第755話 シエラの装備完成!ギルドハウスでお披露目だ!
合同授業が終わると、約束通りハイウドと〈錆びた〉系装備について交渉した。
全身揃っているのに加え相場よりそれなりに安く売ったためハイウドには恩を売ることができたな。
ちなみに武器にかんして、ハイウドは機械拳を購入していったよ。【サイボーグ】は【闘士】系の特殊職なため一番スタンダードなやつを選んだ形だな。
未強化なためハイウドはこれから強化しに行くと喜んで駆けていったよ。
彼のパワーアップ後が楽しみだ。クラスが違うのが惜しいぜ。
次の日のとある休み時間中、マリー先輩から〈聖盾光鎧シリーズ全集〉が完成したとの連絡があった。
「シエラ! ついに新しい装備が完成したって! すぐに行くぞ!」
「ちょ、ちょっとゼフィルス待って。待ちなさい、まだ授業があるのよ? もう、ダメ、でしょ?」
もう焦る気持ちを抑えつけることができず、シエラの手を引いて出発しようとしたところで人差し指を俺の口元に持って来てダメってされた。
おおお? なんだか上がりきったテンションに変なテンションが入り込んだのを幻視したぜ。むっちゃほっこりした。心が浄化されたのを感じた。
「……なるほど、ゼフィルスにはこれが効くのね、覚えておかないと」
なんだかシエラが危険な仕草を覚えてしまったような気がしたが、きっと気のせいだろう。
ダメってされる度に意識が旅に出そうです!
そんなこんなで放課後。
シエラの装備が完成した。
気がつけばその噂はすでにクラス中に広まっていた。なんでだろうね?
つまりは俺とシエラだけではなく、他のギルドメンバーも多くが一緒に〈ワッペンシールステッカー〉に行くことになったのだった。
「マリー先輩いるか~」
「いるで~って兄さん、今日はとんでもない大所帯やな!?」
マリー先輩が驚く気持ちも分かる。
同じクラスの女子メンバーはほぼみんな来てるからな。
ちなみに男子はいない。だってシエラの装備のお披露目だからだ。
女子の装備姿が見たいなんて噂が立ったら困る人が若干名いる模様だ。え、俺? 俺はこの装備を企画した第一人者である! なので問題無い。
「さすがにこんなには入れんで。う~んそうやな、兄さんのギルドハウスに向かってくれへんか? そっちでお披露目しよか」
「おお、それは良い考えだな。こっちには大部屋もあるし」
〈ワッペンシールステッカー〉ギルドは客間や個人の生産工房が割を占めすぎていて大部屋は無いので、シエラの装備のお披露目は〈エデン〉ギルドハウスで行なわれる事に急遽決まった。
ちなみにシエラの鎧装備がなぜ〈ワッペンシールステッカー〉にあるのかというと、ここは仕上げのプロフェッショナルだから、だな。
アルルが作製した鎧のパーツ類はここに持って来て組み立てている。
「マリー先輩。今日はよろしくお願いします」
「任せてやシエラはん。ほな兄さんたちは先行っててや」
「え? 俺も?」
「せや」
「ゼフィルス、また後でね」
「あ、そうっすか」
どうやら俺だけ先に見させてもらえるなんてことは出来ないようで、俺はシエラをマリー先輩に預け、他のギルドメンバーを連れて〈エデン〉ギルドハウスに向かった。同じC道にあるので歩いて数分で到着する。
しかし、1時間経ってもシエラとマリー先輩が現れることは無かった。
そわそわしているとそれを見かねたのか、近くにいたラナやエステルが諭すように言う。
「女の子は色々と準備があるのよ、装備してさあお披露目とはいかないの」
「はい。ゼフィルス殿、女の子の衣装選びは根気が必要ですよ」
「いやエステル、衣装はもう完成してるんだって。いや手直ししているのか?」
待ち遠しくて仕方ない。
この上がりきったテンションを俺はどうすればいいんだ!
とりあえず〈幸猫様〉と〈仔猫様〉にたくさんお供えして真剣に祈っていると、ついにその瞬間が来た。
「待たせたなぁ~、シエラはんの装備、準備万端や!」
「待ってたぜ! よ、マリー先輩!」
場所は〈エデン〉ギルドハウス大部屋。
ここはギルドメンバー全員でブリーフィングや宴会などを行なう関係で、メンバー全員が入ってもなお余裕のある空間が備わっている。
そしていつの間にか別の課や学年に在籍しているメンバーたちも集まってきていた。
もう30人規模の大所帯である。
「わぁ、シエラはんの人気ぶりが分かるなぁ」
その集まったメンバーを見てマリー先輩が感嘆の声をあげる。
みんなシエラの装備を一目見ようと集まってきたメンバーである。さすがサブマスターのシエラだ。
「んじゃお披露目や。シエラはん、入ってきてや~」
「…………」
「「「「おおー」」」」
「「「「わー」」」」
マリー先輩の合図に背を伸ばしたまま気品溢れる姿で歩き、俺がいつもいる立ち位置である壇上へと足を進めるシエラ。
その横姿、歩く姿を見ただけでギルド全体から感嘆の声が漏れた。
「か、かっこいい」
「綺麗~」
誰かの声が聞こえた。
歩くだけで様になるシエラ。ギルドメンバーの心を掴んで離しません!
壇上まで歩ききったシエラはすまし顔で身体ごとこちらに向く。
あ、顔がやや照れているのか少し赤くなっているのが見えた。
それが魅力に拍車を掛けているのか、女子たちがさっきから「きゃー」「キャー」言っています。
俺は改めてシエラの装備を見る。
全体的に、以前の〈盾姫装備シリーズ〉をバージョンアップさせたような見た目。
頭にはサークレットに近いヘルムが装着され、神々しい雰囲気を放っており、身体全体は服装備をベースにいくつかのパーツやガードで覆われているのは前と同じだが、より豪華で煌びやかな衣装、いや鎧となっている。
ポイントなのが手のひらくらいの小さな白色の盾のガードが身体の何カ所も装着されているところ。重なり合うように着けられたりそのまま着けられていたり、いくつもの盾が守っているようなアクセントがかっこいい。シエラの
そして腰の両側には四つの小盾。
これは変わらず〈
これは今後上級盾にアップデートしなきゃな。
武器はそのままで大盾もシリーズで揃えるか迷ったのだが、〈白牙のカイトシールド〉はかなり強力な装備なので今回はそのまま。これらは今は仕舞われている。
というわけで今回は頭から足まで五箇所のシリーズの変更でそのお披露目だ。素晴らしい。素晴らしいぞ!
〈聖盾光鎧シリーズ装備〉は上級装備。
そのままでも上級上位ダンジョンまでは変更無しで行けるほどの防御力を持っている。
これで上級下位ダンジョンへの突入条件が、最低限揃った。
その前にシエラには感想を言っておこう。
「シエラ、綺麗だ」
「そ、そう?」
「そして凄く強そうだ」
「そう……」
「これからも頼りにしているぞ、シエラ」
「ええ。任せてゼフィルス」
俺の言葉に優しい笑顔で返してくれるシエラにグッとくる。
そんな俺の感想を皮切りに、ギルドメンバー達もシエラに感想を言う。
「すごいのです! かっこいいのですシエラ!」
「これで上級ダンジョンだって勝てるわね!」
そしてシエラはあっという間に女子たちに囲まれてしまった。
俺はそれをマリー先輩たちと遠巻きに見つめることしかできない。
「いやあ、見た目だけじゃなく能力も完璧だったな!」
「あったりまえやー。うちらの腕前に死角無し、と言うにはまだまだ練習は必要やけど、少なくとも兄さんが求めるクオリティまでは押し上げられたかと思うで」
「さすがだぜマリー先輩、マリー先輩さすが! やっぱマリー先輩に〈上級転職チケット〉を渡して正解だった!」
「ふっふっふ、もっと褒めてええで!」
シエラの装備、〈幼若竜〉でもしっかり能力値も見させてもらったがすごいの何の。
防御力重視で製作されたそれは防御力、魔防力、共に最高の数値で、俺が求めていた上級装備のクオリティを完全にクリアしていた。
下級職で作ろうものなら200ずつは数値が下がっただろうな。ぱねぇ。さすがは上級の生産職だぜ! これが上級生産職の力だ! ふははははは!
一通りシエラの装備についてマリー先輩を褒め称えた。
マリー先輩は両手を腰に当てたドヤァで鼻高々、まるで身長が伸びたように感じたくらいだ。あ、良く見たらマリー先輩が爪先立ちしていらっしゃるのを発見。見なかったことにしよう。褒められると色々と伸びたいこともあるのだ。
ちなみに他の功労者のハンナとアルルはシエラの装備解説に呼ばれていたりするので向こうにいる。あちらも後で褒め称えよう。
マリー先輩が落ち着いてきた辺りで俺は重要なことを切り出した。
「それでマリー先輩、残りの上級素材の在庫は?」
「もうスッカラカンや!」
マリー先輩はドヤ顔で言い切った。
え? 無いの? 一つも?
「むしろ兄さんたちが上級ダンジョンに採りに行ってくれる言うからシエラはんの装備に全部つぎ込んだまである」
どうやら俺のセリフが原因みたいだ。
思い切りが良すぎる!
「というわけで兄さん?」
「おう、分かってる分かってる。明日にでも俺たちは上級ダンジョンに挑むぜ」
まるでお腹を空かせた雛、いや猛獣かもしれないマリー先輩の視線に、俺は胸を張って任せろと頷いたのだった。
というわけで、準備は整った!
いよいよ明日から上級ダンジョンに入ダンするぜ!
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