第756話 上級ダンジョン攻略宣言、ついに活動開始。




 結局昨日はシエラの装備の性能を見ようということで練習場に行ったり、ギルドメンバーと訓練したりして、思ったとおりダンジョンには行けなかったため本日水曜日の放課後、上級装備を着た俺とシエラ、そしてラナ、エステル、カルアという最近のいつものメンバーで一度ギルドハウスに集まっていた。


 いや、俺たちだけではなく、ギルドメンバー全員が大部屋に集まっている。

 今日は大事な宣言を行なうために全員に集合していただいたのだ。


「みんな、今日は集まってくれて感謝する」


 俺は大部屋の壇上に立ちギルドメンバーに向けてまず感謝を伝えた。

 そして宣言する。


「耳の早い人たちは知っているかもしれないが、改めて俺はここに宣言する! ――準備は整った! これから、俺たちのパーティは上級ダンジョンへと向かう! 目的はまず素材アイテムの確保! 十分な素材が集まり、生産職が上級装備を作製し、パーティメンバーの装備が整い次第、上級下位ダンジョンの攻略を開始する!」


「「「「「わー!」」」」」


「「「おおー!」」」


 宣言の直後、溢れる歓声。拍手喝采。

 いや、まるで爆発したかのような歓声が大部屋に響いた。

 あまりの歓声にビックリである。ルルたちちっちゃい子なんかは驚いて、いや、ルルたち幼女組は歓声する側のようだ。


 思ったよりもとても良い反応。いや良い反応過ぎる!

 これはあれだな。上級ダンジョン攻略宣言のせいだ。

〈キングアブソリュート〉の時もそうだったが、この世界では上級ダンジョンの攻略というのは非常に注目度が高く、歴史に残るほどの偉業らしい。


 それは貴族であるほど敏感で、貴族の子が多い〈エデン〉ではみんなとても注目していたようだ。熱い魂が唸っている、きっとそういうことだろう!


 俺は歓声が静まるのを待って、――中々静まらないので手で制してから続きを語った。


「パーティメンバーは前から言っていたとおり、俺、シエラ、ラナ、エステル、カルアがまず探索を行なう。先日、俺の装備に加え、タンクであるシエラの装備も完成した。これで最低限、上級ダンジョンで活動するだけの下地が整った! だが、これで上級の素材が尽きてしまったため、まずは素材集めをしてパーティ全員の装備を整えようと考えている」


 上級ダンジョンの攻略について、前々からみんなに通知はしていたが、改めて言葉に出してギルドの方針を示す。


「ハンナの能力によって中級上位ダンジョンのボス素材に上級素材を混ぜることで、上級ボスドロップ並みの品質、真素材にパワーアップできるのは知っていると思う! これでまず俺たち上級攻略組が装備を整え、上級ダンジョンを攻略する! その後はいつも通りだ。周回して何度もボスを倒し、素材を集め、〈上級転職チケット〉をドロップさせ後進の装備を作製し、育成していく予定だ! 最終的には戦闘メンバー全員に上級ダンジョンを攻略してもらうことになるだろう!」


「「「おお~!」」」


「「「わー!」」」


 一度上級ダンジョンを周回できるようになってしまえば後は楽だ。〈上級転職チケット〉も手に入りやすくなるし。本物の上級のボス素材が使えるのだから上級装備を作り放題である。


 本来はそこまでが大変なんだよ。中級ボス素材をたくさん集め、上級素材を集め、錬金して装備を作製して、〈上級転職チケット〉を確保してとやることが山積みだ。


 しかし、それもある程度終わった。

 問題は素材の確保だけだ。

 これは仲間にもお願いしたいと思う。


「上級ボスを倒し、素材を大量に確保したら随時ギルドメンバーの装備も更新していく予定だ。だが、それには上級攻略組の装備を作らなければならない。そこでみんなにお願いだ、俺たちが上級素材を確保している間、中級上位チュウジョウの〈妖精ダン〉や〈祭ダン〉のレアボス素材を確保しにいってほしい!」


 ゲームでは自分で集めなくちゃいけなかった部分だが、リアルでは仲間がいる。

 仲間がボス素材を集めてくれるならすげぇ時間短縮になるだろう。


 まずは上級攻略組、これを仮に1陣として、1陣の強化を最優先する。ギルド全体でこれに取り組むんだ。

 そして上級攻略組が上級ボスを倒したらその恩恵で2陣の装備を整える。

 2陣も上級ダンジョンが攻略できるようになれば装備集めが倍捗る。

 そうして3陣、4陣と上級ダンジョンの攻略組を増やしていくという好循環。

 ふはははは!


 それを要約しながらギルドメンバーに通達し、協力を願った。

 まずは1陣の強化に協力してほしいと。


 そこで真っ先にスッと立ち上がったのはリカだった。


「無論だ。ゼフィルスの言葉はいつも的確故、私も全力で手伝おう」


 嬉しいねぇ。

 ちゃんと上級ダンジョンを攻略した後還元するよとは言っているが、この世界では上級ダンジョン攻略ということ自体が偉業。与太話扱いされたって不思議ではない。

 しかし、リカの目には一欠片の疑いもなかった。俺が、俺たちが上級ダンジョンをクリアすると信じているのだ。


 すると一拍おいて、出遅れたと言わんばかりに勢いよく立ち上がったのはリーナだった。


「もちろんわたくしも協力しますわ! ゼフィルスさん、〈祭ダン〉のレアボス素材集めは任せてくださいませ!」


 そんなリーナの勢いに押されたのか、次々とみんなが協力の意思を示してくれる。


「ぼくも勇者君がどこまで行くのか興味が出てきたよ。あまり体力は無いが、ぼくも協力しようじゃないか」


「私はラナ様の装備を作るためでしたら喜んでご協力させていただきます」


 ニーコとシズ、上級職組が協力を申し出てきたことでみんなが協力の意思を固めたのを感じた。


 この4人に引っ張ってもらえれば中級上位チュウジョウランク10の〈祭ダン〉だって余裕で攻略、周回ができるだろう。

 ありがたい。

 俺は改めてギルドメンバー全員に言う。


「みんな、力を合わせて上級ダンジョンを攻略するぞ!」


「「「はい(おー)!」」」


 こうして後に語られることになる〈エデン〉上級ダンジョン攻略の幕が上がったのだった。



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