自分には難しいと必死で声を上げる。


 しかし、俺は何の問題も無いと思っている。俺はその理由を説明した。


「カイリ、聞いてくれ。上級ダンジョンに進出出来ていないというだけで〈救護委員会〉の知識や経験は膨大だ。何もカイリだけに任せるわけじゃない。〈救護委員会〉からもノウハウをカイリに伝授してくれるという話になっている。そして〈救護委員会〉で活動した実績と経験はきっとカイリの役に立つはずだ」


 そう言って説得する。

 会長も頷いていた。

 カイリはまだ1年生。まだまだ学ぶことが多い。そしてカイリの職業ジョブで〈救護委員会〉から学ぶことは非常に大きいだろう。

 これからの人生できっと役に立つはずだ。


「それにあくまで〈助っ人〉だ。副隊長とはいえ臨時のポジションなんだからそう気を張ることもないさ」


「そうですね。副隊長も肩書きが主です。もちろんそれなりの仕事はしていただきますが、雑事はこちらで処理するということです。カイリさんには是非現場で力を振るっていただきたいの。もちろん学びたい意思があるのでしたら雑事も一から教えましょう。〈助っ人〉の任期はまだ決まっていませんが、〈救護委員会〉が自分たちの力で上級ダンジョンを攻略できるまでとしましょう。もちろん私としてはこちらに鞍替えしてくださっても構いません」


「それは構います」


 まったく油断も隙も無い人だ。さらっと俺の前で勧誘とは。まあ、俺の前だからかもしれないが。


 とはいえ〈救護委員会〉がそれなりの実力を身につけるのは、割と早いと思っている。カイリの能力ならエリアボスを探しだし、他を無視してまっすぐ突撃することが可能だからだ。


 そしてカイリは〈エデン〉のやり方、ボスを周回したほうがレベル上げできることも知っている。

 エリアボスは各階層にいるから尽きることは無い。カイリの力でエリアボス狩り祭りを実行できるだろう。宝箱もウハウハだ。

 効率的なやり方で〈救護委員会〉にはパワーアップしてもらおう。


 それと引き換えにしたメリットは膨大だ。カイリがまだ一つもゲット出来ていない中級上位チュウジョウの攻略者の証も〈救護委員会〉の方で手助けしてくれることになっているし、当然〈エデン〉〈アークアルカディア〉への報酬もすごい。

 渡された契約書に書かれたQPの額を見て、カイリはカチンコチンに固まったからな。さらには〈救護委員会〉が入手した上級ダンジョン素材やアイテムの優先交渉権もついている。すごいぞ。


「あ、うう? す、すごくいい話だね?」


「だろ?」


「こんなに買ってもらっていいのかな?」


 提示された報酬にカイリはふらんふらんした。

 これ以上良い話はそうそう無い。カイリの表情を覗き見ると、目がぐるぐるしている。混乱中か? 


 すると会長が手を合わせる仕草と共にこんな提案をくださった。


「そうね。カイリさんは〈上級転職ランクアップ〉したばかり。なら今日は〈救護委員会〉を見学するというのはどうでしょうか? その方が色々と見えてくると思います。カイリさん、これからお時間はありますか?」


「え? はい。あります、けど」


「でしたらどうでしょうか?」


 ヴィアラン会長、ぐいぐい行く。

 彼女としてもカイリの存在はこれまで進出出来なかった上級ダンジョンへ踏み出す大きな転機チャンスだ。

 逃す気は無い。


「わ、わかりました」


 その後の説得で、カイリは今日、〈救護委員会〉の見学をすることに決まったのだった。

 うむ。




「カイリ、頑張ってな~」


「ゼフィルス君、その、ありがとね」


「おう。――ヴィアラン会長、カイリのことよろしくお願いします。ですがちゃんと返してくださいね?」


「ええ、もちろんですよ。ゼフィルスさんもまた後日」


〈救護委員会〉の建物の前で見送りに来てくれたカイリと会長に手を振って別れる。

 カイリは考えた末これをチャンスだと捉えたようだ。

〈救護委員会〉の一番隊副隊長を務めたなんて実績キャリアは凄まじいらしいからな。どれくらいの影響力があるのか、具体的には分からないのだが。とりあえずカイリを欲しがる企業が多すぎて困るくらいには凄まじい実績らしいし。


 今回は見学ではあるが、カイリのあの様子なら今回の話は飲むなきっと。


 これでカイリは凄まじいレベルアップをするだろう。人生経験的な意味で。

 もちろん職業ジョブLVも。

 カイリの中級上位チュウジョウの攻略者の証集めも〈救護委員会〉が行なってくれることになっているし至れり尽くせりだ。

 カイリがパワーアップして帰ってくるその時が楽しみである。


〈エデン〉の2陣パーティ以降が上級ダンジョンを攻略する際は帰還してもらうことになっているので〈エデン〉への影響も少ないだろう。何しろ1陣パーティがまだ攻略すらしていないし。


 その間に〈救護委員会〉のテコ入れ開始。〈救護委員会〉には早く上級ダンジョンに進出して貰わないとな。



 さて、やるべき事はこれで終わったな。

 時間を見れば集合まで残り20分。

 俺は急いで昼食を食べて、なんとか集合時間に間に合ったのだった。




 ――――――――――――

 後書き失礼いたします。


 本日は「このライトノベルがすごい!!2023」の発売日!

〈ダン活〉にご応募してくださった方々に最大の感謝を。

 おかげさまで、〈ダン活〉はデビューから半年で、16位に輝きました!!


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 ◆単行本・ノベルス部門

 16位 ゲーム世界転生〈ダン活〉 ~ゲーマーは【ダンジョン就活のススメ】を〈はじめから〉プレイする~

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 ここまで来られたのも応援してくださる読者さんのおかげです!

 とっても嬉しいです!

 作者、これからも頑張って書いていきます!

 どうか今後とも〈ダン活〉をよろしくお願いいたします!



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