第780話 決着。フィナリナのユニーク『大天使フォーム』
――ユニークスキル『大天使フォーム』は変身強化スキルである。
発動した瞬間から光のエフェクトに包まれ、それが身体に浸透していくと、少なくない変化が現れる。
それまで青を基調とした聖なる鎧に身を包んでいたフィナリナ、その装備が聖なる光で煌めき、エフェクトが溢れ、背中には一対の白き光の翼が現れる。
さらに頭には天使の輪が現れて光を放ち、碧眼だった瞳は金色へと変化して、あまりにも神々しい天使の見た目へと変化した。
なお、体に成長の変化は無し。神々しいロリ天使の姿である。尊い。
当然、見た目が変わるだけのスキルではない。
「うお!? なんじゃありゃ!? 人が飛んでいるだと!?」
「だ、大天使モードのフィナちゃんだー! 可愛いーー!!」
なんとこのモード中は飛ぶことが可能になるのである。
地上3メートルから見下ろすそのフィナリナの姿は、人ならざる上位の化身、天使を思わせた。それは思わず敵味方の手が止まるほどである。
そして浮かぶフィナリナが変身から剣をソードマンに向けたポーズを取るとエリサから黄色い声が上がった。
ちなみにこのポーズはゼフィルスたちが是非にと勧めたものであるため、フィナリナは断る事も無く、この大観衆の中、ちょっとかっこいい天使ポーズを取っていたりする。
なお、フィナリナの無表情顔は、光によって分かりづらいがやや朱に染まっているのだが、誰もそのことには気がつかない。
これがフィナリナの奥の手、まさしく天使に変身する『大天使フォーム』である。
――効果時間は3分だ。
「素早く、片を付けます!」
「シャッハー! 空飛ぶ奴と戦うのは初めてだぜ! 面白くなってきたぁぁぁ! お前たちなら、こいつを使っても良さそうだ! 舞え、踊れ、俺の剣たちよ! 『ソードソードバーストストーム』!」
フィナリナが翼を羽ばたかせ、一気にソードマンへ迫ると、ソードマンがスキルを発動。身体に装着されていた剣をその辺にバラ撒くと、剣が動き、ソードマンを中心にして竜巻のように乱舞したのだ。
これは攻防一体のスキル。遠距離攻撃を弾き、近距離へ近づかせない範囲攻撃である。
ソードマンの奥の手であり、体中に剣を装着している理由の何割かはこのスキルを使うためだったりする。
「周囲範囲攻撃!? 回転は、反時計回り! 止めるよ! 『堅牢の二枚壁』!」
「トモヨちゃんナイス! 合わせるよフィナ先輩! 『魔剣・波斬』!」
サチを庇うようにして盾を広げて竜巻を防ぐトモヨの後ろから、サチが遠距離斬撃スキルを使って竜巻の一部を弾いた。剣の乱舞に守られていたソードマンの姿があらわになり、フィナリナが接近出来る道ができる。
「今!」
「はい! 『ソニックエルソード』!」
フィナリナが使用するのはソニック系。
それまでの飛行速度とは雲泥の差で加速したフィナリナが荒れる剣の竜巻に出来た道を進み、ソードマンへと接近する。
「シャッハー! ようこそ! 手厚く出迎えるぜ!」
待ち構えるように構えるのはソードマン。
このままではソードマンの懐に飛び込んでしまうと思われた。しかしソードマンの剣戟がフィナリナに届く瞬間、フィナリナがさらにスキルを重ねて使う。
「『ソニックエルソード』!」
「ああん!?」
使用したのは今使用中のスキルと同じスキル。
ソニック系のスキルで急加速を得たフィナリナが直角に進路を変えてソードマンの後ろへと回り込んだ。そして斬撃。
「そうは、行くかよ!」
「『ソニックエルソード』!」
「な! まただと!? ぐお!?」
ギリギリで反応したソードマンだったが、フィナリナはさらにソニック系を発動し、今度は空中、真上を奪って肩を斬ったのだ。これによってソードマンへ初めてのダメージが入る。さすがにあれだけの動きの直後、慣れない上からの斬撃には対応しきれなかったのだ。
ソードマンのステータスは攻撃力と素早さに大きく振られているが、防御力は低下しており、なんとこれだけで4割強というダメージが入った。フィナリナが純粋なアタッカーだったら今の一撃でやられていたかもしれない。
「なんだ今のは! クールタイム軽減か!? おんもしれぇじゃねえか! シャッハー!」
「『エルガード』! 『エルソード』! 『エルソード』! 『エルソード』!」
「うおお!? 前言撤回だシャッハー!? クールタイム軽減なんて生易しいものじゃねぇ! こいつクールタイム無視してやがる!?」
ソードマンの剣戟を防御スキルで防御したフィナリナが、攻撃に転じ、連続で攻撃スキルを放っていた。
ソードマンは超人的な勘でそれを避け、一時的に距離を取り、驚愕に叫ぶ。
フィナリナは完全にクールタイムを無視していた。とはいえクールタイム無視とは少し違う。
これも『大天使フォーム』の能力。
発動中全ての『エル』の名を持つスキルに〈クールタイム軽減〉を付与する、という非常に強力な能力だ。
しかも同じスキルならクールタイムを無視し発動出来るおまけ付き、これのおかげで先ほどのように『ソニックエルソード』発動中に『ソニックエルソード』を再発動することもできる。その時は同スキルのため効果が上書きされて前のスキルはキャンセル扱いになる特性がある。
要は同じスキルが連打できる能力だ。『エル』の名前限定だが、これは非常に有用な能力だろう。
とはいえエステルの『姫騎士覚醒』とは違いMPはしっかり消費されるので使いすぎ注意だ。大技を連打すればMPはすぐ枯渇する。
しかし、これによってフィナリナは空中を急加速で縦横無尽に動き回り、相手の隙を捉える高度なバトルが可能になったのだ。
これが【アークエンジェル】の
3分で変身が解けるため、フィナリナを含む全員は、この3分以内が勝負どころだと、果敢に攻めの姿勢に入った。
「こんりゃー! 『魔剣・ノックソード』! 『魔剣・ノックバスター』!」
「倒れろー! 『魔本・フリズドジャベリン』! 『魔本・ビッグフレアバースト』!」
「せいやー! 『魔弓・パワーショット』! 『魔弓・魔矢』!」
「私だってー! 『ダブルシールドバッシュ』!」
「フィナちゃんだけに良いかっこはさせないだから! 『反転ヒール』! 『ダークエクスヒール』! 『ダークハイヒール』!」
「『ソニックエルソード』! 『ソニックエルソード』! 『エルライトブレイカー』!」
「シャッハー! オラオラオラ!」
「「あぐぅ」」
「きゃあ!」
「『エルヒール』! 『エルヒール』! 『エルヒール』! 『エルヒール』!」
全員による猛攻撃、しかし、それに晒されてもソードマンは落ちない。
二本の剣を操り攻撃を弾き飛ばし、切り伏せ、避け、反撃する。
スキルの効果が解けて竜巻となっていた剣がその辺にばら撒かれると、足や剣でそれを回収したり弾き飛ばし、ナイフ投げのよう飛ばしてきてエミやユウカのHPをごっそり削った。
フィナリナが空中機動で斬りかかるも、ソードマンも足を使い、五段階目まで強化された素早さで動き回り攻撃を回避する。
1対6の戦闘であるにもかかわらず、ソードマンはその実力のみで6人を相手に立ち回っていた。しかし、6人の猛攻は止まらずソードマンを徐々に追い詰める。何しろ相手の面子が厄介すぎたのだ。雑魚モンスター100体を切るよりはるかに強く厄介な〈アークアルカディア〉のメンバーズである。
ソードマンは、ならそろそろあいつを参加させようと、魔砲使い男子に参戦を求めることにした。
「おいボルート! そろそろこっち来て撃ち込んで援護しろい! シャッハー! クライマックスだ! 盛り上がってきたぜー!」
「Zzz……」
「あ?」
「その子はさっき眠らせてあげたのよ!」
「マジかよ……幸せな奴め」
魔砲使い男子ことボルート君が少し離れた場所で仰向けでムニャムニャしていた。
実は先ほどエリサが使っていた『誘いの睡魔』はボルート君へと向けられていたのだ。
ニヤニヤしながら報告するエリサにソードマンが渋い顔をする。
フィナリナの『大天使フォーム』が切れるまで残り1分を切ったところで、全員が攻撃の手をさらに強めた。
これによって攻撃が掠り、ソードマンのHPが4割を切る。
「シャッハー! まだまだまだまだだーー!! シャッハー!! 3人は道連れにしてやらぁ! 『投剣』! 『ソードマン・デス』! 『ソードマン・デンジャラスカッター』!」
狙われたのはエミとサチ、そしてエリサだった。
片手剣の投擲、大剣の一撃、そして大剣のぶん回し投げの三撃によって、3人が狙われる。
温存していたスキルの手札を切ったのだ。
空中にいたフィナリナは捉えられないとして、他のヒーラーと魔装2人を仕留める狙い。
最初の投剣があまりにもスムーズだったために見逃してしまうが、残りの大剣の二撃はタンクのトモヨが身体を張ってそれを止めた。
「『ガードポジション』!」
二枚の盾を大きく広げ、『カバー』系スキルによってサチへの一撃と、エリサへの大剣投げを防いで見せたのである。
「エミ!」
「私が行きます! 『ソニックエルソード』! 『エルカバーガード』!」
そしてエミに迫った凶刃もフィナリナが高速で割り込んで止めた。
スキルを三連続発動してしまったソードマンの隙は大きい。
そこへ剣を光らせたサチが飛び込んだ。
「これで、とどめー! 『魔剣・光剣』!」
「その程度ぉぉぉ!!」
確かな隙に振られたサチの必殺技。
しかし、神業か、アイアムソードマンが背中に差した剣を掴む事で装備した事にし、身体を捻って背中の剣で攻撃を受けたのだ。
ダメージは受けたがHPがゼロには至らない。ギリギリでミリ残りするHP。
反撃でサチを斬ろうとするソードマン。
しかし、そこへ天使が飛び込んだ。
「これが、本当のとどめです――『エルライトブレイカー』!」
「そんなもんは――あん!?」
『ソニックエルソード』で急加速を得たフィナリナが一気に超低空飛行で飛び込んで来たのだ。
ソードマンはこれに対応しようとさらに身体を捻り、足を使おうとするが、その足が何かに掴まれて逆にバランスを崩してしまう。
ソードマンの足をエリサの『ダークバインド』が掴まえていたのだ。
これが致命的だった。
そして、とうとうフィナリナの〈三ツリ〉スキルが直撃する。
「うおおおお! 俺がソードマンだーーー!! シャッハー――」
最後は負けを受け入れ両手の剣を広げて豪快にフィナリナの攻撃を受け入れるソードマン。
HPがゼロになったソードマンが転移陣によって退場した。
―――――――――――
後書き失礼いたします。
昨日よりTOブックスコロナEXにて〈ダン活〉コミカライズの第5話後半が連載中です!
よろしければ読んでいただけると作者とても嬉しいです!
今後も〈ダン活〉をよろしくお願いいたします!
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